FIRE(早期リタイア)はボケる?
少し前からFIRE(Financial Independence, Retire Early)という言葉が流行ってますが、Lancet委員会の認知症レポートで「早期リタイア」が認知症リスクを高めるという話があったので、それを今日は紹介します。
使わないと衰える?(Use it or lose it?)
ロンドン大学などの研究チームが3,433人の公務員について、退職前14年、退職後14年の認知機能の変化を調査しました。
言語記憶の低下は、加齢の影響を考慮しても、定年退職後は退職前に比べて38%も速いことが分かりました。
また、在職中は雇用等級が高いほど言語記憶の低下が低い(=保護効果がある)傾向がありますが、退職後はこの「保護効果」が失われ、言語記憶の低下スピードに関して退職前の雇用等級による差はなくなります。
退職年齢が若いほど認知症リスクは高くなる
フランスの3都市でのコーホート研究では、退職年齢が高いほど認知症リスクが低下する(=退職年齢が早いと認知力は相対的に高い)という結果が得られました。
逆に退職までの労働年数との相関はありませんでした。
定年退職年齢が若い国の方が高い国よりも、平均的な認知能力はより低下している
上の図は横軸が右に行くほど退職年齢が高い国、左に行くほど退職年齢が低い(=若くして退職する)国を表しています。縦軸は「60~64歳男性」と「50~54歳男性」との認知能力の差です。縦軸を下に行くほど差があることを表しています。
「フランス、オーストリア、ベルギー、オランダ」のような退職年齢の早い国の方が、「アメリカ、デンマーク、スウェーデン、スイス」のような退職年齢の遅い国に比べて、「60~64歳男性」と「50~54歳男性」の間での認知能力の差が大きく、その差は約2倍もあります。
【龍成メモ】
経済紙Financial Timesの2020年ベスト経済書にも選ばれた人口大逆転という本がありますが、この本の中でも超高齢化社会が引き起こす認知症人口の増大を、今後の社会の最大リスクとして挙げています。
ただし、以前にも紹介したパートタイムリタイアや、FIREした後も没頭できる何かがあれば、仕事を離れたからと言って必ずしも認知能力が急激に低下するわけではないと思います。
表紙はPixabayからの画像
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