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楽曲解説集

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クラシック音楽の作品を解説していきます。 主に曲構成、和声などを分析しています。
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#作品

ショパン ワルツ第7番嬰ハ短調 楽曲分析

今回はショパンのワルツ第7番Op64‐2の楽曲分析をしていこうと思います。有名な子犬のワルツと共に出版されたこの作品は、このワルツはそこまで技巧的でなく、またメロディの出来栄えもよいので彼の作曲したワルツの中では人気の高いものの一つです。ではどのような構成をしているのか、早速見ていきましょう。 1 概要作曲されたのは1846年~1847年にかけてとされており、ショパン晩年の作品です。第6番、第8番と共に一つにまとめられOp64として1847年に出版されました。この1847年

同じ旋律を840回⁉ サティ ヴェクサシオン

今回紹介する作品はエリック・サティ(1866~1925)のヴェクサシオン(Vexations)という作品です。ジムノペディ(Gymnopedie)やジュ・トゥ・ヴ(Je tu veux)など素晴らしい旋律を持った作品も遺したサティですが、彼の特徴として奇抜なタイトルや不思議な楽曲構成をもった作品も多いです。今回紹介するヴェクサシオンもかなり変わった作品ですが、とても興味深いので紹介していこうと思います。 1 概要と曲の中身この作品は明確な作曲年が特定されていませんが、189

戦火に散った友たちへ ラヴェル クープランの墓

今回はラヴェル(1875~1937)のピアノ組曲、『クープランの墓(Le tombeau de Couperin)』を紹介します。 1 概要この作品は1914年から1917年にかけて作曲されたピアノ独奏の6曲から成る組曲です。6曲に3年もかかっている理由として考えられるのは、この時は第1次世界大戦が開戦し、ラヴェルは祖国フランスに対して強い愛国心を持っていたようで、自ら志願して従軍しました。1917年に除隊されましたが、その期間にこの大戦により多くの友人を失いました。そんな

フーガト短調BWV578 楽曲分析

今回はJ・S・バッハ(1685~1750)のフーガト短調BWV578の楽曲分析を行います。フーガというのは対位法という作曲技法が使われている楽曲で、対位法というのは「複数の声部(パート)が調和を取りながら重ねていく」技法です。対位法ではどのパートがメロディでどのパートが伴奏というのがありません。全ての旋律がそれぞれ独自性を保ちながら曲が構成されていくのが対位法の大きい特徴です。はたしてその技法を使ったフーガというのはどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。

春の歌 楽曲分析

今回はメンデルスゾーン(1809~1847)の無言歌集より『春の歌』の楽曲分析を行います。メンデルスゾーンのピアノ曲の中ではとくに有名なものです。魅力的な旋律が有名ですが、いったいどのような構造をしているのかさっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造2/4拍子、調はイ長調 AーBーCーAーCの構造です。 大まかにすれば3部形式の楽曲です。 2 解説① A 0:00~ "Allegretto grazioso(アレグレット・グラツィオーソ。やや早く、優雅に)"との指示

ピアノソナタ第1番へ短調Op2-1 楽曲分析

今回はベートーヴェン(1770~1827)のピアノソナタ第1番へ短調Op2-1の楽曲分析を行います。ベートーヴェンのピアノソナタ全32曲は「ピアノの新約聖書」と呼ばれるほど、クラシック音楽では重要な作品群です。この第1番は第2番、第3番とともにOp2としてまとめられ、この作品群の中では唯一の短調作品です。記念すべき第1番となったこのピアノソナタはいったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造第1楽章 2/2拍子 ソナタ形式 へ短調 第2

ポロネーズ第1番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のポロネーズ第1番嬰ハ短調op26-1の楽曲分析を行います。ショパンのポロネーズで初めて出版されたものです。有名な第3番や第6番などに比べると個性は薄いですが、彼の祖国の音楽であるポロネーズを理解する上で重要なものとなります。どのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調は嬰ハ短調 AーA'ーBーAーCーDーCーAーBーAの複合三部形式です。 しかし、構成に関しては議論すべきことがあります(後述

奇想曲第24番イ短調 楽曲分析

今回はパガニーニ(1782~1840)の『奇想曲第24番イ短調』の楽曲分析を行います。パガニーニはイタリアのヴァイオリニスト、作曲家で超人的な技巧を持っていたヴァイオリンのヴィルトゥオーゾとして知られています。今回紹介する曲は後にリスト(1811~1886)、ブラームス(1833~1897)、ラフマニノフ(1873~1943)などがこの主題を用いたピアノ作品を書いています。またリストの『ラ・カンパネラ』の原曲を作った作曲家でもあります(ヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調第3楽章)

ノクターン第2番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第2番変ホ長調の楽曲分析を行います。ショパンはノクターンを約20曲遺しましたが、この第2番が彼のノクターンの中で特に有名なものとなり、ショパン全楽曲の中でも知名度が高いものとなりました。クラシックを知らない方でも聞いたことがある経験があると思います。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造12/8拍子、調は変ホ長調 AーA'ーBーA'ーBーA'ーCの構成です。 AとBを繰り返しながら

亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin) 楽曲分析

今回はドビュッシー(1862~1918)の代表作『亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin)』の楽曲分析を行います。ドビュッシーのピアノ曲の中でも『月の光(Clair de Lune)』や『2つのアラベスク(Deux Arabesques)』などと並び彼の代表作といえる作品です。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調は変ト長調 AーBーAの3部形式で構成されています。 元々は前奏曲

ジムノペディ 楽曲分析

今回はサティ(1866~1925)の『ジムノペディ』を楽曲分析してきます。サティは作品の奇抜なタイトルを付けることで有名な作曲家です。今回紹介する 『ジムノペディ』はサティの代表作の一つで、クラシック音楽のピアノ作品全体においても最高峰の作品であると位置付けてもよいのではないかと個人的に思っています。 いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調はニ長調 AーBーAーBの構成をしています。 『ジムノペディ』全3曲存在

英雄ポロネーズ 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)の代表作、『英雄ポロネーズ』を楽曲分析していきます。ショパンにとってポロネーズはマズルカと同様に祖国ポーランドの舞曲でありショパンの作品の分析をするうえで重要な作品群となっています。 通し番号付きで『ポロネーズ第6番』と呼ばれますが、未出版のポロネーズが何作品も存在しているので『英雄ポロネーズ』が6番目に作られたものということを表しているわけではありません。また『英雄』の名もショパン自身ではなく他人がつけたものです。 ポロネーズ全曲の中

ピアノソナタハ長調K545 楽曲分析

今回はモーツァルト(1756~1791)のピアノソナタハ長調K545の楽曲分析を行います。日本のソナチネアルバムにも収録され、ピアノに触れたことのある方もこの作品に挑んだ経験がある方もいらっしゃるかもしれません。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造 このピアノソナタは全3楽章構成です。 第1楽章 ソナタ形式 ハ長調 4/4拍子 第2楽章 AーA'ーBーA'ーCーDーAーA’ーコーダの複合三部形式 ト長調          

トロイメライ 楽曲分析

今回はシューマン(1810~1856)の『トロイメライ』の楽曲分析を行います。 シューマンはピアノ作品を数多く遺しましたが、その中でもこの曲は1、2を争うほど彼の作品では有名なものです。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造4/4拍子、調はヘ長調 AーBーAの3部形式で作られています。 元々この曲は『子供の情景』という全13曲からなるピアノ曲集の中の1曲です。シューマンもピアノを演奏する人だったので、作品によっては難易度が高