外務省が河野談話を消さない理由

自民党総裁選での各候補の政策が、そのまま投票結果や決選投票の結果を予測する試金石にもなっている。

既に自民党員であるか否かに関わらず、メディアの報道も含め、誰が自民党総裁になり、日本政府の総理大臣になるかで、その後がどうなるか?の予測が席巻している。

無党派層の多くは、結局自民党が政権を握るのだから、誰がなっても同じと斜めに見ているようだが、果たしてそうだろうか?

ウィズコロナの日本社会は、これから疲弊した経済をいかに立て直すか?が焦点になるし、日本のリーダーが牽引する今後の日本経済が、周辺国に大きな影響を与えることは容易に想像できる。欧米各国はそれぞれがどうやって経済を立て直すかその道筋をどうするか?で混迷を極めている。資本主義経済なので、景気動向や生産、流通、消費のサイクルの中でウィズコロナが始まれば始まったように経済が復権していくのは自明だ。自明なのだが、それにはきっかけが必要になる。経済は人の「景気」に大きく左右されるので、例えばアメリカのように、コロナで疲弊した経済を財政出動で勢いつけたいのに、結局、人々の不安感は株投資や先物、投資信託で資産運用に回される。景気の基本は、消費動向で決まる。

物が作られ消費されなければ、結局、経済は回っていかない。アメリカ経済の空洞化は20年前から言われていることで、アメリカのGDPは消費だけの空回り状態だ。では何故、アメリカの経済が回っているかと言えば、終局、基軸通貨ドルによると言うのが結論だ。世界のエネルギー、原材料、金融の多くはドルを経由して取引されているため、一定の価値を保持している。アメリカ国内で金融だけでお金が回っているとしても、ドルの価値そのものが下がらないため、経済が弱体化しない。

話を元に戻す。

ウィズコロナ時代に自民党の総裁が変わることで、我々の社会はどう変化するかと聞かれても、「大きくは変わらない」がその答えになる。

ただ、直近の課題である日本経済の再生や国防、外交問題については、近隣諸国とのパワーバランスの変化のきっかけになるため、各候補の主張に注目する必要がある。

世界はウィズコロナに動いているため、経済については徐々に復活するだろう。いつまでもPCR検査だの、ロックダウンだのにしがみつく必要はない。それを旗印にしている野党もあるが、それは宗教団体が自分たちの教えにしがみついているようなもので、まるで現実的でも合理的でもなく、国民を今以上に疲弊させる以上の意味はない。さしずめ、与党に対抗して与党が言わないことを並べたらこうなった、と言う程度のもので、レベルが低いとしか言えない。

そこで、経済が復活すると言うことは何を意味するか?

それは消費行動が戻ってくるということだ。

世界中の人的交流も戻ってくるだろう。

では、次期政権の最大の課題は何だろうか?

外交だ。

バイデン政権が求めている対中政策の強硬な姿勢は、アメリカ経済への影響を勘案してのもので、早晩、アメリカがTPP加盟に動き出すことも考えられる。

巷の評論家は、イギリスがTPPに無条件加盟することが、中国排斥の切り札であり、イギリスがTPPと言う高い加盟条件を無条件で飲むことで、中国は同じ条件でしかTPPに加盟できなくなる。それは台湾も同様だ。仮に中国が台湾加盟に猛烈に反対したとしても、TPPが台湾を加盟国ではなく加盟地域として加えたとしたら、次に中国が打ってくる手は、台湾を経由してのTPP参加だろう。中国の言い分は一つの中国のため最大の核心的利益でなければならず、その為に台湾を利用することは十分に考えられる。ただTPP加盟国がそれを承認はしない。そうなると、TPPに無条件加盟したイギリスの意味が大きくなるからだ。

また、QuadはTPP経済圏を守るという建前がある。

国の覇権は軍事力と経済力がセットになる。

日本はRCEPを通じて、既に太平洋海域での自由貿易協定を締結済みだ。

RCEPはアジア圏の貿易協定だが、TPPはアメリカ大陸を含む。

アメリカや欧州から中国の内政問題に疑義が出ることで、関税障壁が設けられたことを撤廃することが出来ないでいる中国は、輸出で経済を支えている関係上、東南アジア諸国に比べ大きく後退する懸念がある。

TPPにしてもRCEPにしても、経済交流を円滑にして、生産国と消費国の間の経済格差を縮める働きがあるにも関わらず、中国は肝心の大量消費国である欧米諸国との外交交渉も含めた話し合いが前に進められない。

諸外国は、文句があるなら中国国内の懸念材料を払拭しなさい、と言う言い分を盾にする。それに中国は反論できない。

だから、内需に向かい金融面での安定化をはかり、国内の民意を押さえ込むしかない。結局、潤沢な資金を持つような中国企業から富を搾取するしかない。

新政権で最も大きな課題は、それら日本国内の経済の安定のための外交交渉ということになるだろう。ただ、それは中国に妥協するという意味ではない。RCEPとTPPがある以上、それを全面に押し出して外交交渉をすることになる。コロナ禍における世界的な経済の疲弊がある以上、それが無謀な言い分にはならない。

日本の外交交渉の鍵を握るのが、約束を反故にしない姿勢だ。

これは、過去から積み上げられてきた伝統で、今も変わらない。

官僚の無謬性から来るものだとも言えるが、一方で、日本の外務省官僚は誠に優秀で、外交交渉の場においての情報収集能力はかなり高い。

河野談話が発表された当時の時代背景から言うと、加藤紘一への対抗意識から、韓国政府の甘言と談話の中身と政府姿勢は別物として、対応に苦慮した挙句の打開策としての「河野談話」だったのだが、結果的に、在日韓国人、国内メディア、帰化国会議員、韓国政府を調子づかせるだけになってしまった。その後、政府は河野談話の中身に齟齬は無いとの見解を出すなど、混乱は現在までも引きずっている。

確かに、河野談話の引き金になった朝日新聞は誤報であったことを認め謝罪したが、一旦、政府が公式に発表したものについては、訂正するのも、引っ込めるのもどちらも不味い。

だから、いまだに外務省のHPから河野談話が削除されない。

官僚の無謬性の責任ばかりとは言えず、これは当時の日本政府の玉虫色の政策のお陰でもあるのだ。

では、この河野談話について、外務大臣経験者でもある河野太郎が何かを述べることはあるだろうか?

父親の功績に泥を塗るわけにいかないという人情論ではなく、政府姿勢の否定を行うことは、閣僚としてはそう易々とは出来ない。それをやるのは、日本政府の外交姿勢全般への信頼に関わるからだ。

一方、この河野談話の影響の深刻さは、一般国民にも広く知られている以上、仮に次期政権が外交上のカードに使うとすれば、タイミング的には悪くはない。

韓国の文在寅政権は反日カードを切りながら、中国に擦り寄り、アメリカにいい顔をしようと八方美人外交を行った結果、国内経済はガタガタ、支持率も低下し、死に体状態だ。

次の韓国大統領が保守派になるのではないか?との憶測が流れる原因でもある。

その意味で、対東アジア外交も新たな局面に差し掛かっているように思う。


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