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河合莞爾『豪球復活』(講談社)【読書メモ】

 ※ネタバレには気を付けますが、未読の方はご注意を。

 本作は、記憶喪失の元天才投手が復活を目指す物語に、過去に起こった事件、というミステリ要素を絡めた作品です。作者の河合莞爾は、約七年ほど前に、『救済のゲーム』なる結構な大作のゴルフミステリを書いていて、この作品にすごく良い印象を抱いていたので、発売を知ってから、楽しみにしていた作品でもありました。

『ドカベン』などを書かれた水島新司の作品に出てきても馴染みそうなキャラクター造形(伝わるだろうか……)が、好き嫌いの分かれそうな感じもしますが、文章や設定との絡み方も含めて、私には心地良かったです。明らかにモデルの分かる球団とか人物とかは、そこまで近く寄せなくても、と気になってはしまいましたが。

 動機の点や(ネタバレになるので言えない部分ですが)驚きの核になっている部分のひとつには乗れないものは感じたのですが、ミステリ要素が絡んで一筋縄でいかない展開が楽しい。再起を賭ける青年の挑戦、ということで、青春的な爽やかさが全体的にみなぎっていて、野球に限らず、スポーツものが好きな方には一読をお薦めしたい野球ミステリです。