レスラー
映画「レスラー」
2008年のアメリカ映画です。
監督は1998年の映画「π」で注目された気鋭の映画監督ダーレン・アロノフスキーです。
主演はミッキー・ロークです。
80年代に一世を風靡した役者ですね。
キム・ベイシンガーの肢体に氷をはわせるラブシーンが有名な映画「ナインハーフ」や、
熱帯夜の悪夢のような映画「エンゼル・ハート」と、
いつもどこか湿り気のある役者ですよね。90年代からは人気にかげりが見え始めました。
この映画「レスラー」はミッキー・ローク自身の物語です。
ストーリーですが、ひとりのプロレスラーが主人公なんですね。演じるのがミッキー・ロークです。
80年代に人気が沸騰し、今はスーパーで働きながら、どうにかリングにあがっている毎日なんですね。
昔から服用していたステロイド剤の影響で、体はボロボロ。
そんな男にはリング以外にもうひとつ心の拠り所があるんです。
ストリップクラブで働く女性に想いをよせてるんですね。
そして、この男にはひとり娘がいるんです。
ずっと長いこと会ってないんですね。
自分自身の再起をかけ、娘との関係を修復する決心をするんです。
カメラはミッキー・ロークの背後から手持ちカメラで撮っていきます。
観ているわれわれも、レスラーの世界を体験してるかのようなドキュメンタリータッチで描いています。
プロレスシーンでは実際のレスラーたちがやってるんですね。生の迫力、息づかいが伝わってきます。
役者もいいですね。
ミッキー・ロークの娘役をエヴァン・レイチェル・ウッドが演じてます。
2003年の映画「サーティーン あの頃欲しかった愛のこと」で注目されましたね。少女と大人の両面をもった、目力がある女優さんですよね。
ミュージシャンのマリリン・マンソンと交際したりと、
ハリウッドの王道からはそれたアーティスティックな香りがあります。
そして、ミッキー・ロークが想いをよせる女性をマリサ・トメイが演じてます。
20代でデビューを飾り着実に実力をつけてきた魅力的な女優さんですね。
そして、ミッキー・ロークはこの演技でふたたびスポットライトを浴びました。
もともと実力がある役者ですよね。
ニューヨークに「アクターズ・スタジオ」いう名門の演劇学校があるんです。
役者としてアクターズ・スタジオにはいるのは、ひとつの夢であり、ステータスなんですね。
出身者には、ジェームズ・ディーン、マーロン・ブランド、マリリン・モンローと、そうそうたる役者が顔をならべます。
若きミッキー・ロークもこのアクターズ・スタジオのオーディションを受けにニューヨークへやって来るんです。
そしてオーディションを終えた後、審査員のエリア・カザンから「過去最高のオーディションだった」と、その演技を絶賛されます。
この映画はそんな彼自身の物語でもあるんですね。スタジオは集客力のあるスター俳優を使いたかったらしいです。でも監督は、主演はミッキー・ロークじゃないとダメだと、譲らなかったそうです。彼じゃないと、主人公の男の痛みをみせることはできなかったですね。
映画終盤、今日も主人公の男はリングに立つんですね。体はボロボロ、もう心臓はヘトヘトになってる。それでも立つんですね。
自分のために、娘のために、愛する人のために、この男はリングでしか伝えることができないんですね。
監督のダーレン・アロノフスキーはこの作品の後に、映画「ブラック・スワン」で今度はバレリーナの世界を描きハリウッドの頂点にのぼり詰めます。
一歩間違えればスタジオから煙たがられる監督かもしれませんが、いい子ばかりじゃ退屈ですよね。自分の好きなこと、好きなものを撮り続けることは困難なことですが、単なるハリウッドの雇われ監督では終わらない、職人気質がある監督ですよ。
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