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量子技術教育プログラム「QEd」について

9月9日、東北大学の大関先生が講師を務める「QC4U(Quantum Computer for You)」が開講されました。

すでに第1回の動画の視聴回数が2,000回を超えるなど、界隈では話題になっていますが、量子技術に興味を持つ方々、特に、将来量子技術の研究や開発に携わること目指す大学生・大学院生には、量子技術教育プログラム「QEd」もぜひ知ってもらいたくて、QEdの魅力を紹介する記事を書いてみました

QEdで9月下旬に開催するサマースクールの参加登録の〆切も迫ってきていますので、もしこの記事を読んで興味を持たれた方はぜひご参加をご検討ください。

QEdとは?

QEdとは文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム Q-LEAP(キューリープ)で実施している人材育成プログラムの1つです。

紹介動画:

サマースクールの開催、オンライン授業動画の配信、基礎ノートの公開を通じて、量子の基礎をしっかり身につけるとともに、ともに学ぶ仲間を見つけるコミュニティ形成を目指すプログラムとなっています。

授業動画の主な対象は量子力学を学んだことのある大学3年生〜大学院生かと思いますが、基礎ノートは量子力学の基礎的な部分もカバーしています。ベクトルや行列の知識があれば読み進めることもできるでしょう。

サマースクール、動画、ノートのいずれもハイクオリティな内容や教材が揃っています
量子技術に興味のある方は、ぜひ1度Webページを覗いていただければと思います。

QEdの魅力①:基礎から最新トピックまでしっかり学べるサマースクール

QEdのコンテンツで一番の魅力はなんといっても豪華講師陣によるサマースクールだと思います。

今年は沖縄科学技術大学院大学(OIST)で、9月23日〜30日の1週間、オンサイト&オンラインのハイブリッドで開催されます。

すでにオンサイトの参加の申込みは終了していますが、オンラインの参加申込みは9月17日までとなっていますので、まだの方はぜひご登録ください。(オンラインのスクール開始日は24日からとなっています。)

私も昨年のサマースクールに一部だけ参加(昨年は全面オンライン)しましたが、基礎的な内容が丁寧に解説されていて、量子技術に対する理解がかなり進みました。
自分一人でテキストを読んで勉強するよりも、講義の方が「聞かないと」という気持ちになっていいのかもしれません。

参加者のみに講義動画とスライドが配布されるので、都合などで全部参加できなくても、動画で見返すこともできます。

特別セッションもあって、昨年は「量子技術人材におけるジェンダー平等」でした。(内容は以下の記事に詳しく載っています。)

今年のサマースクールの内容はこんな感じです:

量子技術の前提となる量子ビットやその扱いに関する復習から、量子技術を学ぶ上で重要な前提知識となるcavity QEDや量子系の測定・評価に関する講義を行います。また各量子技術における課題と挑戦と題して、私たち研究者がどのような態度で研究に取り組んでいるか共有したいと思っています。その他にホットトピックとして、量子コンピュータの開発・アーキテクチャ・利用に関する講義、特別講義として「量子論の記法」、「量子品質工学」の講義を行います。座学だけでなく、参加者のグループワークとして量子系のシミュレーションにみんなで挑戦します。
QEdサマースクールポスターより

今年の目玉の一つは、国産量子コンピュータ開発に最前線で取り組んでおられる中村先生(理研)の講義ですかね。(国産量子コンの開発についてはこちらもご覧ください)
また、「私たち研究者がどのような態度で研究に取り組んでいるか共有したい」とのこと。学生さんたちにとっては、将来のキャリアパスを考える上で貴重なお話が伺えそうです。
(個人的には量子系の測定・評価の基礎講座が楽しみです。)

QEdの魅力②:幅広いトピックをカバーするハイクオリティな授業動画(バーチャルラボツアーもあり)

QEdでは、サマースクール開催だけでなく、光や原子から固体欠陥や超伝導回路まで計14の幅広い技術について、各分野を専門とする若手講師陣の授業動画がフリーアクセスで公開されています。

各技術で概ね20分〜30分の動画が2〜3本あり、各量子系の特徴や用途、歴史的経緯まで含めて学べる、コンパクトでハイクオリティな内容となっています。

動画の内容は、量子技術の基礎的な部分を理解した人が、各技術の概要を知るのに丁度いい時間と難易度かと思います。この動画で興味を持って勉強したい場合の参考文献まで紹介されています。

また、バーチャルラボツアーもあり、充実以外の何ものでもないので、ぜひ量子人材を志す多くの方に見ていただきたいと思います。

QEdの魅力③:講師陣の先生方の熱い想い

紹介が最後になってしまいましたが、このQEdプログラムを提案したのは日本を代表する若手量子研究者の野口先生(東大)です。
先生がこのプログラムにかける想いがこちらの記事で解説されています。

実は、参画した研究者は学生時代からの仲間たちだ。野口は「サマースクールがなければ出会わなかった」と話す。大学院生の頃に量子技術関連のサマースクールが開催され、研究に関わる大学院生が参加した。もちろん野口もその一人だ。そこで研究を軸に同世代のつながりができた。QEdプログラムは、そのときに出会った研究者の共通の思いを形にしたものだ。
日経クロステック記事(2021.11.09)より抜粋

「自分たちが学生時代に参加したサマースクールを、今度は自分たちで開催しよう。」
学生時代にサマースクールで出会った同世代の若手研究者の想いから生まれたのがこのQEdプログラム
なんですね。感動的です。

QEdに参加した次世代の量子人材が、またその次の世代を育成するというように、野口先生やQEd講師陣の思いもまた次世代に受け継がれていくことを願います。

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