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常務委員会、執務方針演説

常務委員会の主な審議要旨

宗報2023年4月号より

意見
第321回定期宗会では、明年度の宗務の基本方針に関し、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を唱和することについて、布教現場から戸惑いの声があるため、強制的にこれを進めないよう強く要望した。複数議員から、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に総長の著書との類似点が見受けられること、教学上の疑問点があることが指摘されていた。しかしながら、このたびの具体策は、その唱和を強制的に勧めているような内容があり、今のままではご法義が間違って伝わることが懸念され、ご門主様への批判がおよぶのではないかと危篤する。申達した総長の責任がきわめて重大である。慶讃法要での唱和は取り下げて、内容を再検討いただきたい。

答弁
宗務の推進が強制的であるという指摘はあたらず、大変残念である。丁寧な手順を踏み、相談しながら宗務に取り組んできた。新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息のご発布については、第一に、約20年前からの議論を経て、昨年8月に「現代版「領解文」制定方法検討委員会」において、制定方法の議論をいただき、その結果、委員会の答申を受け、ご門主様にご消息として発布賜ったものである。第二に、宗意安心と教義に関する宗門の最高機関である勧学寮の同意がなければ、ご消息の発布はなかった。また、ご消息との関連性について指摘されている著書『生きて死ぬ力』には、その「おわり」に「浄土真宗本願寺派(西本願寺)や龍谷大学と武蔵野大学の見解を代表する書物ではありません。全く私のもの、個人の仕事です」と述べているように、私人として出版したものであることを、まずもって理解賜りたい。総局は、第315回定期集会において、ご親教の申達責任に関する通告質問に対し、

ご親教の内容については、宗法で定められる通り、法灯を伝承して、宗務を統一し、この宗門の中心におられるご門主様のご教化に関することであり、当然ながら、総局が介入すべきことでもないと考えている

と回答している。
このたび、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息を発布賜った経緯は、「現代版「領解文」制定方法検討委員会」から、ご門主様にご消息をもって制定いただくのが最も相応しい制定方法であるとの答申を受け、ご門主様よりご消息を発布賜ることについて総局会議で確認のうえ、内示部を通じてご制定をご門主様にお願いした。その後、内事部よりご消息の文案が担当部に回移されてきたものであり、その間、総局はご消息の内容について一切関与していない。ご消息の文案が内事部より回移されてきたため、宗報第11条の規定に基づき、その文案について、あらかじめ勧学寮に同意を得、ご消息発布について申達し、ご認証を得たのであり、ご消息の内容について勧学寮の同意を重く受けとめている。このご消息の中でご門主様は

伝道教団を標榜する私たちにとって、真実信心を正しく、わかりやすく伝えることが大切であることは申すまでもありませんが、そのためには時代状況や人々の意識に応じた伝道方法を工夫し、伝わるものにしていかなければなりません。このような願いをこめ、令和3年・2021年の立教開宗記念法要において、親鸞聖人の生き方に学び、次の世代の方々にご法義がわかりやすく伝わるよう、その肝要を「浄土真宗のみ教え」として示し、ともに唱和していただきたい旨を申し述べました。

と御示しになられている。また、本年2月召集の第321回定期集会のご教辞において、ご門主様は

このたびの、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)が、我執我欲に執われのない完全に清らかな行いはできないけれども、それでも仏法を依りどころとして生きていくことで、智慧と慈悲、自利と利他という仏さまのお徳を慕い、少しでもそのお心にかなう生き方を目指し、精一杯努力させていただく念仏者の生き方の指針となりますことを願っております。

と、御自らのお考えをお述べになられたことはご承知の通りである。ご門主様のお心を深く受けとめ、定期集会で議決いただいた宗務の基本方針に基づき、このたびの具体策(拝読・唱和等を含む)を提案している。

意見
新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の唱和に対する批判的な意見には、それぞれが主体的に受けとめて、それを生かして、どのように行動していこうかという発想ではなく、これまで通りの一つの解釈しか認めないという態度が感じられる。これは、ある意味権力偏重ではないか。例えば、正信偈を唱和と言われて否定する人はいない。正信偈の意味がわからなければ唱和しても意味がないという人はいないだろう。唱和する、繰り返していく中で、その意味が確認できるということもある。意味が不明であるから唱和することがおかしいという態度はいかがなものか。

答弁
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画の「総括書」には、「布教伝道のポイントの一つは、「簡潔さ」と「繰り返し」であるといえる。教えの内容が簡潔に示され、しかも口に出して繰り返し味わう場面が設定されることが重要となる」と示してあり、これを受けて進めていきたい。

意見
新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)が示されて間もなく、慶讃法要で唱和することとなった。坊守、寺族には十分に伝わっておらず、なかなか門信徒との一体感が感じられない。寺族、門信徒、教化団体が十分に受けとめたうえで、心を一つにして慶讃法要で唱和できればよかった。

答弁
現代版「領解文」の制定は、約20年前から議論されてきたことであり、定期宗会における総長執務方針演説において、制定の経緯、内容、願いを縷々と述べている。ご消息の発布から慶讃法要での唱和までの期間が短く、受けとめが十分ではないという指摘については、提案している具体策に示した通り、今後の全教区・沖縄特区における学習会の開催や、解説本等を用いた周知・普及策を丁寧に積み重ねていきたい。

要望
SNSでは、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に関する疑問視が投稿されているが、これは翻せば、宗門にとって大きなチャンスとなるのではないか。それらの疑問視に対して、わかりやすく、丁寧に、一生懸命説明することで、門信徒や、ご縁のかたった方々へもみ教えが広がっていく絶好の機会になるのではないか。ぜひ丁寧に説明することに注力していただきたい。

答弁
具体策に掲げる取り組みに留まらず、さまざまな普及策を検討し、丁寧に取り組んでいきたい。

質問
SNSでは、憶測や推測が事実であるかのような批判が投稿されている。例えば、総局が起草したご消息文案に対して勧学寮が同意したのではないかという批判であり、そうした批判に対する真偽をはっきりと示すべきである。あらためて宗法に規定する申達とはどういうものであるのか。

説明
申達は、ご消息の発布という行為について伺いあげる、いわゆる稟議書類であり、ご消息の内容について総局が関与するものではない。

質問
勧学寮の同意の過程で、勧学寮から教学上の見解等はあったのか。

説明
総局には勧学寮の同意がなされたという事実のみが通知されたほか、本年2月召集の第321回定期宗会の予算審査会における質疑に対して勧学寮部長が勧学寮員全員の同意があったと説明したこと以外は、総局は存知していない。

※  ※  ※

常務委員会は、宗派の宗務の執行に必要な重要事項を議決する機関として設置されている。常務委員会常務委員は次の各氏。

石上智康(総長=会長)
池田行信(総務)
武野公昭(総務)
日谷照應(総務)
園城義孝(宗会議長)
内田孝(同副議長)
亀井義昭(宗会議員)
公文名眞(宗会議員)
鹿多証道(宗会議員)
滋野浄真(宗会議員)
下川弘暎(宗会議員)
茶屋征夫(宗会議員)
沖井智子(有識者)
樫畑直尚(有識者)
早島理(有識者)

石上智康総長 執務方針演説

宗報4月号より抜粋

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息をご発布
 本年1月16日、御正忌報恩講法要ご満座に続いて、ご門主様より、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息をご発布賜り、その深い思し召しに、身の引き締まる思いであります。ご消息にお示しのごとく、浄土真宗では、蓮如上人の時代から、自身のご法義の受けとめを表出するために『領解文』が用いられてきました。しかしながら、それから500年以上を経た現代において、『領解文』の理解における平易さという面が、希薄になっていることは、否めません。新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)は、この『領解文』の精神を受け継ぎつつ、念仏者として領解すべきことを正しく、わかりやすい言葉で表現された御文であります。
 ご門主様はご消息で、

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)を僧俗を問わず多くの方々に、さまざまな機会で拝読、唱和いただき、み教えの肝要が広く、また次の世代に確実に伝わることを切に願っております。

とお示しになられました。今後は、現代を生きる私たちが、念仏者として領解すべき肝要を、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)として共々に拝読、唱和し、日々に精いっぱい努めてまいりたいと存じます。

令和5年度の宗務の基本方針
新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に学び、行動する
~「伝わる伝道」の実践~

 それでは、明年度の宗務運営にかかる主な4点の重点的事項について申しあげます。
 1点目、「宗務の基本方針」について申しあげます。本件につきましては、総局がその年度にめざすべき基本方針を示し、これをもとに宗務を推進するものであり、既に議案としてお配りいたしております。
 明年度の「宗務の基本方針」につきましては、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息にお示しになられたご門主様のお心を深く受けとめ、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の宗門内への周知・普及はもとより、学びを深める取り組みを進めていくため、「新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に学び、行動する~「伝わる伝道」の実践~」といたしました。策定にあたっては、従前のごとく企画諮問会議におけるご意見、ご提言を参考とし、さらに宗務全般についてPDCAサイクルによる定期的な業務の点検、評価とその成果を踏まえております。
 3つの行動指針については、今年度の宗務の基本方針の主旨を踏襲し、「真実信心をいただくとともに、広く阿弥陀如来の智慧と慈悲の心が正しく、わかりやすく、ありがたく、伝わるよう行動する」、「お念仏を相続し、自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現に努める」、「宗門内外の課題に対応し、伝道活動をささえる持続可能な組織化を推し進める」とし、この行動指針を具現化する取り組みとして注力する7項目、「新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)の学びと実践」、「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要の円成と点検」、「「伝わる伝道」の研究と実践」、「社会の課題への対応」、「寺院活動の支援と人の育成」、「持続可能な宗務組織の構築」、「本山・築地本願寺との宗務連携」といたしております。

(中略)

ご消息発布の経緯

 ここで、基本方針Ⅱの今年度計画の1つに掲げる「現代版領解文の制定に向けた検討」に関連して、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息をご発布賜りました経緯について、付言させていただきます。
 宗門では、約20年前の2005(平成17)年8月1日を始期とする親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画の推進事項「時代に即応する教学の総合研究」の事業内容の一つとして、「浄土真宗の教義と信心(現代版領解文の制定)」が掲げられ、研究・検討が重ねられてきたことはご高承の通りであります。
 親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画の「総括書」には、要旨、次のように記されています。

浄土真宗では、蓮如上人の時代から、『領解文』が「真宗教義を会得したまま口に出して陳述する」ものとして依用されてきた。しかしながら、時代の変化により、領解文の理解において、当初の目的であった「一般の人にも理解される」平易さという面が薄れてきたことは否めない。布教伝道のポイントの一つは、「簡潔さ」と「繰り返し」であるといえる。教えの内容が簡潔に示され、しかも口に出して繰り返し味わう場面が設定されることが重要となる。したがたって、僧侶や門信徒が教義の内容や同信の喜びを簡潔に繰り返し陳述するもので、しかも現代の人々に理解しやすい言葉で表現したものが必要である・つまり、『領解文』の精神を受け継ぎつつ、浄土真宗の教えと信心を現代の言葉で表現した、言わば「現代版の領解文」(領解文を現代語訳したものではない)を制作し普及することが、布教伝道に大いに資することになるのである。

 その後、親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画に掲げられたこの「浄土真宗の教義と信心(現代版領解文の制定)」事業は、2014(平成26)年4月1日に設置された「宗門総合振興計画大網策定委員会」において検討され、その答申に基づき、2015(平成27)年6月1日を始期とする現在の「宗門総合振興計画」に移行されました。これにより新たな事業内容「現代版『領解文』を制定し、拝読する」において、引き続き、研究・検討が重ねられることになった次第であります。しかし、遅々としてその取り組みが進まず、お叱りを受けてまいりました。
 然るところ、宗門総合振興計画第3期計画の始動にあたり、第21回宗門総合振興計画推進会議において、第2期推進期間までの反省点及び今後の課題として「現代版領解文の制定については、権威あるもの、かつ正しく、わかりやすく伝わるものとなるよう、制定方法も含め、慎重に検討する必要がある」こと、また、これに関連する第3期計画の子細として「「現代版『領解文』を制定し、拝読する」については、第1期当初からの懸案事項であり、制定方法も含め、さらに慎重に検討を進める」ことが確認されました。これを受け、第43回常務委員会において、「現代版「領解文」制定方法検討委員会設置規程」が議決されました。これに基づき、昨年8月9日付、「現代版「領解文」制定方法検討委員会」が設置されたことはご案内の通りであります。
 本委員会では、徳永一道勧学寮頭が委員長に互選されました。また、浅田恵真勧学、太田利生勧学、北塔光昇勧学、満井秀城勧学、入澤崇龍谷大学学長に委員にご就任いただき、現代版「領解文」の制定方法について、5回にわたり協議が重ねられました。協議の結果、昨年11月8日付、徳永一道委員長より小職宛「答申書」が提出されたのであります。
 答申書は、現代版「領解文」の制定方法について、「『領解文』の精神を受け継ぎつつ、現代において「念仏者として領解すべきことを、正しく、わかりやすい文言を用い、口に出して唱和することで、他者に浄土真宗の肝要(安心)が伝わるもの」を制定するのであれば、法灯を伝承されたご門主様にご制定いただくよりほかはない」。そして、「消息をもって制定いただくのが最もふさわしい制定方法である」と答申されました。
 このたびの新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息は、第一に、この「現代版「領解文」制定方法検討委員会」からの「答申」に基づき、第二に、宗意安心と教義に関する宗門の最高機関である勧学寮の同意がありましたので、ご発布賜ったものであります。勧学寮の同意がなければ、このご消息のご発布はないのであります。勧学寮においてご消息の解説が作成され、ご消息の全文とともに、「本願寺新報」2月1日号に掲載いたしました。

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