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ローリング・ストーンズ 1STアルバム①

今回は、前から書こうと思っていたローリング・ストーンズのファーストについて書いてみました。って、これ、PC内を検索していたら、10年くらい前に書いていたやつがあったので、それを再整理してアップしました。

でも、この時点では、ブログとかでレヴューを書いていたわけでもないのに、なんで、こんなのを書いていたのか自分でも不明です。

それを使いつつも、加筆修正したので、ちょっと、文章のテイストがいつもとは違っているかもしれません(笑)。

ファーストってことで、少し、周辺の話も含めつつ書きますので、今回は、ながくなるので、2回に分けることにしました。

ということで、まずは、今にも続く、デヴュー時点での彼らの特色について総括的に書いて、アルバムレビューは2つ目のまとめようと思います。

<デヴュー60周年を超えて活動を続けるストーンズの始まり>
まずもって言えることは、このファーストがリリースされた後、今日まで60数年にわたって活動することになろうとは「本人たちも含めて、誰も思わなかっただろうな」ということですかね(この元記事を書いたのが、10年前だったので、その時点では60のところが50になっていましたが、そこから更に10年…笑)これは実質的には、もはや誰も抜くことはできないでしょうね。

ビートルズがビートルズと名乗って活動を始めたのが1960年で、デヴューが1962年10月で、ストーンズは1962年7月"The Rolling Stones"と名乗ってライブをし、1963年6月だったかに「カム・オン」でデヴュー。
なので、ビートルズとは8か月の差でのデヴュー。

ファーストはそれらのステップのなかで1964年1月に録音、4月発売されたものですので、ほんとに60年前なんですよね。
それで、まだ現役というのは一体何なんでしょうか?(笑)。
※ちなみにアニマルズの1stがこのアルバムの数か月後に発売されています。

余談ながら、1stを出した64年4月時点でのメンバーの年齢は
ミック 20歳
キース 20歳
ブライアン 21歳
チャーリー 23歳
ビル 27歳
 ←間違いではありませんビルは7つ上なので。
という感じだったはずです。

ちなみに、イアン・スチュワートはちょっと上だったので25-26歳?

「全てはビートルズから始まった」的な言い方をされていますが、その半分側を受け持ちつつ、60年もそれを続けるとは、、、。

<ストーンズがもっているリズムの違和感と特殊性について>
まさに「ロックの歴史はストーンズと共にあり」ですし「ストーンズはロックの代名詞」のように言われているとは思うんですが、個人的には、これは半分同意で、半分不同意という感じがしています。

ストーンズは世界最高のロックバンドと称されることもありますし、もちろん、その称号にふさわしいとは思うのですが、いわゆる「ロックバンド」とはいろんな意味で違っていると思うんです。

なんというか、個人的な感覚で申し訳ないんですが、私は、「ストーンズはストーンズであって、いわゆるロックバンドという感覚では聞いていない」という感じであり、特定の個人ではなく「バンドとしての音」が好きなんです。きっと、ストーンズファンの多くがこの意見に共感してくださるかなと思うんですけどね。

ですから、自分にとって、ストーンズはあくまでも「ローリングストーンズというバンド」という感覚なんですが、その原点にあるのが、「ロックン・ロール(キースの名言ロールも含めて)、チャック・ベリー、シカゴ・ブルース、当時のR&Bからの影響を、あのメンツで演奏したところに、彼ら固有の何かが生まれた」というべきなのかなと思います。

それをその後、60年間、色々新しく取り込みつつも、同時に熟成させ、あの音を構築し続けてきたわけで、その原点の一つが、ファーストなわけですから、ファーストを聞く際に、これらの部分を意識しつつ聞いてみると、また違った聞こえ方がするんじゃないかなというのが、この記事を書いてみようと思ったきっかけです。

ストーンズに特別な面があるとしたら、長寿なキャリアと共に、独自のリズムセンスをもっていること、そして、大衆性だと思うんですよね。

そのリズムセンスのところをもう少し突っ込むとしたら、ストーンズのアルバムの歴史は黒人音楽を中心とした広い意味でのポピュラーミュージックのリズム変遷の歴史も含んでいることも重要な一面だと思うんですよね。
ファーストでも、この黒さが全開されてます。音的にも、選曲的にもです。

その取りこみ方がうまいというか。凄くマニアックなんだけど、大衆性も持っているというか。これを違和感なく成立させているのは、メンバー各自の強力な個性もあってのことでしょうけど、これが、他のロックバンドとの明確な違いの部分だと思うんですけど、それがこのファーストの時点でもう、明確に出ているというか。

ブラックミュージックから影響を受けているバンドやミュージシャンは、この後、大量に誕生していくわけですが、その先駆者でありつつ、それをぶれなく自らの独自性にし続けているところが彼らの音楽的な屋台骨であると思いますね。

この辺りの特徴を箇条書きでまとめると
1.ブラックミュージックへの傾倒から生まれたバンドであったこと。
2.明確な意図を持ったツインギターバンドであったこと。
3.チャーリーの存在
4.プレイヤー志向ではなく、アンサンブル指向の人たちが集まっていた事
5.カバー曲における高い自己消化(昇華)能力という才能があった。
6.マニアックさを持ちつつも大衆性を併せ持っていたこと。
7.ミックというボーカリストがいたこと。
8.何とも言えないグッドタイミングでバンドが存在し、自分達らしさを貫いたこと

1.ブラックミュージックへの傾倒から生まれたバンドであったこと。
これは冒頭にも少し書きましたが、この部分こそが全部を貫く骨子中の骨子になるかなと思います。
これを軸に、以下に、各論を書いていけば整理しやすいかなと思うので、その様に書いてみます。

黒人音楽を白人で取り入れた先駆者は個人で言えばエルヴィスになるかと思いますが、バンドだとストーンズなのかなと思います。

当時の雰囲気を更に具体的にいえば、ミックはチェスからレコードを輸入して買うくらいブルース好きでしたし、ブライアンはエルモア・ジェームスとかをコピーしてエルモ・ルイスと名乗っていたようですしね。キースはどっちかといえばチャック・ベリーの専門家この微妙な差異も、結果的にはよかったのかもしれませんね。当時はブライアンがリーダーでしたし、もし、ギターがブライアンだけだったとしたらストーンズはブルースバンドになっていたかもしれませんが、キースがいたことで、ロックンロールの要素が残った面はあったかもしれませんね。

チャーリーはご存じの通り、Jazz好きで、黒人音楽については、他のメンバーの好みに合わせて、色々聞いて、吸収していたようですしね。

ビルだけは、少し好みは違っていたようですが、彼には既にセミプロとしてのキャリアがあったし、50年代のロックンロールのベースに関してのセンスは抜群だと思いますし、何より、バンドの中でのベーシストとしてふるまえるだけの音楽的経験やセンスがあったようですしね。

で、こうした人たちが、同じ方向性を目指したのが良かったんでしょうね。
以下、上で箇条書きにした部分について、個別に書いてみます。

2.明確な意図を持ったツインギターバンドであったこと。
リーダーであったブライアンとキースのツインギターが生み出す躍動感もその後の方向性を決定づけていると思います。

これについてはデヴュー前に、二人で時間をかけてアンサンブルを構築していたということをインタヴューなどで何度も語ってますし、重要なところでしょうね。

この段階では、ブライアンがブルース要素が強く、キースはチャック・ベリーの専門家的な立ち位置で、ブルースと黒人ロックンロール(ボ・ディドリーからの影響も強い)が融合された面がある気がします。もちろん、そこにR&Bも加わってくるわけですが。

この写真は、ストーンズエキシビジョンで撮影したものですが、当時、ロンドンで彼らが共同生活していた部屋を再現したやつを撮影したものです。
これも同じく。おいてあるLPはマディーウォーターズのニューポートのライブのですね。
ここでブライアンとキースはひたすらツインギターのアンサンブルに磨きをかけていたようですね。

ストーンズのツインギターは、これまた他のバンドとは、少し意味が違っている面がいろいろあるので、これについては、また別途機会を作って書いてみたいですね。まぁ、いずれにせよ、ここもほかのバンドとはかなり違っていますね。

で、そのツインギターにチャーリーとビルのリズムの組み合わせ、そこにミックのボーカルが加わり、バンドとしての強烈な個性を生み出したことが、その後に繋がっている面はあると思うんですよね。

デビューの頃の話でいえば、イワン・スチュワートの存在も大きいと思います。彼はデヴュー時に正式メンバーからは外されてしまいましたが、実際のところ、メンバー的な意味合いが強いと思いますし、彼についても、また、どこかで書いてみたいですが、、、。

3.チャーリーの存在
そして、やはりチャーリーの存在はやはり大きいかなと。
特に、チャーリーとキースの組み合わせが大きかったんでしょうね。
この時点では、そこまで明確にはわかりませんが、この組み合わせの意味は後々大きな意味を持つようになってきますしね。
先に集まっていたミックやキースがチャーリーを強く誘ったという感じであったようですが、そこが大きな分かれ目だったのかなと思います。

言葉にすると「いわゆる変なリズム、違和感のあるリズム」と言えばよいんでしょうかね。ここがいわゆるキースの言う「ロックンロールのロールの部分」になっているというか。スウィング感の部分であったりとか、そういうことです。その「違和感」の部分は、チャーリーのリズム感という要素がすごく大きいと思います。そして、そのチャーリーの持つリズムの意味を、ミックやキースが音楽的に理解していた節があることが、ストーンズのその後の個性や立ち位置を決めたところはある気がしますね。

チャーリーのドラムセット。これもストーンズエキシビジョンの展示から。

これは前に、別の記事でもかきましたが、それをもう少し掘り下げるとチャックベリーやシカゴブルースにたどり着くんですよね。

というのも、チャックのチェス時代のバックバンドはウィリー・ディクソンとフレッド・ビロウというマディーバンドのリズムセクションが担当した曲が割とありますし、サイドギターがボ・ディドリーだったりとかのもあるので。要するにこれってシカゴ・ブルースのリズムセクションであり、黒人ロックンロールのリズムですから、そこからの影響が強いんですよね。

ただ、チャーリーは、真正面からあのようなリズムで叩いているわけではなく、自らのフィールドであったジャズの面から解釈して、直感的にフィットさせてたたいているという感じなんだと思います。

そういう意味では、本家のような意味での「黒人のリズム」ではないんですが、本家黒人音楽を参考にそれを深堀したサウンドが原点にあるということの意味がすごくあるというか。ブルースロックを参考にしたロックではなく、本家ブルースを参考にサウンドを積み上げたバンドであったことの意味が大きい気がします。

これは1の「ブラックミュージックへの傾倒から生まれたバンド」とのところとも直結している部分ですしね。

4.プレイヤー志向ではなく、アンサンブル指向の人たちが集まっていた事

これは、単に「黒人音楽から影響受けた」とか、ギター中心の「ブルースロック」のミュージシャンとは少し意味合いが違っているというか、その点にも特徴が表れていますね。

ストーンズの場合、明らかに「楽器指向ではなく、バンドアンサンブル指向」なわけですが、これがもう、このファーストの時点で明確で、ぶれずにここまで来たことがほんとにすごいなと思うんですよね。

ご存じの通り、このころのストーンズはオリジナル志向ではなく、あくまでカバーバンド的な立位置で、いわば学究的なバンドでもあったわけで、作曲よりも演奏に重点があったんでしょうが、それでも、プレイヤー志向ではなく、アンサンブル指向ではあったわけです。

それはその後もスタンスとして持ち続けることになるわけです。

5.カバー曲における高い自己消化(昇華)能力という才能があった。
この「カバーバンド指向」というところにおいて、当時の双璧とも言えるビートルズともコンセプトからして大きな差があったことがわかるとおもうんですよ。
ストーンズのカバーは、リズムアレンジが秀逸で、ミクスチャーする才能があったと思うんです。取り込んで自己消化する能力の部分では、ある意味非凡だったと思えます。

ビートルズのカバーは、そういう感じではありませんしね。
ただ、ビートルズはこの時点で、既に作曲の面でも非凡でしたし、個性の差ですし、これは優越の問題ではないと思いますが。
まぁ、そうはいっても、やはりビートルズは天才の集まったバンドということは、明確かと思います(笑)
ビートルズのメンバーは、ストーンズのメンバーより、少しキャリアも長く、年齢も上ですから、その辺りも影響しているのかもしれませんが、それを差し引いても、これは間違いないと思います。

ただ、それを横においたとしても、彼らのカバーは、それがカバーだけに、彼らの持つ強烈な個性が十二分に発揮されているところもあるように思いますし、このころのイギリスで、かつ彼らの年齢でこうした曲を選ぶところに、ストーンズたるゆえんがあるとも言えるというか。

ということで、「アレンジ能力の高さ」であったり、「他人の曲を自分たちのサウンドに昇華してしまう能力」もこのころから高いと思いますね。

要するに、彼らが愛するブラックミュージックをそのままコピーするのではなく、組み合わせの妙だったり、つぼを押さえた秀逸なアレンジが多いんですよね。そこに彼らの凄みがあるといえるのかもしれませんね。

これらについては原曲とその周辺の音楽を聞き比較するとよくわかるところですし、やはり才能が光る若手だったということかと思いますね。

それらの多くは、シンプル化であったり、「効果的なリズムアレンジ」のところにあるのかなと思いますね。ただ「極端に単純化されるところまでシンプルにしているわけではない」ところがミソかなと。

6.マニアックさを持ちつつも大衆性を併せ持っていたこと。
彼らのマニアックさは彼らの嗜好からくるもので、それは「結果的にであって、意図的ではなかった」事も影響している
と思うんですが、これも個性につながったというか、「ちゃんとコンセプトがあったことが、結果的に良い方向に働いた」のかなと。

これは、ファーストの時点でも、色濃くでていますよね。

本家の様に演奏することができなかったのもあると思いますけど、大衆性というか、ポップな部分を残しているのも大きいでしょうしね。

ここはメンバーの若さやパーソナリティーも大きかったのかなと。


7.ミックというボーカリストがいたこと。
これは当然すぎるので、スルーされがちかもしれませんが、やはり要因としては大きいかなと思います。

これは当時の映像を「見ればわかる」ところなので、少し違った角度で書いて、対比してみたいと思います。

この辺りは、デヴュー前に、彼らが関係していたアレクシス・コーナーやシリル・デイビスと言った先輩、大人たちの当時の音源と比較してみると、それはそれでよくわかるかもしれませんね。まぁ、彼らの音楽は、マニアックな感じなので、少し地味なので若者受けするような音楽ではなかったですしね(貶しているわけではありません)。彼らのブルースはJAZZの香りがするんですよね。ブルースのアグレッシブなところがおさえられた洗練された感じの演奏です。

その点、ストーンズのそれは、粗野でロック寄りで、若者にアピールするだけのスター性と大衆性があったというか。
そこはミックのフロントマンとしての存在感と、あのキャラが大きく作用していると思います。

せっかくなので、ブルース・インコーポレイテッドからI Got My Brand On You を貼っておきます。ちなみにこのアルバム、マディーのニューポートのライブからの選曲が多いアルバムですね。これは若い頃は割と聞きましたが、今回、久しぶりに聞きました、曲目を観てそれに気づきました。

※チャーリーはブルース・インコーポレイテッドで演奏しているところで、ストーンズに誘ったわけですから、このバンドの存在は大きいですよね。(このアルバムで演奏しているわけではありません念のため)

まぁ、ということで、こういう人たちが周りにいたことは、ストーンズの結成には大きく影響してますし、この辺りのデヴュー前の周辺も掘り下げると面白いんですが、長くなるので割愛します、比較して一言でいえば、ストーンズの音は、「若くてフレッシュで勢いがあって、やっぱ、スター性がある」というか。

アレクシス・コーナーの流れだけであったら、こんな流れはうまれていませんからね。それだけは間違いないでしょう。

8.何とも言えないグッドタイミングでバンドが存在し、自分達らしさを貫いたこと

最後にいえることは、ビートルズがいたことが大きいのかなと。
ビートルズの存在がなければ、さすがに、ここまで注目されたかは、なんともいえないところがありますからね。

ただ、そこでかれらがよかったのは、「自分達らしさを貫いたこと」「それを貫けるだけの諸要素を彼らが持っていたこと」なのかなと。

実際、当時のインタビューでも、彼らは、この部分を何度も強調してましたからね(たとえば、このインタビューの後半のミックの回答など)。
すみません。翻訳なしですけど貼っておきます。

ということで、「黒人音楽好きがあつまったバンドであった」こと、「ビートルズというライバルの存在」、「アンドリュー・ルーグ・オールダムの存在」もあって、「若者が主張することの特異性という時代性の影響」。
これらも大きな意味をもったんでしょうね。

そこに彼ら流の「自分達らしさの追求」が加わったのがファーストのなかにふんだんに詰め込まれているのが面白いなと。

ストーンズは、この後も、ずっと時代に適応はしてきましたが、決して、流行にこびてはいませんし。緩やか成長曲線を持ちつつ、熟成していくところも好きですね。ファーストを聞くと、それがよくわかるといつも思います。

まぁ、ファーストの総括としての私の感想はこんなところです。





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