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一歩進んだ音楽理論 和声学編

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和声についてのあれこれをご紹介していきます。
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2023年7月の記事一覧

準副次調などの転調方法と補足 一歩進んだ和声学 Part 32

今回は準副次調や、副次同主長調への転調を行う際に押さえておきたいポイントを紹介します。副次調、すなわち近親調への転調は離脱和音、転入和音はある程度自由に選ぶことができましたが、それ以外では制約が一部存在するようです。では早速見ていきましょう。 1 準副次調への転調準副次調へ転調する場合、離脱和音がIの和音(第1転回形も含む)の場合は、転入和音は任意の固有和音を選択できます。また離脱和音がVの和音の時も、転入和音は任意の固有和音を選択できます。 2 同主調への転調同主調への

借用和音と所属転換 一歩進んだ和声学 Part 33

今までの登場した借用和音については、確定度の低い内部調の所属和音を、仮に主調の所属和音としてみなしていました。つまりvVの和音、準固有和音は以下のように書き換えることができます。 ある内属和音の所属を、内部調から主調へ仮に転換することを、所属変換といいます。今回はこの所属変換を詳しく見ていこうと思います。 1 所属変換所属変換は内部調(x)の所属和音(X)を主調の所属和音とみなすことです。 上記の例1の場合、内部調V調のIの和音と主調のVの和音は同一です。その場合は内属

所属転換はいつ使うのか? 一歩進んだ和声学 Part 34

今回は所属変換がどのような場合使用されるのかを見ていこうと思います。 1 固有所属調と借用所属調とある和音が 固有和音として所属する調をその和音の固有所属調 借用和音として所属する調をその和音の借用所属調 と言います。 以下の例を見てみましょう。 1小節目の2拍目の和音は借用和音であるので、借用所属調はハ長調であり、またこの和音が固有和音として所属する調、すなわち固有所属調はニ短調です。 5小節目の和音は借用和音であるので、借用所属調はト長調であり、固有所属調は同主短

借用和音を含むカデンツ 一歩進んだ和声学 Part 35

今回は借用和音が用いられた際に、その借用和音がT、S、Dのどの機能にあたいするのかを紹介していきたいと思います。 1 借用和音の役割とある内部調の固有和音が主調へと所属転換され借用和音となったとき、その借用和音は内部調における役割を失い、主調における役割へと変化します。例えば、所属していた内部調ではD和音だったものが、借用和音になるにあたり主調におけるT和音へと変化する、といった感じです。 上の例では借用和音となったiiVの和音はもともとII調(ニ短調)におけるD和音とし

借用和音の補足 一歩進んだ和声学 Part 36

今回も引き続き借用和音についてを紹介していきます。 1 (〇)-II調ある短調の‐IIをIとして持つ調を‐II調 ある長調の〇‐IIをIとして持つ調を〇‐II調 といいます。 例えばハ長調の場合、〇‐II調は変ニ長調となります。 この時生ずる借用和音(〇)‐iiVの和音はT和音としての機能を持ちます。 2 ivVの和音→(〇)IVの和音第2転回形の進行ivVの和音(7の和音、9の和音含む)は(〇)IVの和音第2転回形に進むことができます。 この際は(〇)IVの和音第2

内部変換 一歩進んだ和声学 Part 37

今回は内部変換を紹介していきます。内部変換は和音の音度は一定のまま、その和音の構成音が他の構成音に移ることをいいます。例えばVの和音からV7の和音第1転回形に移る、Iの和音からIの和音第1転回形に移る、というような感じです。では詳しく見ていこうと思います。 1 内部変換和音の音度が変わることを、和音交替といいます。 和音交替が起こる点を和音交替点、または交替点といいます。 先ほど述べた通り、和音の音度は一定のまま、その和音の構成音が他の構成音に移ることを内部変換といいます