日本政府の大英断の時はいつ?

SARS-CoV-2を引き摺り下ろせ!

新型コロナウイルスが未知のものであった時、日本は徹底した予防線を張り、国内への侵入を食い止めるべく奔走したことは記憶に新しい。

正体の知れない、対処法、効果的な薬、死亡率、ワクチン開発の見込み等が未知数の中、世界中で感染が拡大し日本もWHOの指針に基づき、他国同様にこのウイルスについての対策を行ってきた。

日本は法治国家ではあるが、私権制限に対しての憲法上の規定、現行法の規定に基づくと、感染拡大防止に個人の行動制限を強力に進める法律が無い。

そのため、厚生労働省は新型コロナウイルスに対して、従来の5類に分類するものとは違う指定感染症のカテゴリーを作り、感染が収まるまでの期間、過去に無いウイルスという位置付けを行った。

苦肉の策と言えなくもないが、今できる最善策とも言える。

※新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令等の一部改正について

今年に入りようやくワクチン接種の全体像が見えてきたことで、現在のコロナ禍は次のフェーズに入ったと言えるだろう。

経済は疲弊し、飲食業、サービス業が大打撃を受ける中、日本政府は個人の救済に加え、失業者を増加させないために企業支援に注力してきた。

それは倒産件数を見ても分かる。

休業に追い込まれても、従業員の過度な解雇等に走らず、一定程度の賃金を払いながらでも営業を継続している飲食店も多い。また、雇用調整助成金等、従業員の解雇を防ぐ方策も、一定程度の効果を見せているようだ。

そして、既にニューノーマルな働き方が定着しつつあることで、企業もコロナ禍が収束した後を見据えてき始めた。

一つには、国民の意識の変革もあり、7月中旬に出された4回目の緊急事態宣言による効果は初期の緊急事態宣言のそれとは、全く趣が異なっている。

国民一人一人の気の緩みは無いだろうが、この余りに長期にわたるコロナ禍に疲弊していると言うのが本当のところで、日々の新規感染者がマスコミで取り沙汰されているが、人の出足が減少した印象は無い。

それはワクチン接種が急速に進んでいることもあるだろうが、一つには、SARS-CoV-2が世界が大騒ぎするほどのものでは無いのではないか?という意識の変革もあるだろう。

事実、実は一昨年以後、感染症対策を徹底したことで、感染症関連、特に季節性インフルエンザの発症者数は目覚ましく減少している。勿論、水際対策が功を奏し、新型コロナのみならず、季節性インフルエンザが海外から持ち込まれる数も著しく減少したことも考えられる。

そして、ここにきて厚労省はようやく、新型コロナの取り扱いについて、現行の従来法に無い特別扱いを見直そうという動きに変化が出てきた。

季節性インフルエンザに比べれば死亡率は確かに高いが、現在のような二類感染症相当という段階のものではないのではないか?

ましてや、ワクチンに関しては現在の季節性インフルエンザに使用されるワクチンに比べ、1.5倍以上、効果が見込まれている。しかも新型コロナ(関連死も含む)の死者数は高齢者に集中しており、現役世代の多くは検査で陽性判定が出ても、ほとんどのケースは治療を必要としていない。

人類が初めて対峙したウイルスではあるが、そろそろ、特別扱いをやめる時期が来ていることは、各種のデータから明らかだ。

決断できない政府

ようやく厚労省が重い腰を上げ、分類の見直しを検討に入ったが、そこで障壁となるのが、あいも変わらずの縦割り行政だ。

外務省は周辺国の水際対策に準じようとし、経産省は厚労省の判断待ち、文科省は現場の教育委員会の抵抗で対応はバラバラで、内閣も方向性はワクチン頼みという形になっている。

確かに、当初予定の数字を超えて、物凄い勢いでワクチン接種は行われている。

7月21日現在、東京五輪を現在の状況下で行うこともあり、様々なことを同時進行で行うことには無理があるかも知れないが、政府は五輪後、更なるワクチン接種の加速を行うと共に、次の課題である経済の立て直しをどうするか?に焦点を絞っているようにも見える。

野党やマスコミはバカの一つ覚えのように、「コロナ禍で経済が困窮している人々をどうするのか?」、「こんな状況下で五輪開催など、むしろ感染拡大を助長するだけではないのか?」と政府批判を繰り返す。

一方、政府が次の一手についてある程度の方向性を示したとて、「現在の状況が好転していないのに、その先のことを言うなどおかしい!」という論調で世論を煽ることになるだろう。

その意味では、現在の菅政権のアキレス腱は、実行性のある堅実な進め方に傾注するあまり、野党やマスコミ批判を受けて立つだけの胆力に欠けてしまい、決断力が無い政権と見られている感は否めない。

それが支持率の低下に表れている。

バラマキは悪いことじゃない

前安倍政権の時に、小規模事業者と個人に対して給付金を支給を行なった。確かに一部には急拵えのシステムにより混乱も生じたが、それでも、給付金によって息をつけた国民は多かった筈だ。

特にシングルマザーやサービス業、飲食業に勤めていて、休業、廃業、あるいは雇い止めにあった人たちにも、一定程度の効果はあった。

現在、政府は個人の救済と共に、直接的な影響を受けているサービス業、飲食業に支援を集中しているが、低所得者に関しては、再度の給付を行うべきだろう。

前回は紆余曲折を経て国民全員に一律給付を行なったが、今回は低所得者向けに限定してでも、一律給付を行うべきだろう。

低所得者層の多くは現在、緊急事態宣言や蔓延防止の影響をモロに受けているのも事実であり、また低所得者の場合、配られた給付金を貯蓄には回さない。

つまり、この給付金は即、消費に回されるのだ。

それは消費税にも回されるし、諸税の支払いにも使われるだろう。

サービス業、飲食業、小売業に消費されれば従業員の給与にも回されるだろうし、経営者も一息つけることになるだろう。

政府は大英断を!

前回の給付金の6割は貯蓄と投資に回された。

それは悪いことではないが、やはり経済を回す意味では、直接消費に回されるところにお金をばらまいた方が良い。

大企業は既にコロナ後を見据えている。

一つには、中国をグローバルサプライヤーから外す動きもあり、半導体市場は新しい動きが出ている。日本に生産拠点を置く可能性もあり、また設備投資は順調に伸びてきている。

少なくとも製造業に関しては、求人倍率が落ち込んでいる様子は見られない。

五輪後、ワクチン接種がさらに拡大すればもっと人の行動様式が変化してくるだろう。コロナ前に戻ることはないだろうが、それでも経済が動き始める予感は大きい。

だからこそ、日本経済全体のテコ入れの意味でも、五輪後、直ぐにでもバラマキをやったほうが良い。

そして経済のテコ入れを行なった後、新型コロナウイルスを特等席から引き摺り下ろして、日本を正常運転状態に戻す。

8月から10月にかけて、菅政権の正念場が近づいている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?