![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143756962/rectangle_large_type_2_2644d00e56a576b96bb08be7b4b74308.png?width=800)
美樹さやかは魔女になり、佐倉杏子はならなかった理由
正しすぎて、優しすぎた少女
さやかは最後に信じるものが何もなくなってしまったから、絶望して魔女になってしまったのではないか?と考えた。
まどかとまどかの母・詢子が会話するシーンの引用から紹介したいと思う。
「うん ちょっといい? …友達がね 大変なの 正しいことを頑張ろうとすればするほど どんどんひどいことになっていくの」
「よくあることさ」
「え」
「悔しいけどね 正しいことだけ積み上げていけば ハッピーエンドが手に入るってわけじゃない」
「わたし どうしたらいいんだろう」
「そいつばかりは 他人が口を突っ込んでも奇麗な解決はつかないねぇ …たとえキレイじゃない方法だとしても解決したいかい?」
「うん」
「なら間違えればいいさ」
「間違える…?」
「ずるい嘘ついたり 怖いものから逃げ出したり でもそれが後になってみたら正解だったってわかることがある。本当に他にどうしようもないほどドン詰まりになったら いっそ 思い切って 間違えちゃうのも手なんだよ」
劇場版魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語
まどかと詢子の会話 前半部分より
「正攻法が通じない問題が存在する」、「必要悪がある」といったことをまどかに諭しているが、それはさやかが最後まで出来なかったことだ。
美樹さやかは騎士のイメージが個人的に強い。高潔で誇り高く、献身的な象徴としての騎士だ。
しかし作中では人魚姫のモチーフが強く、最後は悲劇と共に消えてしまう。
オクタヴィアのデザインが人魚で騎士なのはいつ見ても秀逸だなぁと思う。
「奇跡も魔法も あるんだよ」
「マミさん 私の願い 叶ったよ 後悔なんてあるわけない」
「あたしは 人のために祈ったことを後悔してない その気持ちを嘘にしないために後悔だけはしないって決めたの」
美樹さやか セリフ抜粋
物事も人も、同一のものがいくつもの表情を見せる。
アンバランスさ、未熟さ、独りで先走ってしまう部分など、見てられないと思うのも無理はない。
しかしそれでも彼女には自分の選択を後悔しないと言い切る純粋さがある。
それは彼女にとって諸刃の剣であると同時に、人々に希望を見せてくれる。
そんな誇り高い彼女だからこそ、自分が穢れてしまったと感じたときの絶望は計り知れない。
仁美が恭介に告白すると突き付けたシーンも、おそらく後悔してる自分自身を許せなかったのだと思う。
仁美を助けなければこうはならなかった、恭介の腕を治さなければ違っていた、自分が魔法少女でなければゾンビになることもなかった。
さやかは全てを正しかったと思えば思うほど、全て間違っていたと思ってしまったのだと思う。
そうして最後に何も信じることが出来なくなったから、あんな風に自虐するしかできなくなったんだと思う。
後悔なんて、あるはずなかった少女
対して杏子が魔女化しなかったのは、父親の教義をずっと信じていたからだと思った。
父親が発狂し魔女だと罵られ、信者もろとも家族を巻き添えに心中してしまう。しかし杏子の願いは「父親の教義を真面目にきいてほしい」であり、父親が狂ってしまっても死んだとしても父親の教義そのものは何も揺らがない。
「あたしの祈りが家族を壊しちまったんだ その時心に誓ったんだよ もう二度と他人のために魔法を使ったりしない この力はすべて自分のためだけに使い切るって」
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語
佐倉杏子 セリフより
教義は死なずとも、父が狂い、周りの人間が死んでいってしまった光景を見て、杏子は魔法が災いを呼ぶと思ったのではないだろうか。そしてそれは自分のせいだと強く責任を感じたはずだ。
「他人の為に魔法を使わない」
これは自身の利益のための思想ではなくて、彼女なりの他人を守るための戒律だったのではないだろうか。
そう考えると、杏子の豹変ぶりが理解できる気がするのだ。
というより何も変わっていなかったことになる。
杏子は一貫してさやかに忠告をしていただけであり、言ってわからねぇ殴ってわからねぇなら、と過激な手段を取ることはあっても災いを防ぐという一点で戦っていたという解釈が生まれる。
魔法少女が魔女を生むと知ったときのマミが「死ぬしかない」と言ったのと似ていると思う。
しかし信じたものに裏切られながらも孤独な生を選んだ杏子のこれまでの人生を思うと胸が痛む。
だからこそ最後のシーンが心を震わせるのだとも思った。
「怒ってんだろ 何もかも許せないんだろ わかるよ それで気が済んだら 目覚ましなよ なぁ」
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語
佐倉杏子 セリフより
最後の心中についてはまともに語れる自信がないので割愛させてもらうが、おそらくはさやかに自分を重ねて過去の自分を救ったという解釈が個人的にはしっくりくる。
父親が自分を残して心中したときに、杏子だけ残されたことに関しては本当に絶望していたのではないかと思うのだ。
それをさやかを通して救ったという解釈が私は綺麗だと思った。
もうとにかく杏子の最後の表情見てくれよ。彼女は最後あれで救われたんだよ。さやかも救って、自分も幸せだったんだよ。もうそれでいいよ。
杏子の考察は感情的になってしまってまともに出来ないのが厄介だ。
まとめ
魔女化する条件は「信じるものがなくなること」という考察でした。
まどかが魔女になることへの考察や杏子とほむらの類似性、さやかが「恭介の演奏がまた聴きたかっただけ」としたシーンの考察など、まだまだやりたいことはあるのですが難しい。
そのうち個々の考察をまとめてまどマギ全体について考察してみたいけどなぁ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?