元ネタと桃の園

SNSのタイムラインでちょっと話題になってたネタです。

『桃の園』という新規連載がタイムラインを騒がせていました。どうにもこの作品が元ネタに対して少しリスペクトを欠いてるんじゃないかというのが中心だったようですね。
僕もちょっと思うことがあったので、これをネタにしようと思います。

どうゆう話

主人公の女の子が戦隊ヒーローに憧れてヒーローの養成学校に入るという話です。ただ、その社会でのルールとして女性は戦隊ヒーローの『レッド』にはなれない。「ピンクにしかなれず」、また「怪人にとどめを刺せない(レッドに譲る)」「サポートに徹するべき」と言う不条理に対して抗うといったストーリーラインのようです。
新規連載ので、今はこの部分だけです。

物議を醸したこと

今回の話の中で非常に物議を醸したのが設定ですね。
世間で言うところの戦隊、いわゆるスーパー戦隊シリーズについてなんですけれども、実はシリーズ作の中では。女性がレッドになったケースというのは存在しています。(一時的なものですが)
また、女性の戦士がピンク以外の色になることというのは往々にしてありますし。また、彼女達はあくまで戦士であって、サポート役に徹するというような書き方はこれまでされてなかったかなと言うふうに思います。女性がリーダを務めた作品もありましたし。
現実世界のマーケティングの都合上を男子向けのホビー販促作品という宿命があるので、レッドに男性主人公をあてがい、彼を中心に物語が進むという側面は否定できないところはあるのですが、「戦隊」のフォーマットとしては『みんなで』戦っているという前提を元にしているため、ことさら「女性が下がっている」という脚色表現に物議が生じたという形です。

実際に読んでみた

他人の風評だけで物語の良し悪しを判断するのは良くないので、実際に読んでみました。
戦隊は子供の頃から見ていて、今もちょくちょく情報は追って、時間があえばチェックするぐらいには好きなんで。実際どういう感想が出るかなと。
で、読んでみた感想なんですけれども、ちょっとこれやっぱ僕としてはあまり好みじゃないなと。
さきにネットの風評を見てしまっているっていう部分はあると思うんですけれども、そこを差し引いても、これが戦隊もの(ニチアサ)である必要性がないな。と感じました。
物語を大雑把に言えばヒーローになりたいけど、ヒーローになれない女の子の話なので、例えば『僕のヒーローアカデミア』の学科別の話をここに当てがあったとしても、同じようなことが描けると思うんですよ。そこに対してわざわざ「戦隊のピンク」っていうキャッチーなものを持ってきたというだけ。でも、そうやってもってくるんだったら戦隊シリーズっていうのが何を守って作ってるかっていうのは、もう少し配慮してほしかったなあというのが正直な感想です。

戦隊というフォーマットが守っているもの

今回の話があって、改めて戦隊(スーパー戦隊シリーズ)のフォーマットを考え直すきっかけにはなったんですね。
特に今回は女性がヒーローになれないという話だったので、文字通り戦隊におけるジェンダー論ってなんなんだろうか?そういうのを考えてみたんですね。
すると、戦隊ってこの手の「戦闘集団」を扱う作品、仮面ライダーやプリキュアなどと比較すると、性差が少なくなるように配慮された作品なんじゃないかと思うようになりました。
先に申した通り、やっぱり戦隊もビジネスの一環な部分はあるので、マーケティング上、男児を対象にしているので、男の戦士が注目されるという点は避けれません。ただ時代に合わせて女性の戦士の扱いは変わってきてるんですよね。
例えば、僕が物心ついたころには、ピンク以外の女性の戦士というのはすでに生まれていましたし。その後、女性がリーダーを務める作品。女性が追加戦士である作品もあれば。逆に近年ピンク色の男性の戦士が出てきたり、なんかもしてるんですよね。また、海外作のパワーレンジャーの方では、いわゆる人種がすべてメンバーの中に揃うように配慮もされていますし。
他方で(引き下げたいわけじゃないんですけれども)仮面ライダーは、女性のライダーは最近増えましたが、タイトルのライダーになることは無いですし、プリキュアも昨年作は(元は獣ですが)男の子が混じってましたけれども、シリーズとして男性のレギュラー戦士は彼以外いないっていうふうになってます。これらも、マーケティングの都合上、受け入れるべき仕方のない部分です。
なので戦隊ってよく「女性はレッド(主役)になれない」という批判にさらされることもありますが、実はジェンダー論っていう意味合いでは比較的緩やかなフォーマットに収まっていて、男の子も女の子もみんなでを意識して守ってる作品なんじゃないかなと思います。

だからこそ、もやる

なので、今回の作品に対して僕が一番モヤッとしたとは、まさにここだと思いました。
大元の戦隊作品の作り手の方は、男女差というのを極力なくすように、平等になるように作ろうと努力しているのに、外野の方が自分の書きたいものを書くために、フォーマットのジェンダー論を元の作り手が望まない方向に際立たせて物語を作ろうとしている。という部分にちょっともやり方を覚えたのかなと。

パロディにおけるリスペクトとは

この話を考えていく中でもう一つ気になった話題がありました。それはパロディを行うに当たって配慮すべきリスペクトとはなんぞや?という点です。おそらくこれは人によってそのファンによってラインが違うんだろうなと思いますが。
戦隊を元にしたパロディ作品っていうのは多数あって、僕もいくつか見ていますが、ちょっとこれは…があれば、面白い許せるものもあるんですよね。今のサブカルチャーな界隈ってパロディが結構多い。戦隊に限らず、乙女ゲームとか、ドラゴン退治するRPGとか

どこまでが許されて、どこまでがだめなのか?というラインはまた今度ちょっと探りに行ってもいいのかなと。

「桃の園」の受難

ストーリーに対する設定の裏どりがちょっと甘くないかというのは、先ほどから書いた通りなんですが、さらに掘ってみてこの作品の先は結構茨だろうなと思いました。
パロディをするということは、基本元ネタのファン層は味方につけておきたいというのが常道だとは思うのですが、今回はパロ元のファンが敵に回ってしまい、初手としては如何にも対岸に行ってしまった。
そして、本家の戦隊シリーズのフォーマットが異常に底が深いこと。「ピンク以外の女性はいる」もそうですが、大方思いつくようなことって本家の方でやってしまった感じはあるんですよね。『ピンクが男性』『戦隊メンバーの恋愛』『メンバーが怪人になる』等など、戦隊フォーマットとして異色性を出そうにも、大体やってるんじゃないかという。半世紀にわたるシリーズなので、本当に重箱になってくる。
更に手痛いのは大元である「女性のヒーロー」というネタは去年「ひろがるスカイプリキュア」でやったんですよ。『ひろがる』を『ヒーローガール』と銘打って、とりわけ何か舞台装置でコンプレックスを持たせることなくまっすぐにヒーロー目指した女の子の話。客層が違うということはあるでしょうが、これもやっぱり、ニチアサの民を取り込む上ではちょっと壁かもしれません。

見かけてネタにした以上、しばらくは追いかけてみます。
この辺の受難をどう乗り越えるのかを少し期待しています。


終わりに~へんなオチがついてしまった~

この記事を書きあげている最中にへんなオチが付きました。
というのも、同じく戦隊をパロディにしている作品が来年アニメ化するそうです。
この作品は、図らずもレッドを主題にしていて、SNS上でも「よくできた作品」として、『桃の園』と対比されていました。
ピンクの作品が対比されまくった後に、レッドの作品がアニメ化するというのは、作中の表現に対する皮肉が効きすぎているなと。

事実は小説より奇なり。

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