日本はスタグフレーション(インフレ、不景気)に突入した話

だんだんと、日本がスタグフレーションに突入したという専門家が出てきており、そのエビデンスも示され始めてきました。

そもそもスタグフレーションとは何なのかというと、不景気なのに物価が上がり続けることを言います。
普通は不景気だと賃金が下がったり、失業者が増えますが、物価も同じように下がります。(マックのハンバーガーが60円になったり、吉野家の牛丼が250円だった時代です)

スタグフレーションに突入したのではないかという指摘はコロナ禍からあったのですが、多くの専門家は否定していました。
何故かというと、教科書的なスタグフレーションでは、失業者が増えたり、賃金が下がっている状態を指すからです。

しかし、今は記録的な人手不足であり、失業者どころか、外国人をさらに増やそうという状態です。本当にスタグフレーションなのでしょうか。

そもそも好景気、不景気とは何か?

そもそも好景気でなければ、不景気なのです。
そして不景気とは、供給が縮小していることを指します。

一例を挙げましょう。
ある国で優秀な大統領が誕生した結果、その国では1年で国民の平均給与が1.5倍になりました。月給20万だった人が30万になるわけですね。
そうすると、人々は余裕が出て、増えたお金をいろいろなことに使います。
もちろん貯金する人もいますが、新しい家電や家具を買ったり、広い家を買ったり借りたり、リフォームしたり、旅行したり、車を買ったり、服やカバンに靴を買ったり、高級な食品を買うわけです。

これが需要が拡大したという状態です。

そして需要が拡大すると、経済の教科書的には供給が拡大します。
車を買う人が増えて納車までに時間がかかるようになれば、自動車メーカーは工場を増設したり、24時間体制にして増産するなど、人や設備に投資をします。

これが供給が拡大した状態です。
このときに生産性を向上させるために優秀な人を集め、供給力を高めるため労働力を必要とするため、ハイスキル層の年収も上がり、最低賃金も自然と引きあがっていきます。
こうして、労働者全体の賃金水準は引きあがっていき、また需要は拡大していきます。

これが好景気の循環になります。

この逆が不景気です。
一向に賃金が上がらない国がありました。そのため国民はあまりお金を使わなくなりました。安い服を買い、安い食べ物を買い、車を買わなくなり、結婚もしなくなり、子供も産まなくなりました。

その結果、需要が縮小し、供給も縮小することでさらに賃金は上がらなくなり、失業者が増え、需要はさらに縮小する。
これが不景気です。

日本は不景気なの?

日本はでは、いまどういう状態なのか。
賃金は上がり始めており、失業者は少なく、仕事は余っている。一見すれば好景気に見えます。

しかし、不景気なのです。

日本では世界で初めて、というよりは有史以来初めての「戦争などが原因ではない、労働力の絶対的かつ長期的な減少による不景気」を体験しようとしています。

一例を挙げましょう。タクシー業界です。いろいろなところで人手不足が言われていますが、同様に人手不足の業界です。

タクシーが全国で圧倒的に足りていません。現に、駅前で1時間もタクシー待ちを強いられたり、街中で流しのタクシーはもう捕まらないとまで言われています。
実際に私も仕事で当日タクシーを急遽使いたいとなって予約をしようとしても、何社にも断られました。

これは供給不足状態です。そうすると、経済学的には、供給拡大していくはずです。
具体的には、新たに参入する会社が出たり、社員を増やします。そして、車も増やしていきます。
これは「人と設備(車や事務所、駐車場、ガス設備など)への投資」です。
そうすることで、自動車メーカーや整備会社、不動産、などにもお金が回り、景気が拡大するわけです。

しかし、いまタクシー会社はむしろ倒産、廃業し始めており、社員も増えるどころか全国で見ると減少し続けています。
つまり好景気の逆であり、不景気の状態なのです。
廃業したり、規模を縮小すると、車は買わなくなり、整備会社への依頼も減り、ガスの使用量も減り、事務所や駐車場も解約になります。
つまりお金が回らなくなるのです。

なぜ供給が拡大しないの?

まず絶対的に労働力が足りません。なので、労働力の確保にこれまで以上にお金がかかるようになっています。

つまり高年収で雇ったり、宣伝広告や採用費に多額の資金を使わないといけないわけです。
しかし、そのためには売り上げを増やし、利益を拡大しないといけません。
ですが、こちらも容易ではありません。

まず売り上げを増やそうにも人口は減り続けます。なので、国内向けのサービス(タクシーとか)は簡単には、攻めに出れません。また、国内の消費者の4分の1が年金暮らしの方々です。
つまり好景気になってもすぐに収入が増えにくい人たちなのです。
(年金が実感できるくらいに上がるには、好景気になって税収が上がってから国会で審議して決まり、そこからさらに法案施行まで待たないといけません)

つまり、いまタクシーを増やせば乗ってくれるはずのお客さんを乗せることはできますが、そのために社員の給与を大幅に上げて多くの社員を雇っても数年後には人口が減少し、またタクシーが稼げない時代が来るかもしれないのです。
(個人的には現状のタクシー運転手は高齢者ばかりなので、客の減少より先に今の運転手は引退していくので問題はないと思っていますが、しかし確証はないので経営者も踏み切れないのでしょうね)

デジタルに乗り遅れたツケ

供給が拡大しない、もう一つの理由はデジタルに国、企業、それぞれが乗り遅れたツケです。
人口減少はわかっていたのですから、もっと自動化や省人化に力を入れるべきでしたが、そこに注力をしませんでした。

また昭和的な非生産的なビジネス習慣も改めるべきでしたが、これもしませんでした。
朝礼や無駄な会議、無駄な書類、意味のない強制出社、こういった生産性を下げる行為を廃止すること。
テレワークやWEB営業などWEB通信の活用、ロボットやAIの活用など、パッと思いつくだけでも、これらのことを日本全体で本気で数年前から取り組んでいたら、日本の生産性は数字で見えるくらいには上がっていたと思われます。

生産性の向上は、人が余ることに繋がり、それは人手不足の解消要因になります。

これからどうなるのか?

ここからどうなるかは、正直誰も確定した予想はできません。
なぜなら、歴史上初めての状況だからです。普通のスタグフレーションならば、失業者が増えていき、困窮者が増えるはずなのですが、それ以上に現在は人手不足です、

なので、単純な失業者が増える状況にはなるとも思えません。
また人手不足状態により賃金は上がっているので、スタグフレーションが最悪の状態と言われる理由である、「賃金の下落と物価の上昇」という状況になるかも不透明です。

ただ、少なくとも言えるのは不景気に突入したのは間違いありませんから、付加価値の低い企業は潰れていきます。
付加価値の低い企業の仕事は、同様に付加価値が低い傾向にあるので、労働内容も誰でもできる仕事であることが多いです。

反面、生き残る会社は付加価値の高い企業であり、その仕事内容も付加価値が高いです。つまりは専門性のある仕事と労働者というわけです。

今後に不安を覚える方は、ぜひ専門性を高めることをおすすめします。
そして、ここでの専門性というのは、何も語学やITスキルだけではありません。

今後、単身者が増えていくので、例えば料理のスキル、掃除のスキル、なども立派な稼ぐ力になっていきます。
何か一つでも、生きていく力をつけていくことが大事になります。

本日はこれで終わりです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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