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1000文字の手紙〈ふむふむさん〉

ふみふむさん、この度は第三回教養のエチュード賞にご応募くださり、ありがとうございます。

この作品に書かれたことは、ふむふむさんの個人的な追憶であると同時に、その中に多くの「わたし」を感じました。この複雑で、陰鬱で、不安で、孤独な感情。暗がりの中、見渡しても何も見えない。それは、確かに「恐怖」でした。

恐怖は、ぼくたちからあらゆるものを奪っていきます。笑顔、安らぎ、創造性、行動力、時間…。以前、とある人が「一人でいる時の孤独よりも、大勢でいる時の孤独の方が淋しい」と言っていたことを思い出します。SNSを開けば、そこには「誰か」がいて。そのことで救われた人もいれば、そのことで傷ついた人もいる。

インターネットの扉を開けた時に広がる世界。それは、「自分がこの場所にいなくても簡単に成立する」という現実を突きつけます。そしてそれは、ふむふむさんのこころにだけ起きていたことではなく、数十億人のこころに同時に起きていたことでした。

コロナウィルスは明確な時代の転換点でした。自分が「ひとり」であることを強制的に突きつけられた。本当に大事なのは、国でもなく、政治でもない。「わたし」と「あなた」の間に結ばれた「つながり」でした。つまり、「わたし」と「あなた」の関係。

それは、パートナーかもしれない。母親かもしれない。親友かもしれない。仲間かもしれない。遠くに住む友だちかもしれない。国籍も、性別も、年齢も、職業も、住む場所も、関係ない。困った時に手を差し伸べ合える関係。

これほどまでに孤独を感じ、これほどまでにつながりを感じた一年はありませんでした。そして、紛れもなく、ぼくはふむふむさんとつながりを感じ合えた。最後に記された「あなた」の中のひとり。全て書かなくても、ぼくにはわかるし、それ以上の「ありがとう」をぼくはふむふむさんに抱いています。

「コロナウィルスが来てよかった」とは口が裂けても言いません。でも、本当に大切なものが明確になったことは事実です。それさえあれば、どこであろうと生きていくことができる。それは、これまでに培った技術と、大切な人とのつながり、それから一歩踏み出す勇気。

それさえあれば、何が起ころうが再出発できる。その自信をくれたのは、大きな困難であり、ふむふむさんたちと出会えたことです。本当に、本当に、ありがとうございます。

このウィルスが落ち着いたら、一緒に乾杯しましょう。

素敵な作品を届けてくださり、ありがとうございました。



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