ゴリを語る (slumdunk)
20年の沈黙を破って今年の冬に映画が公開されるとのことで、なんだか久しぶりにスラムダンクを思い出した。もちろん、花道や流川、安西先生もみんな大好きなキャラクターだけれど、僕個人としては圧倒的にキャプテン赤木推しなので、彼の魅力を際立てる名シーンについて書いていきたい。
グッとくる場面①海南大付属戦
決勝リーグ初戦の王者・海南戦。試合前のミーティングで「オレは今日のことをずっと思い描いていた。インターハイを賭けて海南と試合をするこの日を。一年の時からずっとだ。」と明かし、チームを鼓舞するゴリ。しかし、前半で相手選手と交錯し、足首を負傷してしまう。コートを後にし、控え室で患部を見ると、とんでもなく足首がはれ上がっていることがわかる。無理を押してプレーすれば選手生命にかかわると判断したマネージャー彩子はストップをかける。が、これに対してゴリは「歩けなくなってもいい。やっとつかんだチャンスなんだ」と一蹴。彩子にテーピングの指示をする。このやり取りを陰で聞いていた花道は意気に感じ、ゴリの穴を埋めるべく弟分としてゴール下を守りぬく。同じく火が付いた1年生エース・流川の独壇場とも言える活躍で巻き返し、前半を折り返す。
後半、コートに戻った赤木はケガの影響を微塵も感じさせない気迫のプレーで海南に対する。
その姿勢は敵である海南の県内No.1プレイヤー・牧にさえ、尊敬の念を感じさせるほどのものであった。両チーム互角の戦いを見せる中、いよいよラストワンプレーとなった花道のフリースロー時点で残り10秒。点差はわずか2点。花道はゴリのリバウンドを信頼し、あえてゴールを外した一投を投じる。その期待通りにリバウンドを制したゴリは、延長で湘北には勝ち目がないとして、一発逆転の3ポイントを三井に託す。決まったと見えた三井のシュートが外れ、花道がリバウンドをとる。ラストパスをゴリに回す。。ところが、花道がパスをしたのは海南センターの高砂(ゴリに見た目が似ている)であり、このミスで試合が終わってしまう。
ゴリの気持ちを誰よりも組んでいた花道は作品中、最初で最後の涙を見せたのだった。
グッとくる場面②陵南戦
決勝リーグ最終戦となったこの試合。残り1枠を賭けた直接対決が宿敵・陵南であった。
この試合前日に倒れ、緊急搬送された安西監督不在の中、ゲームが始まる。海南戦で患った足のケガが影響し、ゴリはいつもの精彩を欠く。大黒柱の不調によって劣勢となった前半のチャージドタイムアウトの中、目を覚ますべく花道がゴリに頭突きを食らわせる。するとこれが功を奏したのか、息を吹き返したゴリは陵南のライバル・魚住を圧倒し、徐々に湘北ペースで試合が進んでいく。湘北の不安要素を見抜いた陵南・田岡監督の戦略によって一時ワンゴール差にまで追いつかれるものの、その不安要素とされた副将・小暮の3ポイントと花道のダンクによって勝利を飾った。
そして、この後が個人的にスラムダンクで最も感動的な場面。
試合終了を告げるブザー音とともに、インターハイ出場が決定した湘北が勝利の歓喜に沸く中、最後の整列に向かうシーン。会場全体が興奮状態のまま両チームの選手が並んでいく中、目を押さえたゴリだけがその場に立ち尽くし、動けない。
弱小公立校で孤軍奮闘してきた2年間の苦悩、数々のトラブル、自身のケガ。すべてを乗り越えてついにインターハイを勝ち取った不屈の主将は涙を押さえられない。
涙のゴリが花道に肩を抱かれて整列するこの場面。奇しくも、涙した花道がゴリに連れられた海南戦の整列シーンが布石となる。この師弟関係がほんとうに美しい。
グッとくる場面③山王工業戦
インターハイ2回戦は王座に君臨し続けている、圧倒的王者の山王工業。下馬評ではA+の山王に対してCクラスの評価であった湘北が伝説的なジャイアントキリングを起こすこの試合は、全31巻のスラムダンクの中で25巻から最終巻までの7巻にわたって描かれている。神奈川予選で数々の強敵センターを下してきたゴリはこの試合、大学でも即トップレベルと呼び声の高い相手センター・河田に対して全く歯が立たない。これまでの自分が培ったものがすべて跳ね返され、次第に自分を失っていったゴリ。そんなライバルを励ますべく、陵南・魚住が板前姿でかつら剥きをしながらコートに現れる。「華麗な技を持つ河田が鯛なら、お前は鰈だ。泥にまみれろよ」とだけ言い残し、審判につまみ出される魚住。
湘北との試合で赤木に劣ることを悟り、主役を仙道や福田に委ねた魚住ならではの説得力を持つ言葉で、ゴリは自らの役割を再認する。1対1では河田に敵わなくとも、かつてのワンマンチームとは違い、頼れる仲間がいる。つい1年前まで、県予選での大敗を惜しむこともないチームメイトしか得られなかった赤木には今、そんな仲間の存在が感じられるようになった。黒子に徹する覚悟のできたゴリに迷いは消え、湘北の怒涛の追い上げで見事この試合に勝利する。
slumdunkは美しく終わった
この山王工業戦で歴史的勝利をおさめた湘北は、続く愛和学院との試合であっけなく負ける。主人公が1年生の夏までで終える学生スポーツ漫画も例がない気がするが、あれだけ濃密な試合の数々とドラマを見ると、とても美しく終わりを迎えたように思う。作中で最も過去回想のシーンが多いキャラクターがゴリであり、その存在抜きにしてslumdunkは語れない。
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