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エンジニア的視点からモータウンサウンドを研究する。Vocalを前に出すための工夫(温故知新)

これは、ちょっとマニアックです。読んで頂いても「意味不明」となるかもしれません。実は、数か月前に書いたんですが、「こんなの読む人いるかな」と、公開するのをやめた記事のひとつです(笑)。

ボーカルを際立たせる手法の一つというか、そういうことについてモータウンがやったことです。

当時、モータウンが会社として自分たちの売りと考えてたことは「Excitement(要するに、「高揚的で刺激的なサウンド)」で、それを実現するにはボーカルと同じ位、楽器やリズムも強調したかったとのこと(実際、モータウンのサウンドでは今の感覚で聞くとタンバリンとかが異常に大きい!しかし、それがまたかっこいい)。

当初、エンジニアはそのバランスをコンプとEQで解決しようとしたみたいですが、その手法のみでやると、どうしても、ボーカルの生き生きした感じが失われてしまい、結果、ボーカルが目立たなくなって本末転倒になってしまう。それらを両立させるために彼らが編み出した手法、工夫の話です。

編み出したのは、モータウンのエンジニアのローレンス・ホーンという人です(この方、後年、経歴的には、ヒットマンを雇って、元妻を殺害したとかで終身刑になったとからしいですが、、、)。

ここからは、DAWとかをする方ではないと、もはや暗号のような文章にしか見えないかもしれませんが、言葉で書くとそうならざるを得ないので、そのまま書きます(笑)。

で、なにをやったかというと、シンプルに書けば、
ボーカルトラックの出力信号をミキシングコンソールの2つのチャンネルに分割して、
一つにはコンプレッサーをかけて
もうひとつにはコンプレッサーかけない
ということ
です。

もう少し詳しく書けば

コンプレッサーをかけないほうのチャンネルにはReverbをかける(EQは補正程度)。

コンプレッサーをかけているチャンネルにはEQかけ、

それら2のチャンネルを一つのチャンネルにまとめる。

これで埋もれさせずに押し出し感、存在感のあるボーカルトラックにするということですね。

たしかにこうすると、若干、音は濁るかもしれませんが、太くはなりますし、存在感は増します。

まぁ、モータウンですから、ボーカリストは一流ばかりですし、その点から見れば、元々、非の打ちどころがないとは思いますが、同時に、エンジニアリングの観点からも、歌を埋もれさせない努力をして、あのサウンドを作ったわけなんですよね。こうした様々な努力や工夫はほんとうに素晴らしいなぁと思います。

音楽では、もちろん、ボーカリストや楽器奏者、ミュージシャンや曲が大事ですし、技術が音楽そのものを上回るとたしかに本末転倒だとは思います(今の時代は逆にそうなりがちですが)。ただ、この場合、もともとの「良いものを損なわないために」、「感動する部分が削られてしまわないために」やった工夫だと思うんですよね。逆にそうすることで、商業ベースでの競争力をもたせたというか。

モータウンは、あのサウンドもそうですし、クオリティーも一定レベルが保たれていて、それを会社として編み出したというか。ほんとに面白いですね。

録音したものを人に届けるには、こうした録音技術や工夫も本当に大切だと思うんですよね。特に、商品化されて、販売されているものの多くは、こうした多くの人の力があって「よいもの」となっていると思うのがひとつ、そして、この辺りは裏方的なもので、表に出ないですから、軽視されがちなので、ちょっと書いてみたかったのもあります。

余談ながら、ビートルズも、モータウンのサウンドを研究して、あのダブルボーカル(二度歌い)を取り入れたんですよね。そして、それが面倒になって途中からADTを使い始めたということですね。

ということで、今回の記事は、興味のない人にはなんのことかわからないようなネタです。まぁ、ただ言えることは、このモータウンの手法は、ミキシング革命の一つだったということです。

歴史的には埋もれてしまってきている(特に日本ではあまり知られない気がします)知識なので、まぁ、温故知新的観点からも、書てみようかなと思いました(といって、いまとなっては新しいとも言えないので、温故知新は少し使い方が違うかな…笑)。

私も、うちの奥さんのボーカルでモータウンものをやったときには、これを取り入れています。見事に似た感じの雰囲気になって面白かったですね。

これはその手法を取り入れて再現したものの一つです(ボーカルだけではなく、他の楽器も同じようにモータウンサウンドの手法を自分なりに研究して再現してみたものです。今風のサウンドでもやれるんですけど、こういうのもおもしろいのでやってみた感じです)。

<実際にやってみたい方へ>
DAWなどをされる方で、試してみられる場合、歌は、「二度歌いのダブルボーカル」でも、「一つのものを分割」でもいいと思います。

そこは、意図するサウンドで使い分ければよいかなと思いますが、効果自体を確認するなら、「一つのボーカルトラックを分割」の方がわかりやすいかとは思います。

ちなみに、再現を試みる場合は、まとめたChannelにテープシミュレータ―をかけるとさらに良い雰囲気になります。

以下、英語ですが、記事の元ネタのひとつです(他にも英語でもう少し詳しい記事もあるんですが、長くなるので、一番シンプルで実践的なのを紹介しておきます。EQの周波数とかについてもかいているので、実践される人は参考にして下さいませ)。


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