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楽曲解説集

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クラシック音楽の作品を解説していきます。 主に曲構成、和声などを分析しています。
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#ピアノ

スケルツォ第2番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のスケルツォ第2番Op31の解説をしていきます。 スケルツォは「おどけた」「冗談」という意味を持ち、ハイドン(1732~1809)が弦楽四重奏曲に取り入れたりしました。その後ベートーヴェン(1770~1827)によって交響曲のメヌエット楽章の代わりにスケルツォを導入し、以後の交響曲の基盤を形成しました。そんな中で、ショパンはこのスケルツォを独立した作品として4作品を作曲しました。スケルツォ第2番はショパンのスケルツォの中では一番演奏機会があ

ノクターン第1番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第1番を解説していきます。第2番、第3番と共に作品9として出版された初期のノクターンです。第1番はそれほど複雑な構成をとっておらず、演奏も比較的容易です。その中でもミクソリディア旋法を使用するなど、創意工夫がこなされています。では早速見ていきましょう。 1 概要ノクターン第3番は1831~1832年頃に作曲された作品です。1831年というと、ショパンが故郷ポーランドを発ち、フランス、パリに活動拠点を移した頃です。第2番、第3番

ノクターン第20番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第20番を紹介します。この曲はもともとノクターンという題名はついておらず、あくまで曲想がノクターン風であることからノクターン第20番と記されるようになりました。速度標語の❝Lento con gran espressione❞の名でも知られています。では、詳しく見ていきましょう。 1 概要作曲されたのは1830年とされており、この年はショパンが祖国ポーランドを離れウィーンに向かった年であり、その翌年には彼の死まで活動の拠点とな

ショパン ワルツ第7番嬰ハ短調 楽曲分析

今回はショパンのワルツ第7番Op64‐2の楽曲分析をしていこうと思います。有名な子犬のワルツと共に出版されたこの作品は、このワルツはそこまで技巧的でなく、またメロディの出来栄えもよいので彼の作曲したワルツの中では人気の高いものの一つです。ではどのような構成をしているのか、早速見ていきましょう。 1 概要作曲されたのは1846年~1847年にかけてとされており、ショパン晩年の作品です。第6番、第8番と共に一つにまとめられOp64として1847年に出版されました。この1847年

ノクターン第3番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第3番を解説していきます。ノクターン第3番は第1番、第2番と共に作品9として出版された初期の作品です。しかし、第1番と第2番とでは作曲技法の発展がみられます。では早速見ていきましょう。 1 概要ノクターン第3番は1831~1832年頃に作曲された作品です。1831年というと、ショパンが故郷ポーランドを発ち、フランス、パリに活動拠点を移した頃です。第1番、第2番と共に作品9としてまとめられ1832年に出版されました。ピアノメーカ

同じ旋律を840回⁉ サティ ヴェクサシオン

今回紹介する作品はエリック・サティ(1866~1925)のヴェクサシオン(Vexations)という作品です。ジムノペディ(Gymnopedie)やジュ・トゥ・ヴ(Je tu veux)など素晴らしい旋律を持った作品も遺したサティですが、彼の特徴として奇抜なタイトルや不思議な楽曲構成をもった作品も多いです。今回紹介するヴェクサシオンもかなり変わった作品ですが、とても興味深いので紹介していこうと思います。 1 概要と曲の中身この作品は明確な作曲年が特定されていませんが、189

戦火に散った友たちへ ラヴェル クープランの墓

今回はラヴェル(1875~1937)のピアノ組曲、『クープランの墓(Le tombeau de Couperin)』を紹介します。 1 概要この作品は1914年から1917年にかけて作曲されたピアノ独奏の6曲から成る組曲です。6曲に3年もかかっている理由として考えられるのは、この時は第1次世界大戦が開戦し、ラヴェルは祖国フランスに対して強い愛国心を持っていたようで、自ら志願して従軍しました。1917年に除隊されましたが、その期間にこの大戦により多くの友人を失いました。そんな

さよならを告げるワルツ ショパン ワルツ第9番

今回はショパンのワルツ第9番の楽曲分析をしたいと思います。この曲は『別れのワルツ』の通称を持ちますが、どのような経緯でこの名がついたのでしょうか。また音楽的にはどのような構成をしているのか、早速見ていきましょう。 1 曲が出来上がるまでこの曲は失われた自筆譜では1835年の9月、ドレスデンと書かれています。 これはヴィンツェンティ・ヴォジンスキ(Wincenty Wodziński)伯爵とテレサ・ヴォジンスカ(Teresa Wodzińska)伯爵夫人との娘である、マリア・

春の歌 楽曲分析

今回はメンデルスゾーン(1809~1847)の無言歌集より『春の歌』の楽曲分析を行います。メンデルスゾーンのピアノ曲の中ではとくに有名なものです。魅力的な旋律が有名ですが、いったいどのような構造をしているのかさっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造2/4拍子、調はイ長調 AーBーCーAーCの構造です。 大まかにすれば3部形式の楽曲です。 2 解説① A 0:00~ "Allegretto grazioso(アレグレット・グラツィオーソ。やや早く、優雅に)"との指示

ピアノソナタ第1番へ短調Op2-1 楽曲分析

今回はベートーヴェン(1770~1827)のピアノソナタ第1番へ短調Op2-1の楽曲分析を行います。ベートーヴェンのピアノソナタ全32曲は「ピアノの新約聖書」と呼ばれるほど、クラシック音楽では重要な作品群です。この第1番は第2番、第3番とともにOp2としてまとめられ、この作品群の中では唯一の短調作品です。記念すべき第1番となったこのピアノソナタはいったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造第1楽章 2/2拍子 ソナタ形式 へ短調 第2

ポロネーズ第1番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のポロネーズ第1番嬰ハ短調op26-1の楽曲分析を行います。ショパンのポロネーズで初めて出版されたものです。有名な第3番や第6番などに比べると個性は薄いですが、彼の祖国の音楽であるポロネーズを理解する上で重要なものとなります。どのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調は嬰ハ短調 AーA'ーBーAーCーDーCーAーBーAの複合三部形式です。 しかし、構成に関しては議論すべきことがあります(後述

ノクターン第2番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第2番変ホ長調の楽曲分析を行います。ショパンはノクターンを約20曲遺しましたが、この第2番が彼のノクターンの中で特に有名なものとなり、ショパン全楽曲の中でも知名度が高いものとなりました。クラシックを知らない方でも聞いたことがある経験があると思います。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造12/8拍子、調は変ホ長調 AーA'ーBーA'ーBーA'ーCの構成です。 AとBを繰り返しながら

亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin) 楽曲分析

今回はドビュッシー(1862~1918)の代表作『亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin)』の楽曲分析を行います。ドビュッシーのピアノ曲の中でも『月の光(Clair de Lune)』や『2つのアラベスク(Deux Arabesques)』などと並び彼の代表作といえる作品です。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調は変ト長調 AーBーAの3部形式で構成されています。 元々は前奏曲

ジムノペディ 楽曲分析

今回はサティ(1866~1925)の『ジムノペディ』を楽曲分析してきます。サティは作品の奇抜なタイトルを付けることで有名な作曲家です。今回紹介する 『ジムノペディ』はサティの代表作の一つで、クラシック音楽のピアノ作品全体においても最高峰の作品であると位置付けてもよいのではないかと個人的に思っています。 いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調はニ長調 AーBーAーBの構成をしています。 『ジムノペディ』全3曲存在