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泣いても世界は変わらない
ずいぶんと涙腺がゆるくなったと思います。
たとえば、妻が「すてきなドラマがあってね」と、物語のあらすじを聴いているうちに涙があふれてきて、説明し終わる頃には二人そろって泣いているということがありました。あらすじで泣くなんて、ね。
他には、「どっきり」の企画を見ていると泣いてしまいます。特に誰かを心配させるような種類のどっきり。たとえば、誰かと誰かが喧嘩していて、それを見て心配している、というようなもの。どっきりだとわかった瞬間、その人は安心するんです。「ああ、この人はとても心配してたんだな」って思うと、涙があふれてくるんですね。
あとね、トムという名前の老犬を飼っているのですが、ここ数年でどうもぼんやりしてきたんですね。昔はずっとぼくの膝の上で抱っこしてもらうのが好きだったのですが、最近は体力がなくてソファの上で寝ることが多くなりました。耳も遠くなって、反応も鈍くなっています。そんな彼がそろりそろりとやってきて、ぼくが仕事をしているイスの下で静かに寝ている姿を見ると、涙があふれてきます。
誰かが何かのきっかけで争いごとになっていたり、ボタンの掛け違えみたいなことからお互いを傷つけ合ったり、国籍や思想に対して攻撃したり軽蔑したり。そのような光景を目にすると、胸が苦しくなります。それは火山灰のように、いつの間にかこころの中に重たく積もっていて。
誰かより優位に立つために、違う誰かの足を引っ張ったり。誰かを利用するために嘘をついたり、誰かを消耗させたり。相手をその気にさせたり、騙したり。
人間って何だ?
生きるって何だ?
幸せって何だ?
大切にすること、その意味とはどういうことなのか。
悲しみに耐えながら、今日もみんな生きている。苦しさに耐えながら、楽しいことを探して笑っている。嫌いなことを我慢しながら、ひたむきに前を向く。それらの断片的な光景が、ひと粒の涙を形成する。
それがあふれたところで、世の中はこんなにも変わらないものか、と。
今日も、静かに生きています。
「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。