チャーリーワッツというドラマー(追悼記事)
<チャーリーワッツ追悼>
今日、バンドのラインでショックな一報が。チャーリーが亡くった。最近何かの記事で、「ストーンズの今年USツアーはチャーリーは不参加」というの読み、心配はしていましたが、まさか亡くなるとは思っていませんでした。
個人的には、ほんとに大好きなドラマーでしたので、ショックすぎます。
今日は、過去に別のブログにアップしたことのある記事を少しだけ編集してノートに転載です。(去年8月2日にブログの記事でアップした内容です)。
ですから、以下、文は過去形では書かれていません。もともと長い記事だったので、少し長いです。
ひとつだけ冒頭で付け足すとしたら、私にとってストーンズは「バンド」なんですよね。だからチャーリーがいなくなるということは、、、。
<チャーリーワッツというドラマーの生き様>
ギタリストの私ですが、今日はチャーリーワッツのことを書いてみます。私の中で彼のドラムの本質を一言で語るとしたら「最高に踊らせてくれるドラマー」であるということです。
チャーリーを語るということは、反面ストーンズを語ることでもあるので、それも含めて書いてみたいと思います。
ところで、アンドリューの言葉に「ローリングストーンズとは生き様である」という有名な言葉がありますよね。
The Rolling Stones are more than just a group, ━they are a way of life.
うちには当時のUK盤の初版のレコードがありますが、たしかに、そこにもこう書いてあります。
結局、音楽が何かを表現するものだとしたら、チャーリーワッツって人は、ローリングストーンズというバンドの中で生き、自分を表現し続けてきた幸せな人だと思うんですよね。
それはキースもそうだったと思えるし。当然、ミックもそうだし。
私は、彼のビートやフィルが好きです。癖になるグルーブですしね。
もっさりしているかと思えば瞬発的には鋭いですし、ルーズさと強烈なビート感が同居しているというのか。
そして、これはストーンズ全体に言えることですが、「どこをきっても同じ」という金太郎あめ的な部分があるんですよね。ある種の中毒性というか。
でも、ストーンズの音楽性は、結構、多様なんですよね。ただ、それを束ねる「バンド」としての個性の強さが同居しているから「どこを切ってもストーンズの音」になっているというか。
<ローリングストーンズという「ダンスバンド」>
それと同時にもう一つ貫かれているのが、冒頭に書いたように「踊れるリズム」なんですよね。
これはストーンズってバンド自体の裏コンセプトでもありますしね。
結局ストーンズの本質の一つは「ダンスバンド」であると思うんですよね。
黒人音楽を愛し、多大な影響を受けてきたストーンズにとってはこれは自然なことですしね。
いうまでもなく、ブルースもR&Bもゴスペルも、ファンクもソウルもレゲエも全部貫いているのはダンスミュージックだと思うんですよね。黒人音楽って、愛も政治も社会的メッセージも大抵、「踊れる」ってことの上に語られる音楽だと思うんですよ。
その意味では、常に比較されてきたBeatlesとの本質的な差がここにありますよね。Beatlesの場合は、やはり優れた曲やメロディー、美しいハーモニーが軸ですが、ストーンズの場合は、リズムに軸がありますからね(もちろん特色の話であって、両バンドに両側面があるのは当然ですが)。
それも縦軸の正確な現代的なリズムではなく、リズムを流れというか、ブロックというか、そういう「ひと塊でのリズムのグルーブ」でとらえるようなリズム感なんですよね。
<チャーリーは下手なのか>
彼は下手だから嫌いという意見もたまに聞きます。一般論的な価値観や技術論で言えば「それはそういわれてもしたかがないかな」と思うところもあるんですけど、でも、私的には「ヘタウマ」ではあっても、下手ではないと思うんですよね。そもそも、このヘタウマは批難のための言葉かどうかも微妙だし(笑)。
下手だけど上手いってことですからね。
結局、音楽的表現からみたらうまいってことなんだと思います。
その価値観の軸を正確なリズムとか、多様なテクニックに置くと「下手」という声が出るのは理解できますし、あのリズムが苦手っていう人がいるのは当然かと思います。
確かに、その軸をボンゾやコージーパウエルなどに置くと、そりゃお世辞にもうまいとは言えないでしょうしね。
でも、ストーンズって「バンド」で考えたら、ドラマーはチャーリー、彼以外には考えられませんね。特にキースとの相性はもはや音楽史に残る歴史的快挙ともいえるかなと。ミックやキースが一生懸命くどいてバンドに誘ったのもわかる!。そして、それは重要なことだったんだと思います(チャーリーはもう別の分野で自分の仕事をもっていて、音楽は趣味のつもりだったようですしね)。
昨日、そういえばパープルのマシンヘッドを久々にレコードで聞いたんですが、イアン・ペイスはドラムは縦軸のブレがないんですよね。一言で言えば正確無比(笑)。特にあのシンバルワークにはいつもビビらされます(笑)。彼もジャズ愛好家のドラマーですし、同じようなドラマーから影響を受けたことがインタビューからもわかりますが、その受け方が違っていたんでしょうね。音楽ファンにとっては、こうした個性の違いを楽しむのはほんとに楽しいですよね。
<チャーリーの強みとうまさ>
で、話を戻すとでは何がチャーリーの強みであり、うまさなのか。それはやはり先に書いたような「音楽的にうまい」ということだと思います。
シンバルもスネアも跳ねているし、一種の浮遊感やドライブ感が同居しているというか、もはや、そのビートそのものが強みとしか言いようがありません。癖になるリズムです。
基本的なグルーブ感、ビート感に強烈な個性があるし、フィルなどはシンプルですが、抑揚があり、バンドをあおっているようなところもありますよね。あの辺りはジャズの影響がありますよね。
ブルースのコール&レスポンス的なスタイル、ジャズの他の演奏者に反応して自分の演奏を変化させる感覚。この辺りが私は大好きですね。この反応の部分は70年代の彼らのライブに特に顕著ですが。
その強い癖と個性がバンドと一体化したときに、強みになっているというか。
その意味ではストーンズというバンドに入ったこともチャーリーの強みのひとつに数えてよいのかなと。
後は、ロックへの偏見やこだわりがないのも強みなのかなと思うことがありますね。これは彼らの歴史的立ち位置の問題もあるとおもいますけど、彼ら以前にはロックンロールはあっても「ロック」はほぼなかったというのもあるかと。それに、彼の場合ジャズが好きだから、「ロックでは普通はこうたたく」という思い込みもないと思います。そのあたり柔軟なんですよね。曲の中でもパターンが変わったりとかしますしね。私はあの自由なアプローチが好きだし、聞きながら楽しんでいます。
60年代だって、初めのうちはブルースやロックンロールのリズムが主体ですが、途中からは、モータウンやスタックスを聴きこんで身につけたと思えるリズムがたくさんありますしね。バンドがスワンプロックやサザンロックに傾いたときは、それを取り入れますし、70年代後半からは、4つ打ちディスコ系まで取り入れてますよね。
黒人音楽への嗅覚や愛情が深いのがわかりますね。
この辺りはチャーリー個人だけではなく、バンドそのもの価値観とも関係していますし、彼の意見でそういうことを始めているわけではないんでしょうけど、色々聞いて研究してるのはわかりますよね。
この角度からみるとリズムに敏感だし吸収度が高いと思います。そして、それをバンドサウンドの中に取り入れる方法を心得ているというか、演奏家魂を見るわけです。決してテクニシャンではないでしょうが、音楽家としては優れているということなんだと思います。
これは蛇足ですが、ストーンズの一面にそういう研究熱心なところがあるところはもう少し見直されても良いのかなと。ただの不良ではない!これは長年かれらの音楽を聴き続けてきたファンならきっと同意してくださるところかと。彼らは音楽にはいたってまじめだと思いますね。でないとここまで続けられないでしょうし。
<チャーリーワッツの成長曲線とミュージシャン魂>
チャーリーワッツの成長曲線は確かに70年代初頭までかもしれませんが、今時点での新譜(アルバム)であり「ブルーアンドロンサム」でのチャーリーワッツのプレイは、確実に成長しているし、プレイの細かいところで今までとは違った演奏を付け加えていると思います。特にシンバルワークやフィルの部分部分の細かいところでそれを感じましたね。
そう考えると、成長曲線が緩やかなだけで、やはり常に成長を続けているドラマーだと思います。常にハードに練習して腕やテクニックを磨いているわけではないと思いますが、常に音楽を聴き、深く音楽を愛し、そこから聞こえてくるものを感じ取って表現していると思うんですよね。
実際、彼のリズムパターンは、多様ですし、演奏の中で変化をつけるのがうまいですしね。私的には、あのセンスはたまらないですね(笑)。
そしてチャーリーのあの紳士ぶりというか、芯のある価値観というか、イギリス人って感じなところもこだわりがあって好きですね。スーツがきまってますしね(笑)。昔の長髪のチャーリーを今見ると少し笑えますけど。
ミックを殴ったあの事件から見て取れる芯の強さ(殴ったことそのものではなく)や、結局、なんだかんだといって、ストーンズをやめずに演奏し続けている価値観、演奏者魂にはほれぼれしますね。
自分から行くタイプではないんでしょうけど、貫いてますよね、生き方を。
その点では冒頭のアンドリューのコメントの通り、ストーンズって生き様を貫いているというか。
その姿勢や音楽愛、演奏者魂、私はそこにチャーリーワッツの人間性を感じますし、それが音に出ているところも含めて、やっぱチャーリーワッツが好きですね。ということで、今日はチャーリーへの愛を語ってみました。
現在進行形のストーンズ。次作も楽しみですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うーん、ここまで記事を読み直して、、、
今日はストーンズは聞けない。代わりにFrom One Charlieを聞くことにします。
チャーリー、今までありがとう!そしてやすらかに
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?