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創作【短編】

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こちらのマガジンには4000字以上~18000字以内の短編小説を収録しています。
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固定された記事

彼らについて知っていること【リライト版「銃は震える」(約14500字)】

 それは僕たちの前から姿を消した時の兄の年齢に、僕が追いついた日だった。 「じいちゃんが…

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ゾンビになれない彼女と嘘つきな私【短編小説(約9700字)】

 死んだらゾンビになれるかな、  と、なんの脈絡もなく、囁くように届いた言葉は、私の耳に…

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めぐる、あなたの記憶の物語【短編小説(約8400字)】

「めぐる、あなたの記憶の物語」  ひとつの四季をへだてて、あなたはかつて住んでいたアパー…

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箱の中の恋人【短編小説(約5400字】

 僕には、恋人がいる。  だけど、人生で一度も会ったことがない。 「愛している」  と、き…

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恋文の物語【短編小説(約5400字)】

 好きです、  と書こうとした指は止まり、震えていた。手書きの言葉には魂が宿る、と教えて…

8

嘘を数える【短編小説(約6400字)】

 俺が嘘を数えはじめたのは、まだ小学生の時だった。  具体的に何年生だったか、記憶的には…

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私は物語の住人【短編小説(約5200字)】

「あっ、更新されてる。どうしよう……」  そう独り言を口にしてみたのは、萌した不安を抑えたかったからかもしれない。誰もいない部屋で、返事をしてくれる者はいない。当然だ。だけどいまの私はその、当然、という言葉を信じ切れなくなっている。  怖い……。  私にとって救いだったはずのものが、恐怖へと変わってしまったのは、いつだっただろう。もうすくなくとも三ヶ月は経っている。 『私のいない場所で』  と題された小説の、黒い言葉の羅列がパソコンの画面の先に並んでいる。  この小

街に雪が降る【短編小説(約7500字)】

 もう暖かいところにいるから、十二月に雪なんてほとんど見れないよ。  じゃあ、僕のいると…

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変貌する罪を沈めて【ホラー短編(約8500字)】

 鎖された世界で見つけた彼女の姿に、一瞬、僕は呼吸を止めた。 「はじめまして。あなたは、…

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VOICE 幻の歌姫【短編小説(約8000字)】

 私の世界には、はじめに歌があった。  最初にそのひとの歌声を聞いた時、私は放課後の教室…

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最後の言葉【短編小説(約6000字)】

 また、すこし雨が降ってきましたね。こういう時期の、こんな夜雨を小夜時雨と呼ぶ、って知っ…

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恋を、飲む【短編小説(5000字)】

 煎焙豆太郎(せんばい まめたろう)は意識を取り戻した時、自分がファミレスのテーブルの上…

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波打ち際の記憶【短編小説(約5000字)】

 水平線の先の何もないはずの世界から流れてきたのは、かつての記憶だった。  突然の大きな…

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夏夜の幻【短編小説(約5000字)】

 熱帯夜、と呼ぶほどではないけれど、ひとかけらの涼しさも感じ取れない夜風はどこまでも夏だった。雪国と呼ばれていても、年がら年中、涼しい、というわけではもちろんない。今年の夏は地元で過ごそうと思っている、と大学の友人に伝えると、涼しそうでいいなぁ、なんて僕の住む県の名を挙げながら羨ましがっていたが、もしこの場にいたとしたら、この暑さにどんな文句を付けるだろうか。雪国だろうが、暑いものは暑い。 『俺さ、実は結婚したんだ』  きっかけはそんな昔なじみからの電話だった。結婚した、