NEW GUNてどんな感じ?〜vol.11〜
とりあえず傷口が熱を持っていて辛い。脇の下は違和感でいっぱい。肘から下は自由に動くが脇が開かない。
冷凍庫のありったけの保冷剤を傷口に直接当てて冷やす。それが大丈夫な位熱を持っていて、小さな保冷剤はあっという間に溶け、温かくなってしまう。ある程度冷やすと体調が良くなり少し活動出来る感じ。
退院翌日、食料の調達のため近所まで外出。
ものすごくゆっくりしか歩けない。人とすれ違うのが大変で、ぶつかられるとものすごく痛いので緊張する。外から見て、私の左側に何か問題があるようには見えないので、気を使ってもらうのは難しいのだ。
ご老人がすごく歩幅狭く止まれない感じで歩いている感覚を身体で知る。身体が利かないってなんて不自由なんだ。妊婦さんの『お腹に赤ちゃんがいます』というマークのようなものがあるらしいが、認知度が低いものをつけても意味がないだろう。
とりあえずひとりで退院祝い。入院中ずっと食べたかった蕎麦を食べに店に入った。ずずずずずっ、とやりたかったのだけれど、手打ち蕎麦であることを加味しても人生で食べた蕎麦の中で一番短い蕎麦だった…。まあ、しかたない。
食後はその先の八百屋に行って、初めて配達を頼んでみた。他に少し買い物をして帰ろうとすると既にヘトヘト。商店街が駅(我が家と逆方向)に向かって一方通行でなかったらタクシーに乗りたいところだったが、歩いて帰るしかないので、ゆっくりゆっくり歩いて帰る。
夜、久しぶりに台所に立つと、左手が不自由なのでバランスがとれないのと、ちゃんと押さえられないのとで包丁がすごく下手になっていた。
左の乳房が無くなったことにはあまりショックを受けていなかった。なんか性別が曖昧な感じでそれはそれでいいんではないかと普通に受け入れていた。
でも、15年もがんばって来たことが出来なくなることは恐ろしかった。
私は何か才能がある訳ではなく、男社会である飲食の世界でものすごく怒られたり、バカにされたりしながら、自分の世界を創って来たのだ。それを全部失うかも知れないのが恐ろしかった。今更なんか違う仕事なんて出来るの?
でも、単純に作れる喜びも感じた。
うん、焦らずいこう。…それが一番難しいのだけれど。
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