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エクリュは彼方に連れてゆく、僕を

愛する人の手触りは

おれを極北へつれてゆく 遠くへ

名もなき極北へそれは つれてゆく

雨音の千分の一 雪が雪に沈む音すら

はっきりと聞こえるような集中をくれる

吐息が聞こえる中で

外部の気配すら微塵ももらさず伝えてくれる

自分がまるごと世界みたいな

気恥ずかしくなるあの感触をくれる

照れるな

愛する酒の手触りも

おれを極北へつれてゆく 遥か彼方へ

姿を見たことのない

文字だけの寺山のおじさんは

「遠くへ行きたい 遠くへ行けるのは 天才だけだ」

というが

思い切って嘘だと言おう

半分だけ

おれには 羽はない

そうだ それが平凡ということだ

平凡をすりつぶして

才の油が滴るところに今日もいるぞ

だが

羽はなくても口はある

雨音の千分の一 雪が雪に沈む音すら

感じられる気がする

ひなびた田園に数多いる

雨蛙一匹ずつの鳴き声すら

聞き分けられるような

素敵な勘違いをしようじゃないか

雨に打たれ笑う男のように

(ジーン・ケリーに思いを馳せて)

ハットを脱いで満面の笑みで聞こえた雨粒を直に受けるような高揚を

感じながら生きようじゃないか

エクリュは彼方に連れてゆく、僕を

エクリュは彼方に連れてゆく、僕を

その身は感性を焼き尽くす業火

見初めたものを離さぬ桜花

のごとき

瞬間の美を伝えてくれる

酒さ

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。