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勧学・司教有志の会 声明(八)

浄土真宗本願寺派勧学・司教有志の会から「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に対する声明の第八弾が発表されました。


勧学・司教有志の会 声明(八)

 二〇二三年一月十六日、御正忌報恩講において、ご門主さまのご消息として「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」が発布されて以降、私たちの宗門は、その根幹である安心にかかわる問題について混乱し続けている。御同朋・御同行の悲しみが拡がりつづけ、多くの人々が混乱の収束を願いつつもその道筋を見出せない現状において、このたび、監正局の審査を終えられた德永一道前勧学寮頭が、ご消息「新しい領解文」の文案に対する勧学寮の「同意」の再考を求めて、淺田恵真現勧学寮頭に宛てて要請書を提出された。
 德永前寮頭は、懲戒処分については「自らの不徳の致すところ」とされている。その上で、宗意安心を護らんとする切実な思いから、監正局の審査に関わる一連の資料、及び、このたび現寮頭へ出された要請書を私どもに提供されており、それらの資料に基づいて、勧学寮がご消息文案に「同意」するに至ったおよそ一週間の経緯をまとめると、以下の通りである。なお、この経緯については、監正局の審決書の中でも、当時の寮員の共通認識として認定されている。

  • 令和四(二〇二二)年十二月十二日、ご消息文案が、勧学寮へと回移される。

  • 同十四日、勧学寮は、寮員全員の合議の結果、ご消息文案の内容には、宗意安心上、重大な問題が三点あることを指摘し、総局に対して返答。

  • 同十五日、その返答を受けて来訪した統合企画室長との調整の中で、德永前寮頭が、「宗意安心上の懸念はあるが、解説文を付すことによって同意できる」と独自に判断を下す。

  • 同十六日、寮員会議において、德永前寮頭の独断を、他の寮員がやむなく追認。

  • 同十九日、勧学寮は、ご消息文案に対する「同意書」を回答。

 すなわち、勧学寮は「新しい領解文」についてのご消息文案について、令和四(二〇二二)年十二月十九日付で正式な「同意」として同意書を提出しているが、その「同意」とは、「宗意安心上の懸念はあるが、解説文を付すことで同意できる」とした德永前寮頭の独断に起因しており、それを他の寮員がやむなく追認したものにほかならない。
 德永前寮頭は、このたびの要請書において、まず勧学寮の「同意」の根拠となった独自の判断について、「私は今、その判断が全くもって誤りであったことを認め、撤回するものであります」と、自らの判断の誤りを全面的に認められた。その上で、「私の判断を追認した寮員の判断も再考される必要があります」とし、寮員会議において自らの判断を追認した当時の寮員の判断と、その結果である勧学寮の「同意」を再考することを現勧学寮頭に要請されている。
 もちろん、前寮頭が自らの判断を撤回しても、勧学寮の「同意書」が出されている事実は変わらない。しかし、これは本年の定期宗会に先立ち、ご消息文案に同意した誤りを認めて寮員を辞任された相馬一意勧学に続くものである。当時の寮員五名中の二名が、寮員会議における自らの判断を誤りとすることは異常な事態であり、ことに前寮頭ご自身が、その「同意」の根拠となった自らの判断を明白な誤りとして撤回されたことは、重大な意味を持っている。
 勧学寮は、宗意安心についてのご門主の唯一の諮問機関である。德永前寮頭は、要請書の最後に、「宗門の混乱を収束させるためには、勧学寮がその判断の誤りを認めるほかはなく、それこそが勧学寮として本来の職責を全うする唯一の道ではないでしょうか」と、淺田現勧学寮頭に強く呼びかけておられる。このまま勧学寮が沈黙するならば、それは宗門の現状への容認をも意味するであろう。勧学寮には、どうか、この混乱を収束させるため、德永前寮頭の決断を重く受けとめ、今こそ宗意安心を護る最後の砦として、その職責を果たしていただきたい。

 思い返せば、「新しい領解文」が発布された直後から、宗門は未曽有の混乱に陥り、各教区の学習会では、全教区で疑問や抗議の声が噴出し、全国組長アンケート(約半数の二六〇名回答)でも、七割以上の組長が「違和感がある」と回答する結果となっている。にもかかわらず、得度習礼や教師教修での講義、得度式での唱和、僧侶教本や本願寺新報をはじめとする各種の本願寺出版物への掲載、布教使課程や中央仏教学院での講義等は、今現在も続いている。僧侶、門信徒の方々が、自身の受け止めとは違うものを「領解」として、戸惑い悲しみながら唱和させられているという状況が、いまだに続いているのである。

 このたび、德永前寮頭は、「新しい領解文」のご消息発布に対する勧学寮同意について、自らの誤りを認め、現勧学寮に再考を求められている。誤りを正す第一歩は、その誤りを認めることにある。今日の宗門の混乱は、それが安心にかかわる問題である以上、私たち一人ひとりが捨て置くことのできない問題である。誰もが無関係ではあり得ない。前勧学寮頭が判断の誤りを認められたことにより、現勧学寮の和上方だけではなく、私たちもまた、あらためて大切なこの安心領解の問題を考え、この混乱の収束を目指す、その第一歩を与えられたのである。
 最後に、この声明文は本願寺派の勧学・司教有志により発するものであるが、その「志」(こころざし)とは、ご法義を尊び、お念仏を大切にする僧侶と門信徒の同朋同行と共に、ご門主さまを大切に思う、愛山護法の志であることはいうまでもない。

二〇二四年 十月 一日

浄土真宗本願寺派 勧学・司教有志の会
代表 深川 宣暢(勧学)
森田 眞円(勧学)
普賢 保之(勧学)
宇野 惠教(勧学)
内藤 昭文(司教)
安藤 光慈(司教)
楠  淳證(司教)
佐々木義英(司教)
東光 爾英(司教)
殿内  恒(司教)
武田  晋(司教)
藤丸  要(司教)
能仁 正顕(司教)
松尾 宣昭(司教)
福井 智行(司教)
井上 善幸(司教)
藤田 祥道(司教)
武田 一真(司教)
井上 見淳(司教)
他数名


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