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ギタリスト列伝:5 クラレンス・ゲイトマウス・ブラウン

列伝5人目は、Clarence "Gatemouth" Brownにしました。途中からギタリスト目線で書いてみました。今、この時代にゲイトマウスを紹介する人は減ってきてると思うので、あえて、書いてみようかなと。

ゲイトマウスは、生まれはルイジアナですが、テキサスとの州境に近いところらしいですし、私の認識では、テキサス系スタイルのブルース系ギタリストです。本人は、ブルースと言われるの嫌がったそうなので「ブルース系」としておきます(笑)

確かに、カントリーぽいサウンドの曲もやりますし、ファンクぽいのとか、ザディゴとか、ごった煮状態ではあるので、言いたいことはわかります。

曲によっては、フィドルも使いますし、書いたように、ジャンルも多様ですので、ブルースと言う枠からは出ているのは、その通りだと思います。
しかもそのフィドルはかなり攻撃的!しかも、弓を使わずに弾いたりとか、フレットレスウクレレ状態ともいえ、自由過ぎる!

王道的な演奏としては、ジャンプ・ブルース系が得意で、ホーンセクションも多様しますし、分類としてはT-ボーンの直系のテキサス系の系譜であると思います。私は、このジャンプ系が好きなんですよね。

ゲイトマウスの音楽性は多様ですが、興味のある方は、既に聞いておられるでしょうし、もしこの記事で、興味を持った方がいれば、そこは、もう聴いてもらうとして、せっかくギタリストが書いているギタリスト列伝ですし、ギタリスト視点から、少し深堀してみたいと思います。

<ゲイトマウス独自の特徴的な指弾きスタイル>
この人も右手が特徴的なギタリストです。
というか、かなり変わった弾き方です。
いや、それでは言葉が足りていないですね。
もはや「変態的な弾き方」と言ってよい弾き方ですね。
これは、私も完全には真似できません(笑)

特に特徴的なのが親指以外の指の使い方です。

右手を見ていると、絶対ではないにしろ、大体の場合、上の方の弦(4弦から上)は、親指で、下の方(3弦から下)は、人差し指と中指で弾く感じの弾き方ですね(ほぼ人差し指で弾いて、中指は補助的)
これと似てるのは、ジョン・リー・フッカーもですが、ジョンリーはスピードがここまでではないですからね(ジョンリーもそれに近いけど、曲がっている)。

指弾きギターの右手は、親指以外は、「指は折れた状態で弾くのが普通」ですが、ゲイトマウスは「指がまっすぐ張っている」んですよね。しかも、逆ぞりに弓なりになっているように見える!

もう少し詳しく言えば、「人差し指で弾く場合」、普通は、「くの字型」、に近い感じじゃないですか。しかし、映像を見ればわかりますが、ゲイトマウスは、人差し指の「人指状態の如くまっすぐ」。いえ、逆への字くらい、まっすぐなんですよね。

こんな弾き方、弾きにくくて仕方がない! 

ギターを弾く人は試してみてください。きっと初心者に戻った気分を味わえると思います(笑)。というか、「指を曲げずに人差し指で弾け」といわれたら「イーー」という気分になると思います(できないことをやるときのあのイライラ感をたっぷり味わえると思います)。

これをどうしてもマスターしたい場合、割りばしで指を固定でもして弾かないと、普通は、無意識に曲げてしまうと思います。

親指で弾く方の弾き方は、私もやりますし、ある程度は、やれなくはないんですが、普通は、これだけでも、かなり難しいと思います(フォークとかでやるスリーフィンガーのではない方のです)。こんな弾き方を推奨している本や教室はないでしょうから、よほどのブルース好きか、そういうのから影響を受けていないとやらない弾き方かなと思います。

ところで、この親指ですが、ここにも特徴があります。
「指の腹を弦に押し付けて(押し込むように)弾く」ようなやり方は、黒人ブルースのギタリストでやる人が多いですが、ゲイトマウスもそれ
ですね。

この当て方は「音が濁る」のと「太くなる」ので、ブルースにはぴったりですが、指の力が強くないとなかなかうまく弾けない弾き方だと思います。
ただ、ダウンはいけても、アップがし辛く、オルタネイトにはかなりの慣れが必要です。早いパッセージのフレーズにも向いてません。
それに、そこまでやっても、いわゆる普通の意味での「綺麗な音」は、この弾き方では出ないので、一般的な弾き方とは言えないと思います。

ちなみに、親指で弾くやり方は、Jeff Beck先生の曲をやるときに、応用したことはありますが、うちのチャンネル的にも、曲的にあまりやってません。(Davidさんの曲をアレンジして演奏した際に、親指だけでソロを弾いた記憶があるので、一応、欄外にそれを貼っておきます)。

他の指の方を使って、寝かせてこすったり、はじいたりするする方の弾き方も、できるにはできるんですが、スピードが速くなると厳しいですね。しかも指をピーンと張った状態で弾くのは、今のところ、ほぼ無理です(笑)。

余談ながら、カントリーなどで指を使う場合、ブリッジに対して、平行において、安定度も高いフォームにしますが、彼ら(黒人ブルースマン)は、上から斜めにあててますし、それ以上に、下からはじくようにして弾くのがすごいですね。この辺りは、白人のギタリストとの大きな違いだと思います(あくまで一般論ですが)。

私の場合、若いころに、自然に彼らからかなり影響を受け、慣れ親しんでいたので、特段、意識したわけではないんですが、こうした弾き方は合理的ではないので、普通は推奨されないと思います。

ただ、本家の黒人ブルース的な「ぐしゃっ」とした音が出したい場合には、避けて通れないところはあるかなと。

いずれにせよ、この弾き方は、音がエグイ感じになるので、あの手のブルースをやるなら、取り組むべきではあると思います。ただ、安定した音が出るようになるには、それなりに慣れと訓練が必要だと思います。

<キーに応じたカポの利用>
後、ゲイトマウスは、キーを変えたときにカポを使うのも特徴的かもしれませんね。私が若いころは、映像があんまりなかったので、これは、当時は気づいてませんでしたが、あのフレーズの秘密はこの辺りにもあったんだろうなと、最近では思っています。

チューニングはレギュラーですが、こうすることで、開放弦が多用できるので、それでやっているのだと思います

カポを使うのは、アルバートコリンズもですが、あの人は7フレで固定だったかなと。たしか、オープンEマイナーで7カポという意味不明なセッティングだったかな。これは、またいずれ。


アルバート・コリンズもゲイトマウスも、私の若い頃のアイドルギタリストだったなと今となっては思います。マット・マーフィーとかもそうでした

今、うちのチャンネルでは、こういうのはやってませんが「こういうギターが弾きたい」と、強く思っていた人たちです。

今でも、やってみたいんですけどね。いつか、本家ともいえる黒人の人たちとやれる機会がくるまで取っておきます(笑)。

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ということで、見てもらわないと伝わらないかと思いますし、せっかくYouTubeがありますし、いくつか貼っていきます。

<参考動画たち>
まずは、
マディーでおなじみのモージョーウォーキン(Got My Mojo Workin)。
ファンクぽいアレンジですが、これが最高にかっこいい。
これが入っているアルバムは、確か、アリゲーターからでてましたかね。
あの頃、アリゲーターは名盤を結構出してましたよね。
タイトルが思い出せなかったので調べましたが「Standing My Ground」と言うアルバムでしたね。
あれは、リアルタイムで買ったし、よく聞きました。
そういえば、この曲からは、フレーズもコピーしてましたね。

Pressure Cooker
これはアルバムのより、このライブの方が生きる曲ですね。興奮度が高い。
最高にクールでスリリング。これは危険だわ。
聴いているだけで、興奮してきて気絶、いや、死にそうw。
一度でいいから、こういうバンドで、こういうギターが弾いてみたい。
これ指で弾くのって、ウェス・モンゴメリー並みの衝撃だと思うんですがw

Brown Okie Dokie Stomp
こちらは、40年代後半だったか、50年代初めだったかのキャリア初期の頃に録音した曲だったと思います(この映像は60年代でしょうけど)。
これもすごい。これ、リッケンバッカーですよね。
後ろで踊っているダンサーもこの時代を感じさせる映像ですね。

HONKY TONK
これもマディーがニューポートだったか、ライブインパリだったかでやってましたよね。でもやっぱ、ゲイトマウスのはシカゴ臭さがないですね。

Leftover Blues
このフィドルはCDで聞いたときにぶっ飛びましたね。
ライブ映像で見るとさらにいかついですね。
ただ、アルバムでは、この曲では、フィドルを使わず、別の曲でフィドルを使っていたような記憶が、、、。未確認ですが。


Mojo Workin 2つ目
これは晩年期のサンタナとかとやったときのMojo Workinですね。
これはBDで出ていたので、買いましたので、映像を持ってます。 
ベースが何気にダリルジョーンズですよね?

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以下はおまけ。ここからは別にゲイトマウスとは関係ないです。
先に書いたので、その通り欄外に貼っておこうかなと

この三曲は、指弾きだけでやってるやつですね。なぜかDavidさんとの曲に集中している(笑)

それ以外では、この間のABBAのDancingQueenとピープルゲットレディーでもやってますが、そっちはJeff Beck系の弾き方としてなので。

これはDavidさんのオリジナル曲です。アレンジは私がしました。ソロの部分から再生されるように貼っておきましたが、ソロの部分は親指だけで弾いてました。

これもDavidさんのオリジナル曲で、アレンジも担当しています。
これも、全般、指ですね。私のは人差し指とかは折り曲げてますけどw

これはカバーですが、やはり指だけ。
これもソロのところから再生されるようにしておきましたが、
Davidさんの演奏と歌に合わせてますから、えぐい音を出す理由がないので、そこまで激しくは弾いてません。
でも、多少は鋭く弾いてる個所もありましたので、こういうところに黒人ブルースマンからの影響がでているかなと(笑)。
彼らの凄さは、はるかに上なので、それと比較するのは無意味ですけどね。


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