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『WHITE ALBUM2』の思い出


「WHITE ALBUM2」を語ろうとする時、どうしても外せない奴がいる。

そう、丸戸史明。

このアニメの原作者で、昔はエロゲのシナリオライター。今はラノベ作家らしい。
ラノベ作家になってからの彼は知らないが、丸戸のエロゲならそれなりにやった。
「パルフェ」「この青空に約束を」「世界で一番NGな恋」そして「WHITE ALBUM2」
彼の作風は熱く、ハートフルなストーリーの中に、義理と人情でほっこりさせる、あるいは涙を誘うものだった。

そんな彼が三角関係が題材でアニメ化もした「WHITE ALBUM」の新作のライターをやるって聞いたときは驚いた。
そんでもって丸戸が直接販売元であるleafに持ち込んだって言うじゃないか。

「WHITE ALBUM」といえば二人のトップアイドルとの三角関係を描いたエロゲ。
アニメ化もまあまあ成功し、主題歌「深愛」を歌った水樹奈々はこの曲で紅白デビューも果たしてる。

丸戸はもともと「企画屋」という団体に所属していてシナリオライターのお仕事はここを通して受けることが多かったはずだ。
それなのに個人名義で、しかも持ち込みで。
これは本気だぞって。
期待と不安、、、いや、期待しかなかった。

そして満を持して発売されたのが「WHITE ALBUM2‐introductory chapter-」
要するに序章で、アニメの内容もこの序章部分まで。

そう、この内容、密の濃さでまだ序章なんだよ。

アニメは原作にかなり忠実だったから、ここからはアニメの感想として書いていくね。

丸戸の思う「WHITE ALBUM」ってどんなだろう。
無印では文字通りテレビにも出演する人気アイドル2人との三角関係。
これが今作では「ミスコン2連覇中の学園のアイドル」と「将来を嘱望されたうら若きピアニストの卵」なんて現実的なところまで落とし込まれているじゃねぇか。

おぉ、面白くなりそうだ。

そのヒロイン二人のうち雪菜の人物像がもう丸戸らしさ全開で・・・。
学園のアイドルでみんなから好かれる人当たりの良いかわいい女の子。
だけどこいつ自分が他人の目にどう映るのかをちゃんと理解してるし、意識的に八方美人にふるまってる。
丸戸特有のめんどくさい女になりそうな気配ムンムンである。

対してかずさは割とわかりやすいキャラだと思う。
ずっと主人公に想いを寄せてるけど、素直になれず憎まれ口叩いちゃうツンデレな女の子。

さあどうなるんだろう。
どう「WHITE ALBUM」を料理するんだろう。

序盤、主人公が難攻不落と言われた雪菜を口説き落としバンドのボーカルに迎える。
その雪菜がかずさを懐柔しバンドメンバーが出揃う。
そこからは学園祭本番に向け日夜練習に励むと。

うんうん。
丸戸らしく3人の友情を軸に人情味あふれる、けどちょっぴり切ない物語なんだなって。
こりゃあ面白そうだなって思った。

そしたら、3話終盤。
初めて雪菜家にお邪魔した帰り道。

春希「小木曽とは友達になれないって」
かずさ「なれないね。不倶戴天の敵か、生涯の大親友にしかなれそうにない」


あれ。
言葉が強いぞ。

この時僕は悟った。
これは甘酸っぱいひと冬の三角関係を描いたものなんかじゃないぞって。
片方を選べばもう片方は必ず泣く、大団円なんて望めないんだって。

そこからはほんと胃が痛い。
学園祭のステージでオリジナル曲をやると告げられ、春希が書いたという詞を見せられる雪菜。

それはどう見ても春希がかずさを想って書いた詞で。
それを雪菜も痛いほど理解できてしまって。
だけど笑顔で「うん、やろう」って。

もうやめてくれ。
この時点で当時原作をプレイしていた僕のマウスを持つ右手はかなり重かった。

そして迎える学園祭当日。
大観衆の前で雪菜が歌う。
春希がかずさを想って書いた詞に、かずさが春希を想って曲をつけ、雪菜がそれを承知の上で春希を想いながら歌う。

地獄かこれ。
まだ序章なんだろ。
しかもアニメのこの回のタイトルは「最高の、最後の日」
これ、今までのみんなで高め合った楽しかった練習の日々が終わっちゃうよーなんて軽い意味じゃないよね。
3人での楽しい時間はもう二度とこないってことでしょ。
文字通り「最高の日々は、もう終わった」ってことだよね。
誰がこのタイトルつけたのか知らないけど嫌なセンスしてるね。

それでも物語は進む。
次の地獄はすぐにやってきた。

雪菜が春希に告る。
春樹の想い、かずさの想いを知った上での横恋慕。
春希とかずさの心が重なっているのがわかってしまったから。
初めて心から通じ合える仲間ができたのに。
もう仲間外れはやだよって。
そしてなにより、大好きな春希を取られる前に取らなきゃって。
先に取っちゃえばこのまま3人でいるって選択肢もとれる。

そして晴れて?恋人同士になったことを雪菜がかずさに伝えに行く。
この時のかずさの心中たるや想像するだけできついけど、そんなかずさが雪菜の告白を受けて言うわけよ。

かずさ「私のことは、かずさがいいな」


あぁ・・・。
それでもかずさは不倶戴天の敵でなく、生涯の大親友であろうとするんだね。

当時かずさに心が傾いていた僕は「あぁ」とか「はぁ」とか言葉にならない声ばかり漏らしていたように思う。

そしてかずさの卒業試験やら、温泉旅行やらを経て、いよいよ終盤に入るわけよ。
まあ、あくまで’序章の’終盤なんだけどね。

かずさが日本を発つことになる。
温泉旅行で結んだ「ずっと3人でいよう」という約束がさっそく破られる。
必ず解けてしまう、結び目が最初から綻んでいるような約束だけどね。

そして逃げるかずさを春希が捕まえる。
なんで俺の前からいなくなるんだって、俺ってそんなちっぽけな存在だったのかって問いただす春希に、泣きじゃくりながら返すかずさ。

かずさ「そんなのはなぁ、親友の彼氏に言われるセリフじゃないんだよ。私の前から先に消えたのはお前だろ。勝手に手の届かないとこに行ったのはお前だろ。手が届かないくせに、ずっと側にいろなんてそんな拷問思いついたのお前だろ。なにのなんでお前に責められなきゃいけないんだよ。」


うん。
まったくその通りである。

とかずさの気持ちを知ってる僕は思ってしまうわけだけど、幾千のエロゲ主人公よろしく鈍感BOYな春希はそこで初めてかずさの気持ちを知っちゃう。

そりゃもう止まらんわな。
ずっと、それこそ「届かない恋」だと想っていた相手が自分を好きだって言ってくれたんだもん。

もう完全にかずさに心移りしてる春希と雪菜は空港までかずさを見送りに行く。
その道中で雪菜は春希から裏切ってしまったと告白されるけど、雪菜は「二人の気持を知ってて、私が横入りしたんだよ」って。
だから春希君は悪くないんだよって。

健気もここまでくるとちょっぴり怖い。
そもそもこれを健気と言っていいのか・・・。

そして物語はクライマックス。
かずさ居ないねって帰ろうとしたけど、やっぱり二人はお互いに見つけてしまう。

雪菜の前でかずさを抱きしめる春希。
嫌だといいつつ受け入れるかずさ。
どうしてこうなっちゃったんだろうって泣きじゃくる雪菜。

物語は3年後に引き継がれる・・・。


いやぁ、このアニメは本当によくできてる。
原作の良いとこをしっかり再現して、ところどころの補完も完璧。

原作レイプされがちなエロゲ原作アニメの中じゃ格段に出来が良いんじゃないかな。

そんでアニメオリジナルのシーンでとんでもなくセンスの良さを感じたシーンがある。
2話で雪菜と春希がカラオケに行くシーン。
雪菜が中島みゆきの「悪女」を歌ってるんだよね。

誰だこの選曲した奴は。丸戸か?丸戸なのか?
この歌、ほんとにいい歌なのよ。
ちょっと歌詞を引用してみる。
「悪女になるなら月夜はおよしよ素直になりすぎる。隠していた言葉がほろりこぼれてしまう『いかないで』」
これを雪菜に歌わせる制作陣の性格の悪さ・・・もといセンスの良さよ。

とまあ、薄々感づかれてるかもしれないが、この作品においては原作厨なんて厄介な属性を持っている僕もすっかり唸らされてしまった。

いつか、原作の方、三年後の物語もこうして文字に残してみたいが、膨大な体力を消費しそうなのでしばらくはやめておく。
いつの日か、もう一回「WHITE ALBUM2」に向き合える日が来たら。
心に積もる雪が、春の暖かな日差しで溶けていたら。
きっと。。。

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