自由な表現とは何でしょうか
近年YouTubeやその他SNSでの発信によって様々な社会を見ることができるようになりました。誰でも自由に発信し、表現する。それらは不特定多数の人が自由に批評する事ができ、ときにはトラブルが起こったりもします。
真面目で大袈裟ですが、自由とは?
辞書によると
自由とは「民主主義社会において認められている権利」の事で、1は「自由」そのものの意味ですが、社会においては2が尊重されます。
ジャズは自由な音楽だと言われていますが、コードに基づいたハーモニーの理論が存在します。
このハーモニー理論がジャズにとって唯一の「制約」でありジャズ的要素の1つとなっていて、これを練習することによって「ジャズらしさ」を保った演奏ができるようになります。
何事もそうですが、「制約」がないと単なるカオスになりそれ自体に意味を持たなくなります。
もちろんカオスを芸術とするものもありますが、それは「制約」によって生まれるものに対するアンチテーゼの意味合いが強いと思います。
フリージャズは公民権運動などが行われた1950年〜60年代、人種差別による黒人たちの不満や苛立ちの表現の場として生まれたものです。
白人による支配、つまり西洋音楽のハーモニーという「制約」からの解放。したがってフリージャズにおいてコードは否定されます。
オーネットコールマンの”The Shape of Jazz to Come”(ジャズ、来るべきもの)でピアノやギターと言ったコード楽器が排除されているのはそのような意図だと言われています。
フリージャズはポストバップなど、その後のジャズにつながるものにこそなりましたが、フリージャズ自体がそこからメインストリームになったかと言うとそうではありません。
フリージャズの「自由」を履き違えた演奏を度々見かけますが、本当の意味でのフリージャズを演奏するには「制約」を経験してからではないかというのが僕の考えです。
フリージャズではないジャズにおいて自由に演奏すると言う事は「制約」がかかることで、先ほども書きましたがその「制約」こそコードに基づいたハーモニー理論の存在です。
音楽の理論は「守るべきもの」というよりも、多くの人間の感覚による「多数のアイデアを整理してまとめたもの」で、「聴ける音楽」を演奏するために必要な「制約」。
理論に基づいた演奏というのは音楽の芸術面ではなく、演奏する側と聴衆側の共通認識的な側面ではないでしょうか?
一方で芸術的側面での音楽は演奏者側がもっと感覚的であるべきであるし、そこに理屈を持ち込むのは野暮な事です。音楽を含む芸術表現は自由であるべきですし、理論によって制限されることは表現の幅を狭める一方で、これはバークリーによる理論の功罪とも言えます。
僕は「自由」にジャズを演奏するというのは「制約」を理解してそれを越えていく事ではないかと思います。
周りの音を聴かずにアンサンブルを無視して自由に演奏したり、ハーモニーをよく理解しないまま適当なスケールを弾いたりしているなど、「制約のない自由」な演奏をしているのを時々見かけます。
セッションなどでしばしば起こる「よくわからない状況」はこれが原因ではないでしょうか?こういうことを分からないまま垂れ流す演奏は「聞くに耐えない音楽」になります。
冒頭の辞書の言葉を借りると、「音楽的にも社会的にも秩序を乱している」ことになります(笑)
秩序を乱している人がいたら放っておきますか?
裸で歩いていると捕まります。
スピード違反をすると切符を切られます。
「音楽の社会」は一般社会とは違って秩序を乱しても捕まるようなことはありませんが、聴衆や共演者に微妙な空気が流れます(笑)
この辺りは許容量の問題もあるかもしれません。
銭湯やヌーディストビーチのように裸で歩いても問題ない場所もあります。もちろん「ジロジロ眺めない、お互いの距離をある程度取る」など暗黙のルールは存在します。ルールがなければお猿の世界です🙈(いや、お猿の世界にもルールが存在します。お猿さんごめんなさい🙇🏻♂️)
音楽にもこのような場所はあっても良いと思うし、それを認める社会も必要です。我こそは正しい、自分たちの音楽は素晴らしい。そこまでは良いですが、それが排他的になってしまうと宗教のようになってしまいます。
極端なヴィーガンや日本に抗議に来ていたシーシェパードなんかもよく似たものです。
秩序を乱しているもの同士が集まるとお互いに「これで良い」という共通認識が生まれ、それがまわりに広まることにより「当たり前」の範囲が広がります。
先日の東京都知事選挙などが良い例で、「自由」を履き違えたグループがこれは正しい事と発信していくことでそれが一般化する事が近年起こりつつあると言うことに僕は少し危機感を覚えています。
「音楽表現においての自由」をみなさんはどう思われますか?
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