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楽曲解説集

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クラシック音楽の作品を解説していきます。 主に曲構成、和声などを分析しています。
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#作曲家

ノクターン第20番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第20番を紹介します。この曲はもともとノクターンという題名はついておらず、あくまで曲想がノクターン風であることからノクターン第20番と記されるようになりました。速度標語の❝Lento con gran espressione❞の名でも知られています。では、詳しく見ていきましょう。 1 概要作曲されたのは1830年とされており、この年はショパンが祖国ポーランドを離れウィーンに向かった年であり、その翌年には彼の死まで活動の拠点とな

同じ旋律を840回⁉ サティ ヴェクサシオン

今回紹介する作品はエリック・サティ(1866~1925)のヴェクサシオン(Vexations)という作品です。ジムノペディ(Gymnopedie)やジュ・トゥ・ヴ(Je tu veux)など素晴らしい旋律を持った作品も遺したサティですが、彼の特徴として奇抜なタイトルや不思議な楽曲構成をもった作品も多いです。今回紹介するヴェクサシオンもかなり変わった作品ですが、とても興味深いので紹介していこうと思います。 1 概要と曲の中身この作品は明確な作曲年が特定されていませんが、189

実は1人4役⁉ シューベルト 魔王

今回はシューベルト(1797~1828)の歌曲、『魔王』を紹介します。シューベルトの歌曲の中でも特に有名なもののひとつで、日本においては音楽の授業で鑑賞した方も多いと思います。ここではこの曲の音楽的要素を中心に紹介していこうと思います。 1 概要この曲は1815年に作曲されました。詩はあの文豪ゲーテ(1749~1832)が書いたものです。1821年に出版されるまで3度の改訂が施されたと伝えらえており、シューベルトの記念すべき作品1として出版されました。作品1とはなっています

戦火に散った友たちへ ラヴェル クープランの墓

今回はラヴェル(1875~1937)のピアノ組曲、『クープランの墓(Le tombeau de Couperin)』を紹介します。 1 概要この作品は1914年から1917年にかけて作曲されたピアノ独奏の6曲から成る組曲です。6曲に3年もかかっている理由として考えられるのは、この時は第1次世界大戦が開戦し、ラヴェルは祖国フランスに対して強い愛国心を持っていたようで、自ら志願して従軍しました。1917年に除隊されましたが、その期間にこの大戦により多くの友人を失いました。そんな

悲しみのモーツァルト。ヴァイオリン・ソナタ ホ短調K304

W・A・モーツァルト(1756~1791)の作品というのは、個人的見解だがモーツァルト自身の感情を音楽には入り込めていないと最近思う。それはシューベルト(1797~1828)の作品を聞いてみればなんとなく感じる。 特に短調の作品は自身の感情を反映しやすい。人間はポジティヴな感情よりかはネガティヴな感情に入り込みやすい。例えば「死」や「別れ」というのは物語によっては人の涙を誘う。そういった「負」の感情に感化されやすい。「悲しみ」は人の心を動かす強く動かす要素なのだ。何故かはわ