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読書感想文的な36 『自転しながら公転する』山本 文緒

本の感想を書くの、半年ぶりだった。
読んでないわけじゃないけど、思ったことをつらつらと書くという行為をしてなかった。
振り返ったら約50冊をさらっと読み流している。
全然問題ないんだけど、さっぱり思い出せない本が多いから、やっぱり何かしら書いておくべきかなぁ。

久しぶりに書いておこうと思った本はこれ。

母の看病のため実家に戻ってきた32歳の都(みやこ)。アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の貫一と付き合いはじめるが、彼との結婚は見えない。職場は頼りない店長、上司のセクハラと問題だらけ。母の具合は一進一退。正社員になるべき? 運命の人は他にいる? ぐるぐると思い悩む都がたどりついた答えは――。揺れる心を優しく包み、あたたかな共感で満たす傑作長編。

「結婚、仕事、親の介護、全部やらなきゃダメですか」
本屋さんでこのコピーを目にした人は多いんじゃないかと思う。

本屋大賞のノミネート作品が発表されたら10冊まとめてさくっと読むことを、ここ数年の楽しみにしてる。
でもこのコピーを見たときに、あぁこれはちょっと待ってから読もうと思った。
のしかかりすぎる、現実が。
両親こそ健康で過ごしてくれているけど、この当時決まったばかりだった結婚が上手くいくのか、仕事については全然頑張ってない自覚があったし、これから先頑張る予定もなかった。(いや頑張れよとは思っている)
だから、のしかかりすぎる、現実が。(2回目)


結婚も仕事も介護も、その中の何かを選んで、選ばなかったものから逃げた言い訳にできる。
仕事が忙しくて結婚できないとか、介護に追われて仕事ができないとか、結婚したから仕事から逃げられるとか。
どれとどれを組み合わせても、どれからも逃げられる理由になる。
その中からどれか1つを選ぶことも、2つ選ぶことも、3つ選ぶことも、本当は全部自由なはずなのに、あたりまえに3つ選ぶことが当然になってない?
え、しんど~。

バリバリ働いて、結婚して、子供も育てて、親のことも気にしてっていうのを当然のようにこなしてる人がいる現実も理解してる。
でも、都みたいに、わたしみたいに、仕事はほどほどの責任と役割で、結婚なんてどうなるかわからず、介護はよくわからんけどたぶんやるしかないんだろうなぁみたいな状況でぼんやりしてる人間もいる。いるはず。え、いるよね?

読んだらわかる。
都は甘ったれてるなぁと思う。
でもそれ自分と同じなんだけど、じゃあどうやって頑張ったらいいのかって、自分のこととなると皆目見当もつきません! みたいな状態になる。
わたし甘えてるよな、とは思いつつも、結婚は相手がいなきゃできないし、介護は家族に元気になってもらうか、お金かほかの誰かの力を借りなきゃ解消できない。
唯一自分だけでどうにかなりそうなことは仕事だけど、それだって正社員になるのは簡単なことじゃない。環境を変えるって勇気がいる。
わかってる、環境を変えたくないと思う、これこそが甘えってことも。
甘えついでに言わせてもらうなら、仕事を頑張るためにはやっぱり恋愛や介護を(ほんの少しは)置き去りにする覚悟が必要だと思うし、それってやっぱり何かを選ばない、つまり諦めるという選択をするわけで、それなら多少頑張ってない気がしても、今みたいに全部をちょっとずつやるほうがマシでは? と思ったり。
いやでも今みたいに全部ちょっとずつやってると、結局わたしが手に入れられるものなんて何ひとつないのでは? と思ったり。
(ここまで早口)

アラサーの心は複雑なのだ。
いや、うそ。
意志薄弱な人間の心がブレてるだけのこと。
ということで、心をとんでもなくえぐられましたわという感想。
でもね、読んでよかったなぁと思うんだよね。不思議。

都はわたしだったし、貫一は数年前に付き合ったマジクソハイパーウルトラくそ男を思い出した。(貫一のほうが数倍はいい男です)

すべてを頑張らなくてもいいけど、本当に心から欲しいものを手に入れるためには、ちゃんと覚悟を決めて頑張ろうな!!!!

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