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ことばのお守り

ことばの採集」をライフワークとして続けています。

「あなたの好きなことば、聴かせてください」と呼びかけ、教えていただく。ことばの魅力はもちろんのこと、ことばの向こう側にその人の感受性や背景が浮き上がってくる現象が興味深い。“ことば”というマテリアルに結びついた、その人の小さな物語。それを味わい、対話を重ねる。

先日から、スピンオフとして「あなたの好きなツイート、聴かせてください」と内容をアレンジした。140文字のツイートをテーマにしたことで、文脈が生まれる。“ことば”単体ではなく、その文章に含まれる香りや色も楽しめるようになった。潜在的な感覚をスマートに言語化した文章、余情を醸すポエティックな文章、刺激的な内容を軽やかなユーモアで表現した文章。様々なツイートが届く。

そのツイートを読み、紹介してくださった人の声に耳を傾ける。そうすると、少しずつ「魅力的なツイートの要素」が見えてくる。それは大きな岩石を砕いた小さなかけらのようなもので、あらゆるところに散らばっている。その光る鉱物たちを採集することが楽しい。

先日、とある人が一つのツイートを紹介して「お守りのように大事にしています」とことばを添えた。わたしはこの表現を美しいと感じた。“お守り”は、普段から大事に所有していて、災難から身を守ったり、心許ない時は励まし支えてくれたりする存在だ。「ここぞ」という時は、力を貸してくれるような気もする。ただ、何もない日常においては、その存在を忘れていたりする。その自然な在り方が、好きだ。

そうか、ことばもお守りになり得るのか。好きなことばをアーカイブして、人生の節目、または日常から少しはみ出した瞬間に、その存在を感じてみる。声に出して読んでもいい。それだけで少し安らかな気分になるかもしれない。生気が湧いてくるかもしれない。そっと、背中を押してくれるかもしれない。やさしく抱きしめてくれるかもしれない。

「ことばの採集」をはじめて、あらためて思う。
ことばには力がある。
そこには所有する者の小さな物語が息づいている。

あなたの好きなことば、聴かせてください。
 


「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。