見出し画像

ザ・ローリング・ストーンズ  ベガーズ・バンケット その① 及び、ジャンピン・ジャック・フラッシュ

前回は、1stについて書いてみたので、次は『ベガーズ・バンケット』について書いてみようかなと思います。

と思って書いてたら、またまた長くなったので4つに分割しました(笑)。
とりあえず①から公開し、④まで行ったら、それぞれへの相互リンクを貼ります。

漠然とした思いではあるんですが、今のところ、ストーンズのアルバムレビューは「彼らにとっても転換点となったものから書いてみようかな」というもありこれを選びました。

まず、初めに60年代のストーンズを流れで追うと、だいたい以下のような感じに分類できるかと思います。

UK盤の『ザ・ローリング・ストーンズ(1St)』『No2』『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』
US盤の『ザ・ローリング・ストーンズ(1St)』『12×5』『ザ・ローリング・ストーンズ・ナウ!』 『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』までを「カバー主軸時代」としたら

『アフターマス』、前々作『ビトウィーン・ザ・バトンズ』前作『サタニック・マジェスティーズ』では、「オリジナル指向」「サイケデリック路線」かつ「ヒットメーカーとしての腕を上げた時期」でもあるかなと思います。

『サタニック・マジェスティーズ』で、完全サイケ路線に振り切っては見たけど、グループ本来の持ち味が出し切れず、セールス的にはよかったものの、これではいかんと舵を切りなおしたのがこのアルバムということになるかなと。

その意味で、この『べガーズ・バンケット』というアルバムは、転換点の一枚とみてよいかなと思います。

その転換点という観点から観て、このアルバムを語るとするなら、前作とこのアルバム前に発売されたシングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ(Jumpin' Jack Flash)」についても触れざるを得ないかなと思っておりますので、それに触れて、その後、『ベガーズ』に行きます。

前作のトピックとしては、「US版とUK版が初の統一」「アンドリューとの決別」と「初のセルフプロデュース」辺りにあるといってよいかと思いますが、この時期、グループ内に色々ごたごたも多く(ドラッグ問題など)バンドとしての筋を通しきれず、どちらかと言えば失敗したいう感じだったかと思います。

ただ、実験的ではあったものの、個別の曲ではいいのもありますし『マジェスティーズ』からドラムの音の締まり具合が上がっているのは、次につながっていると思っていますし、『マジェスティーズ』時期の悪い流れを断ち切り、その後のストーンズのスタイルの確立を始めたのがこの『ベガーズ』であったともいえるかなと思います。

また、この前作から「ベガーズ」において「逆境に強いストーンズ」というところを見せてくれたところもあるかと思います。
この頃のストーンズは、逆境の時期であり、この前の数年や、ブライアンのことでは、良い状態ではなかったかと思うのですが、それを見事跳ね返して、これを創ったところが見事だなと思いますね。

では「どのようなスタイルを確立したのか」といえば「黒人音楽と自分たち流のロックの融合」であり「スタジオ録音の持つ意味合いをフルに使い切り、そこに『自分たちのスタイルの強みを遺憾なくつぎ込み作品としてのレベルを一定水準に高めて発売する』というあたりではないかと思います。一言でいえば「成熟度を高めたアルバム」が作れるようになったと言ってよいかなと思います。

このアルバムの方向性を決定づけたところを箇条書きすると
・ジミー・ミラーをプロデューサーで起用したことと、それによる黄金期の始まり(これはご存じの通りミックの考えでした)。
これが大正解で、この流れから、ストーンズの音楽的充実期が始まったとみてよいかなと思います。

ジミー・ミラーの特徴の一つは「リズムに対しての見識の深さ」であり、彼がストーンズの強みを結び付けることの意味を理解していたことがマジックを生んだところはあったかもしれません。

それにより、ストーンズの本来の持ち味を引き出しつつ、それらの成熟度を一気に引き上げたと言ってもよいかなと思います。

アンドリューは音楽的プロデューサーというよりマネージャーであり「流行」目線や「若者」目線には強く、ミックとキースに作曲を勧めた(強要?)した点等でストーンズのブランド化に貢献したのかもしれませんが、ジミー・ミラーは、音楽面でのブランド化に貢献したといえるのかもしれません。

・「黒人音楽」への回帰と再アプローチ
『ビトウィーン・ザ・バトンズ』『サタニック・マジェスティーズ』で、少し薄くなっていた「黒人音楽」への回帰と再アプローチを図ったこと。
また、メンバーの成熟度も高くなってきた頃と重なっており、このアルバムから、質がぐっとあがっていると思います。

・レコーディングの取り組みの充実度の高まり
これは前作でやった実験的なことも、積み上げとしては役に立っていると思いますね。このアルバムは、サウンドの引き締まり方が半端ないですよね。

過去と比較した場合、「サウンドの厚みのつけ方」が格段にうまくなってます。具体的な例で言えば「ギターのオーバーダビングの数」とかです。
二本ではなく3本とかになっている曲が多いですが、前と違っていますね。
もっと細かく言えば、パンニングする際に、空間づくりのために広げるのではなく、逆に同じような楽器を近いところにあつめるとかすることで、「聞き手にはっきりとに悟らせることなく、不明瞭な音の上に、音を重ねて、厚みと奥行きをつける」手法です。

この辺りのことを指摘している人は少ないですが、ストーンズのスタジオアルバムって、結構、ギターが3本とか4本とかが多く、部分的であるにせよ、それが微妙に違うリフとかになっていて、かつ、明確に聞こえない音量で2本以上はいっているとかが結構あります。そうしたことを始めたのが、このアルバムからだと思います。少なくとも、明確に始めたのは、ここからといってよいと思います。

ファースト時点から4年経っており、メンバーの年齢は、録音時点でだいたい以下のような感じだったはずです。
ミック 24歳
キース 24歳
ブライアン 25歳
チャーリー 27歳
ビル 31歳
 

ということで、このアルバムを語るうえで「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」について述べざるを得ないので、そこから行きます。

60年代はシングルの時代であった面もありますが、この曲はいわゆるアルバムには入ってないんですよね。これはシングルのみでの発売ですので、ベスト盤的なものを除けばアルバムには入っていません。

本来、この曲は、『ベガーズ』に入れる予定だったというのは有名なエピソードですし、入れていれば、このアルバムの一般的評価や売り上げは違っていたかなと思います。※そういう意味では「ホンキートンクもシングルのみ」なんですよね。ストーンズ、60年代はこういうのおおいですよね。

デッカとアルバムジャケットのことでもめ、発売が遅れたので、その期間をあけたくなかったから先にJJFをシングルで発売したというのは有名な話ですが、この辺りの出来事が、のちの「スティッキーフィンガーズ」での、独立への伏線になっているのも見逃せませんね。

この曲については、もはや説明不要の曲かもしれませんがまとめると、、、
・ジミー・ミラーの初プロデュース作 一連の黄金期の始まりを告げることになった曲。
・オープンチューニングの導入
(ただし、Gではなく、キースによるとオープンDにカポをつかったそうです。Eのような気もしないでもないですが、Dらしいです。後々ライブではオープンGなんですが、とにかく、この時点ではオープンGではありませんでした)
・エレキを使ってないのにあのSound!
厳密に言えばエレキも一応使っているんですけど、あまり聞こえてません。
メインは、Philipsのカセットデッキで録音した音をスタジオに持ち込んで加工したアコギのテイクを使ってます
(ストリート・ファイティング・マンも同じく)。
・ギターはテープが伸びたように聞こえる個所があるが、まさにカセットデッキで録音したためにそうなった?
最後までほぼ何のフィルもないチャーリーのドラムのシンプルさに、デコレーションを排した、原点回帰の姿勢を観ることができる(クラッシュシンバルすらほぼつかってないこの潔さ!)。これだけシンプルなドラムはロック史上、他に例はないかなと思います(シンプルではあるが、曲の途中から、マラカスを加えて厚みを徐々に増す工夫は、ストーンズの常とう手段ですけど)。ここによほどの自信をみますね。
・その他、キースはbass tomもやってるみたいですチャーリーのドラムはシンプルですが、キースのバスタムと思われるものが「ダン ダダン」とたまに変化を加えています。でも、チャーリーのスネアの方はフィルはほぼ入れてませんね(この音は、曲頭とサビ前と二番前とエンディング前のFOが始まるところで2発打ちしている)。
・ピアノはイアン・スチュアート(と記載があるのですが、ほぼ聞こえません…笑)
・印象的なビルはオルガン。ベースはキース。
・キースによると、曲の冒頭は「砲火のハリケーンのなかで生まれた」という意味があるといっている。
印象的なイントロなのに、その後、この入り方をしたバージョンは存在しない。
・ブライアンはエレキで参加(多分、左のエレキがそれ。ただ、左にはアコギも入っているので、そっちはキースですね)。
ギターは、おそらく、Acoustic Guitar3本、エレキ1本くらいはいれてます。少なくともアコギ2本とエレキ1本は確実に聞こえてきます。
先にも書きましたが、ストーンズお得意の不明瞭にするための手法ですね。そんなに入っているように聞こえないようにしつつ、実は、厚みをつけているんです。
他にもいろいろあるんですが、長くなりすぎるので、これくらいでw

これはオリジナルシングルMonoVersionです。

これ、怖すぎw。不気味だな。ミックの歌だけは、実際に歌ってますね。
キースだけ、普通にかっこいい感じですが、他は怖い。ビルの顔白塗りし過ぎだし、チャーリーは額のマークが不気味。ブライアンも違う世界に足を突っ込んでいる感じがしますしね。
エンディングが少し長いので、オルガンのフレーズの続きを聞くことができます。

で、やっと『ベガーズ』の話に行きます。

『ベガーズ』の録音期間」は1968年3月17日~7月25日録音で、1968年12月6日リリースとなっています。
録音はロンドンの「オリンピックスタジオ」で行い、一部をLAの「サンセット・サウンド・スタジオ」で追加録音し仕上げた
(このオリンピックスタジオとストーンズのことは、後半に別途書きます)。

アルバム全体の印象としては、意外に「アコースティックなサウンドが多い」ということがありますね。それらに関しては、曲ごとのコメントで改めて触れることにしたいと思いますが、多分、アルバム中半分くらいの曲でエレキを使ってません。残り半分くらいが、エレキとアコギの両方でエレキだけの曲は0です。

ということで①では、「ベガーズ」の立ち位置と、ジャンピン・ジャック・フラッシュで終わっておきます。

次回は、各曲ごとのレビューです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?