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「新しい領解文」発布前の会議録

2023年1月16日に発布された「新しい領解文」(ご消息)の前身である「浄土真宗のみ教え」(ご親教)は2021年4月15日に発布されています。その当時からもっと声を上げるべきだったのではないかという意見があります。勧学寮の諮問を必要としない「ご親教」で発布されたことがひとつの要因ですが、声が上がらなかったわけではなく、声が全く反映されていないというのが大きな問題です。ここに「新しい領解文」発布前に交わされた議論の一部を公開します。

ご親教「浄土真宗のみ教え」発布(2021.4.15)

第30回宗門総合振興計画推進会議常任委員会(2021.8.2)

竹中委員
宗門として、「私たちのちかい」「浄土真宗のみ教え」の唱和を進めているが、ネット上では、「私たちのちかい」「浄土真宗のみ教え」への批判が多く投稿されており、ご門主に批判が及ばないか危惧している。これだけの批判が寄せられるなか、唱和を薦めることは難しいのではないか。このままでは、将来に禍根を残すこととなる。また、「私たちのちかい」「浄土真宗のみ教え」については、宗意安心に関わることであるため、勧学寮と相談・協議のうえ示すべきであった。ご門主をお守りするためにも今後、慎重な対応が必要である。

石上総長
法灯を伝承されたご門主のご教化としてご親教があると認識しており、そのご親教のお心をいただいて宗務を推進していく。この度の付帯事項一部変更は、改めて親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要趣意書起草委員会を開催し、起草委員会委員全員の同意のうえ、中央法要事務所理事会にて決定した。

第19回宗門総合振興計画推進会議(2021.11.24)

那須野常任委員
『僧侶教本A』の「序にかえて」におけるご親教「私たちのちかい」に関する説明について異議がある。勧学寮において教学的な押さえをしたうえで、あらためて説明の場が必要ではないか。

波佐谷部長
第3回企画諮問会議及び第40回常務委員会にても種々のご意見をいただいており、改めて検討する。

那須野常任委員
み教えの中には、このように生きなさいというのは示されていない。このようにしか生きられない私であることに気付かされることが大事。機の深信が語られていない。

下川委員
ご親教「私たちのちかい」や「浄土真宗のみ教え」の唱和について、唱和するということは伝道活動であるから、慎重に対応する必要がある。

第33回宗門総合振興計画推進会議常任委員会(2022.2.16)

松原会長
「現代版領解文」の制定については、親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画から継続して検討され、今後も制定方法も含め、慎重に検討するとしているにもかかわらず、『拝読 浄土真宗のみ教え』にご親教「念仏者の生き方」「私たちのちかい」「浄土真宗のみ教え」が収録されていることは、整合性がつかないのではないか。

丘山所長
『拝読 浄土真宗のみ教え(改訂版)』には親鸞聖人や歴代宗主のお言葉を収録していることに倣い、ご親教「念仏者の生き方」「私たちのちかい」「浄土真宗のみ教え」が示されたため、改訂を行った。また、旧版には「浄土真宗の救いのよろこび」が収録されていたが、この「浄土真宗の救いのよろこび」は、典拠が明らかでないことから、改訂編纂委員会において、その点が議論された。

第21回宗門総合振興計画推進会議(2022.2.24)

浅野委員
領解文は、み教えに対して我々が領解した心を表すものであり、ご門主のお言葉はありがたく頂戴するものである。なぜ、ご親教「浄土真宗のみ教え」の唱和が領解文となるのか。

丘山所長
現在唱和している領解文は、第17代法如上人及び第18代文如上人の時代に各々が表していた領解を蓮如上人作とされている領解文で統一されたものである。私たちの領解であるため、私たちが作成するべきか、歴代宗主の文言をいただき、それを領解文として用いるか議論が行き詰まっている。

浅野委員
議論が行き詰まっているという説明では納得できない。責任をもって進めていくべきである。また、これ以上議論ができないとなれば、人事を検討しなければならないのではないか。

石上総長
現代版『領解文』制定に向けた取り組みが遅延していることについては、お詫びする。引き続き鋭意、全力を挙げて取り組んでまいりたい。

浅野委員
宗会議員は見識が高く、各地方における『領解文』の重要性やみ教えがどのように伝わっているかなど熟知している。宗会議員を信頼し、重用していただきたい。

那須野委員
み教えや信心に関わる領解文については、勧学寮に確認すべきであり、唱和についても同様である。しかし、全てを総合研究所に委ねており、勧学寮と総合研究所の役割の違いをどう考えているのか。また、領解文の唱和とは、「わが口に出してもう一度聞かせていただく」ということである。

宗本次長
勧学寮は、教義をつかさどる機関であり、総合研究所は宗務を執行する総局の下に教学をつかさどる部門として置かれている。また、教義に関する重要事項に関しては、勧学寮よりの回答を得て宗務を執行することとなっており、必要に応じて勧学寮に確認しつつ、制定方法も含めて慎重に検討を重ねていく。

那須野委員
教義は、「必要に応じて」勧学寮に諮問するものではない。安心の裁定である。

宗本次長
宗法第70条に職務執行の独立性が規定されており、互いに他の宗務機関に不当に干渉してはならないこととなっている。また、勧学寮の所掌事項には「宗務機関の要求に対し回答すること。」とあり、必要があるという場合に、総局が勧学寮にその回答を求めることになる。

那須野委員
ご親教「浄土真宗のみ教え」を領解文と位置づけようとしたことについては、総局が勧学寮への諮問が必要ないという判断であったのか。

石上総長
現代版『領解文』の制定については、非常に重要なことであり、総合計画第1期推進期間からの懸案事項である。制定方法も含めてさらに慎重に検討を進めていく。

竹中常任委員
宗意安心によって教団が成り立っており、これを抜きにして唱和を進めれば、宗門が廃れてしまう。宗意安心を吟味する勧学寮に諮問しないことは大きな問題である。

亀原委員
現代版『領解文』を作成しなければならない背景がわからない。また、「権威あるもの」という表現は、宗門にはなじまないのではないか。

内田委員
現代版『領解文』を制定する必要があるのか。現在唱和している領解文を解説することで内容を理解してもらえるのではないか。

丘山所長
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画において、現代版領解文の研究・検討が行われ、「現代の人々に理解しやすい言葉で表現したものが必要である。」として、宗門総合振興計画に事業が引き継がれたものである。

宗則「現代版領解文制定方法検討委員会設置規程」施行(2022.4.1)
徳永一道委員長より「答申」が石上智康総長へ提出(2022.11.8)

第26回宗門総合振興計画推進会議(2022.11.28)

竹中委員
現代版領解文制定方法検討委員会(以下、委員会)において意義ある論議がなされており、よく整理された答申である。真宗の教えが型にはまったものではなく、ひとりひとりの念仏者にとってわが心に響くような内容になるよう吟味してもらいたい。宗意安心に関わることであるから、学問の中心である勧学寮を通すことが重要である。

竹中委員
答申書にも記載の通り、「権威あるもの」という文言に固執することなく、宗祖の教えをそのまま受けとめていけるものであればいい。後付けで権威付けするのは、宗祖の同朋教団として必要のないことである。

三好委員
委員会において、「権威」あるものが何を指すのかについての議論はなされたのか。

中井幹事
答申書にも記載の通り、委員会において、現代版領解文制定方法検討委員会設置規程の目的にある「権威あるもの」という表現についての議論はあったが、結論は出されていない。

豊原委員
分かりやすく伝えるため、また、若い人に理解してもらうためには、英文法の方が理解してもらいやすいと思うので、現行の領解文を英訳するのがいいのではないか。

石上総長
しかるべく検討を行う。このたびは、現代版領解文の制定方法について委員会にお尋ねし、答申が提出されたので報告を行っている。

松原会長
現行の領解文も、制定当時でいえば現代版であった。「令和の領解文」や「専如門主の領解文」など、制定時代が分かるような名称を検討してはどうか。

桑羽委員
答申書からは現代に合った新たな「領解文」を作成しようとする意図が感じれるが、私たちが親しみ、馴染みのある、蓮如上人が書かれた「領解文」をそのまま現代の言葉に訳すことがいいのではないか。

中井幹事
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画以来、結論が出ないまま宗門総合振興計画に移行し、現代版領解文という考え方を総括した。現代版領解文制定方法検討委員会は制定方法について検討する委員会ではあるが、制定方法を検討するにあたり、まずは現代版領解文の考え方について議論がなされた。最終的には現代語訳ではなく、かつ領解文の考え方について押えたうえで、委員会として制定方法が取りまとめれらた。

石上総長
本委員会は、常務委員会で議決の「現代版領解文」制定方法検討委員会設置規程」に基づき設置され、設置目的にあるように、現代版領解文の制定について、権威あるもの、かつ正しく分かりやすく伝わるものとなるよう、その制定方法を検討するため、5回にわたり協議がなされた結果、現代版領解文はご消息をもってご門主さまに制定いただくのが最も相応しい制定方法であるとの答申をいただいた。総局としては答申内容を重く受けとめ、十分に検討し取り組んでいく。

池田総務
現代版領解文については、親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画以来、布教伝道で広めるためのものとして認識されていたが、このたび委員会の委員より、「領解文」は改悔批判を行うためのものであるとの異なる認識が示されたため、委員会にて議論のうえ、「念仏者として領解すべきことを、正しく、わかりやすい文言を用い、口に出して唱和することで、他者に浄土真宗の肝要(安心)が伝わるもの」として意見が取りまとめられた。これを踏まえて、制定方法を検討した結果が、ご門主様にご制定いただくのが相応しいとの答申になったと理解している。

福井委員
対象は門徒ではなく、これまで浄土真宗とご縁のなかった世界中の人とするべきである。海外開教区に限定せず、世界中の人々に真宗の教えを広めるためのものとして検討いただきたい。

那須野委員
領解文を現代風に、また現代語訳しただけで本当にみ教えを領解できるのか甚だ疑問である。分かりやすいだけでは真宗の安心から離れ、道徳になってしまうので、このように私はみ教えを領解させていただくという文章になるよう、総局には全力を挙げて検討してもらいたい。

ご消息「新しい領解文」発布(2023.1.16)


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