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パレスチナの旅わたしの旅
Suga Azusaさんの個展『パレスチナの旅わたしの旅』に行ってきた。
会いたい人だった。以前、オンラインでインタビューをさせてもらったことがある。彼女の口から語られる言葉は、彼女の身体であり、彼女の魂であった。その土地に足を踏み入れた時から、彼女はパレスチナに関する活動を続けている。
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Azusaさんがパレスチナへはじめて訪れたのは2015年。当時、地中海の小さな孤島であるマルタ共和国に住んでいた。仕事でトルコに行った際、ヨルダン人の友人から連絡があった。「結婚するので、式に出てほしい」。ヨルダンはパレスチナの隣の国。
ヨルダンのアンマンへ行き、結婚式へ出席した。「せっかくここまで来たから、世界遺産のエルサレムを見ておきたい」。軽い気持ちで寄り道がてらパレスチナ行きを決めた。
途中、ヨルダンのアンマンからバスでエルサレムへと向かう。
そのバスの中で「ここだ」と思った。
バスはヨルダン川沿いを走る。死海へと注ぐその川はイエスキリストが洗礼を受けたと伝えられている。海抜マイナス350~400mの場所に死海はあり、そこから標高800mのエルサレムへと続く国道をバスはひたすら登っていく。隣は岩の砂漠。ベドウィン(遊牧民)たちがいて、羊がいて、ぽつりぽつりと緑が見える。その一本道を登っていく時の高揚感が忘れられない。
車窓から見える光景、からりとした空気。バスはエルサレムのダマスカスゲートへと辿り着く。その石の壁に囲まれた旧市街はアラブの香りが漂う。その中にも黒づくめの正統派のユダヤ人が歩いている。まるで19世紀のヨーロッパのようだ。
時空の歪みにすっぽりと落ちた。そのような感動があった。それは忘れられない光景で、今でも当時の感情と共に鮮明に思い出すことができる。それまでにも世界中を旅してきた。南米、ロシア、アジア、ヨーロッパ。ただ、「ここだ」と思ったのはその時がはじめてだった。
10日の滞在を終え、アムステルダム経由で戻った。その足で、Azusaさんは一週間後に発つパレスチナ行きのチケットを買った。
「この土地に関わって生きていこうと思った」
彼女は語る。
「慈善活動という意味合いではなく、自分のためにやっていること」
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パレスチナという土地が、Azusaさんに何を贈り届けたのだろう。それは光に満ちた衝動だけではなく、黒い影を落とし込んだ「孤独の姿」に使命感を抱いたのかもしれない。彼女の言葉は興味深い。
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本当の孤独
私は、あの場所で本当の孤独を見たような気がする。孤独によって自暴自棄を起こしたり、孤独から心を病んでしまったり。孤独から派生するネガティブな現象は確かにある。それでも、私は一人でいることが好きだったし、孤独に対してフラットにいることができた。あの場所に行って、「本当の意味での孤独を経験したことがなかったのかもしれない」という考えになった。
───本当の孤独とは?
「存在を消されている」ということ。孤独というのは、一人でいることだけではないということを感じた。例えば、たくさんの人が集まって一緒にお酒を酌み交わしていたとしても、その中で感じる孤独もある。見た目には楽しいかもしれない。だけど、みんなでいるのになぜか孤独を感じる瞬間がある。
そういうことと同じで。地球には何十億という数の人がいて、こんなにたくさん国もある。だけどこの土地で起きている問題はもはや忘れ去られていることに限りなく近い。もちろん問題を解決しようとしている機関はある。それでも、この国に住んでいる人、生きている人の存在が忘れ去られていることが多い気がして。その時、孤独というのは「存在しているのに、存在を消されていることなんだ」と思った。
私は今まで「淋しい」という感覚がわからなかった。一人でいても平気だった。読書をすれば本の世界に浸り、「一人でいる」ということを忘れることもできた。でも、この土地を訪れて、はじめて「淋しい」や「孤独」という概念を感じとることができた。
パレスチナという土地が好きで、そこで偶然知り合った人とみんなで共に過ごす時間もある。だけど、私はどれだけがんばっても外国人であり、その国のアイデンティティを持つことはできない。
「私のような外国人でも、この国にこんなに興味がある。だから孤独じゃない」
そう思ってもらえたらうれしいという気持ちがある。
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インタビュー後、ぼくは「いつかAzusaさんと会いたい」と思った。「会えるだろう」とも思った。彼女が写真の個展で大阪を訪れた機会に会えることができた。パレスチナの風景と生活、そして奇跡のような青空が写真には瑞々しく映っていた。一時間に満たない時間だったけれど、会えてよかった。彼女の知性と生命力を感じた。
今度はじっくりとお話してみたい。
「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。