マガジンのカバー画像

エッセイ

3
運営しているクリエイター

#象徴界

mémoire

 名前には根拠がないので、瞼を開けて目に入ってくるそれを天井とか壁とかでなく、少しさみしいオレンジ色のひろがりのそのままとして受け止める。カーテンがあいていて、全部がオレンジになっている。

 起きあがることのだるさより寝つづけることのだるさが大きい。母親はまだ帰ってきておらず、泣きたい気持ちとほっとする気持ちとがどちらも本当としてある。そばのテーブルに置きっぱなしの缶詰のモモを口が甘く覚えていて

もっとみる