マガジンのカバー画像

楽曲解説集

28
クラシック音楽の作品を解説していきます。 主に曲構成、和声などを分析しています。
運営しているクリエイター

#楽曲紹介

パヴァーヌ 嬰ヘ短調 楽曲分析

今回はガブリエル・フォーレ(1845~1924)のパヴァーヌ嬰ヘ短調の楽曲分析をしていこうと思います。フォーレの作品の中ではよく演奏されるもののひとつで、創作活動中期における代表作です。ノスタルジックな旋律と印象的な和声、そしてわかりやすい楽曲構成が特徴です。では詳しく見ていきましょう。 1 概要作曲されたのは1887年で、この年にはレクイエムOp48(三大レクイエムのひとつ)も作曲されており、フォーレの創作活動中期における代表作の一つとなっています。元々はピアノ作品として

エルガー 愛の挨拶 楽曲分析

今回はエドワード・エルガー(1857~1934)の『愛の挨拶』を紹介します。エルガーの作品の中でも威風堂々第1番と並ぶ知名度を誇っており、また演奏時間も3~4分程度の短い作品であり、親しみやすさも持っています。どのような作品なのか、早速見ていきましょう。 1 概要1888年に作曲されたこの作品は、当時キャロライン・アリス(1848~1920)との交際中に書かれたもので、彼女と正式に婚約した際にこの作品を彼女に献呈しました。題名は当初はドイツ語で❝Liebesgruss❞と名

戦火に散った友たちへ ラヴェル クープランの墓

今回はラヴェル(1875~1937)のピアノ組曲、『クープランの墓(Le tombeau de Couperin)』を紹介します。 1 概要この作品は1914年から1917年にかけて作曲されたピアノ独奏の6曲から成る組曲です。6曲に3年もかかっている理由として考えられるのは、この時は第1次世界大戦が開戦し、ラヴェルは祖国フランスに対して強い愛国心を持っていたようで、自ら志願して従軍しました。1917年に除隊されましたが、その期間にこの大戦により多くの友人を失いました。そんな

さよならを告げるワルツ ショパン ワルツ第9番

今回はショパンのワルツ第9番の楽曲分析をしたいと思います。この曲は『別れのワルツ』の通称を持ちますが、どのような経緯でこの名がついたのでしょうか。また音楽的にはどのような構成をしているのか、早速見ていきましょう。 1 曲が出来上がるまでこの曲は失われた自筆譜では1835年の9月、ドレスデンと書かれています。 これはヴィンツェンティ・ヴォジンスキ(Wincenty Wodziński)伯爵とテレサ・ヴォジンスカ(Teresa Wodzińska)伯爵夫人との娘である、マリア・

ノクターン第2番 楽曲分析

今回はショパン(1810~1849)のノクターン第2番変ホ長調の楽曲分析を行います。ショパンはノクターンを約20曲遺しましたが、この第2番が彼のノクターンの中で特に有名なものとなり、ショパン全楽曲の中でも知名度が高いものとなりました。クラシックを知らない方でも聞いたことがある経験があると思います。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造12/8拍子、調は変ホ長調 AーA'ーBーA'ーBーA'ーCの構成です。 AとBを繰り返しながら

亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin) 楽曲分析

今回はドビュッシー(1862~1918)の代表作『亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin)』の楽曲分析を行います。ドビュッシーのピアノ曲の中でも『月の光(Clair de Lune)』や『2つのアラベスク(Deux Arabesques)』などと並び彼の代表作といえる作品です。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。 1 拍子、調、構造3/4拍子、調は変ト長調 AーBーAの3部形式で構成されています。 元々は前奏曲