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家電は家事時短にならない?

昨日、載せた「昔の家事を体験する」の最後の方に、

時代は変わってるんだから、家事も変わっていく…というような話を載せました。

時代は変わるの代表といえば、家庭電化製品の普及があります。

「家電が普及して、家事時間は短縮された」という表現は、一般的に使われている表現です。

ところが、実際は、一番上の画像のとおりです。
1986年から2003年の17年間の家電普及率と
1986年から2001年の15年間の女性の家事時間です。
全自動洗濯機の普及率は、33.9%から(82.0%:2001年)85.6%
電子レンジの普及率は、45.3%から(95.3%:2001年)95.8%
に増加しています。どちらも約50%の増加です。

ところが、女性の家事時間は、3時間33分から3時間22分(2001年)と15年で、11分しか短縮していません

11分でも短縮したには違いありませんが、普及率と比べると、たったの11分です。

全自動洗濯機の普及は、こすったり、絞ったりする作業を洗濯機がしてくれるし、二槽式洗濯機から全自動になり、洗濯槽から脱水槽へ洗濯物を移さなくてよくなりました。力仕事や入れ替え作業がなくなり、ぐっと省力化が進みました。

それで、家事時間が減ると思いきや、それほどでもなかった。それと同時に、省力化の反動で洗濯回数が格段に増えたからです。

昭和時代までは、洗濯は汚れたら洗うでした。それが全自動洗濯機の登場で、着たら洗うに変わりました。洗濯量と洗濯回数が増えました。そこに、洗剤の変化もあり、洗濯物を真っ白に洗うという質的家事が加わりました。

汚れてなければ良い、という洗濯物の仕上がりから、キレイでなければ格好悪いになり、仕事着だけでなく子どもの制服にもアイロンもあてるようになりました。

電子レンジも同様です。欧米では「電子レンジは家事時間を短縮させた」が統計でも証明されているようですが、(僕は家庭用オーブンの普及の方が効果が大きい思いますが)日本では、全自動洗濯機と同様に、必ずしも直結していません。

電子レンジが普及に対して、冷凍食品の技術的進歩は、普及率がぐっと上がる画像の時期よりも、もう少し後です。したがって、この時期の電子レンジは、冷凍食材を調理するというよりも、作ったおかずやご飯を温め直す使われ方が多かったと思われます。作り置きや昨日の残りを温め直して活用できるので、食卓の品数が増えました。

温め直しができることで、塾から帰ってきた子どもの夜食も、残業から帰ってきた夫の晩ご飯も、一から作らなくてよくなりました。

同時に、電子レンジの普及は、家族の誰かが食事を最初に食べ始めてから、食べ終わるまでの時間を延ばしました。その結果、片付けへの待機時間は、ものすごく長くなりました。

自分の使った食器を自分で洗う家庭なら、そうはなりませんが、「片付けは妻の仕事」となっている家庭では、家事の実働時間はともかく、待機時間は大幅に伸びました。

また、電子レンジは「個食」を可能にしました。これを家族団らんの崩壊と解釈するか、食事時間の自由化と解釈するかは、議論の分かれるところですが、とにかく「いただきます」で家族が「せーの」で食べ始め、みんな揃って「ごちそうさまでした」という食卓スタイルが崩れる後押しをしたのが、電子レンジであったのは間違いないでしょう。

とにかく、全自動洗濯機と電子レンジの普及は、当時の時代背景も影響して、意外なほど家事時間短縮をもたらしていません。

ところで、20世紀終盤になって、掃除ロボットという、時短に直結する家電が登場しました。人の手を必要とせず外出中や、炊事中に掃除してくれる。これは革命的家電です。ロボットが掃除してくれ手間が省ける分、回数を増やそうとしても、高い質を求めようとしても、家事時間は増えません。

掃除ロボットの話は、別の機会に語ってみたいと思いますが、いずれにしても、あちこちで言われている「家電が普及したんだから、家事は楽になっているはずだ!」は、あまり当てはまらないという家事の実態は、広く認識して欲しいです。

家電の普及が家事を楽にすることと直結しにくい構造は、掃除ロボットの普及が今ひとつすすまないことにも表れています。

「ロボットが掃除してくれると…私の存在って…」
という言葉に隠されているわけです。

この思考があるかぎり、どんな便利な家電が登場しようとも、家事は一向に楽になりません。むしろ、楽になりたくないのかもしれません。

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