見出し画像

今「タイバニ」を観るには絶好のタイミング! "職業としてのヒーロー"を掘り下げた傑作アニメ

アニメ『TIGER&BUNNY』(以下「タイバニ」)が放送開始10周年を迎えた。4/10(土)より毎週1話ずつTVシリーズの期間限定配信が始まっており、「タイバニ」を始めるには今が正に絶好のタイミングだ。

ジャンルとしては「ヒーローもの」。現在は『アベンジャーズ』などで知られる「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」をはじめとして、映画・ドラマでも人気の高いジャンルだが、「タイバニ」は今も根強い人気を誇っている。

その独自性から、今改めて注目の集まる「タイバニ」について掘り下げていく。



次第に市民権を得ていった「ヒーローの物語」

まずは「タイバニ」のTVシリーズが放送開始以降の、「ヒーローもの」を取り巻く環境の変化について簡単に整理する。

「タイバニ」1期の放送開始は2011年。映画で言えば、先述のMCUの『アベンジャーズ』が公開となる前年で、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』が公開。ルッソ兄弟の参加した2作目以降からは評価や注目度も一気に上がる「キャプテン・アメリカ」シリーズだが、当時はあまり振るわず、国内では3.1億円の興行成績に留まっている。

MCUではなくDCコミックス原案で言えば、クリストファー・ノーランによる「ダークナイト」三部作も、世界的に非常に評価の高い作品。しかし、海外で特大ヒットした一方で、国内では2012年公開の完結作『ダークナイト ライジング』ですら累計興行収入20億円に届かず予想を下回ったのは、日本の映画ファンもよく知るところだ。「アメコミヒーローは日本では人気が出ない」とも言われていた。

しかし、そういった時期からの10年ほどで、状況は次第に変わっていった。「MCU」作品も人気を獲得していき、海外ほどの社会現象クラスのヒットというほどではないものの、2019年公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』は国内での興行収入が61.2億円を記録。新たなヒーローが単独主人公の作品ながら、『キャプテン・マーベル』は20.4億円、更に同年の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』も30億円を突破している。

DCコミックス原案では、ヒーローではなくヴィラン(悪役)の物語ではあるが、『ジョーカー』が普段洋画をあまり観ない若年層などへも予想を大きく超える広がりを見せ、興収50億円を超えた。

昨年はコロナ禍の影響もあり、新作の『ブラック・ウィドウ』なども延期を余儀なくされたが、今年はディズニーが力を入れている配信サービスDisney+で『ワンダビジョン』や『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』といった作品も、最新話配信の度にTwitterでトレンド入りするなど、配信ドラマならではの盛り上がりを見せている

また、映画・ドラマではなく、漫画・アニメの分野で言えば、「ヒーローもの」でここ10年の間に大きな注目を集めたのは、やはり2014年に週刊少年ジャンプで連載が開始された『僕のヒーローアカデミア』(以下「ヒロアカ」)だ。原作漫画は累計発行部数5,000万部を突破し、TVアニメも現在第5期が放送中。

また、劇場版は2018年の第1作目『僕のヒーローアカデミア 2人の英雄』が興収17.2億円、2019年の第2作目『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』では17.9億円と、TVアニメの劇場版としていずれも大ヒットを記録(今回は国内について書いているため余談ではあるが、「ヒーローもの」の本場とも言えるアメリカでは、ある種逆輸入的にヒット。「ヒーローズ:ライジング」は『千と千尋の神隠し』を超え、北米で公開された日本のアニメ映画で歴代8位の興行成績を記録したことも話題となった)。

そんな、まさに「ヒーローが求められている」現在、上記のような作品のファンにぜひ観て欲しいのが「タイバニ」だ。


"職業としてのヒーロー"への独自のアプローチ

「タイバニ」の「ヒーローもの」のとしての独自性は、"特殊能力者のいる社会"と"ヒーローの描き方"の2つのポイントから成る、【職業としてのヒーロー"へのアプローチ】にある。

まず、舞台となる社会は、特殊能力者である「NEXT」が登場して45年が経ち、他の「ヒーローもの」とは異なる発展の仕方をしている。

「MCU」では、ヒーローに救われた命の一方で、街の破壊や、ヴィランとの戦いの犠牲になってしまう人々も出てしまっており、社会の中でのヒーローのあり方が改めて問われる状況。ヒーローたちがみな特殊能力者というわけではないが、彼らの活動を制限する"ソコヴィア協定"が結ばれ、「エンドゲーム」まで続く内戦を生む状況にも発展していった。

現在はその後の世界が描かれているものの、ヒーロー活動としてはもちろん、特殊能力者もまだまだ異質の存在という面が強く、「特殊能力者のいる社会」としては黎明期の段階と言える。「タイバニ」の世界では、その段階がしばらく前に過ぎ、法整備などが進んだ社会が舞台となる。

一方、世界人口の約8割が個性(=特殊能力)を持ち、「"個性"の複雑化が終焉をもたらすのかー?」という警鐘も描かれる「ヒロアカ」ほど、特殊能力者が一般化し、ヒーローを目指す子供たちも多い社会というわけでもない(ヒーローの卵たち視点から描く「ヒロアカ」と、働くヒーローたち視点から描く「タイバニ」との視点の違いも、両作のファンには見所となる)。

また、映画「X-MEN」シリーズのように、特殊能力者とそうでない者たちの溝が顕在化している状態とも異なる。

つまり、「タイバニ」の舞台はこれらの中間ほど。特殊能力者はまだまだ珍しい存在ではあるものの、表立った迫害やがんじがらめの状態ではなく、「特殊能力者のいる社会」として、ヒーロー活動を含め、法やシステムの整備が進んでいる状態と言える。

また、「タイバニ」は"ヒーローの描き方"にも独自のアプローチがある。ヒーローたちは「HERO TV」という日本の「密着警察24時」のような犯罪現場を押さえる番組で、犯罪者の確保や被害者の救出などでポイントを稼ぎ、毎シーズンランキング1位を目指す。

一方で、起こる事件は「HERO TV」で映像に押さえているというだけで、紛れもなくリアル。不器用ながらも理想を目指す、昔気質な"おじさん”ヒーローの虎徹と、ルックスも知性も兼ね備えているものの、ヒーローをあくまで仕事としてドライに捉えているバーナビーとの、一見正反対な二人の「バディもの」を起点として物語が展開される。

ヒーローが認可性でランキングを取り入れている点でいえば、『ワンパンマン』に少し近いと言えるが、「タイバニ」のヒーローにはそれぞれスポンサー企業がついており、ヒーローコスチュームに「PEPSI」や「牛角」、「Softbank」といった企業ロゴが踊る。これは他の「ヒーローもの」にはない要素で、ユニフォームにロゴの入るスポーツ選手にも近い。

つまり、「タイバニ」の世界では、ヒーローはスポンサー企業の広告塔の役割も担っており、アイドル性やカリスマ性も重要になる。番組全体としては劇的な登場や救出劇をいかに現実の犯罪な起こる中で演出するのかというエンタメ性、そして更に各ヒーローはそれを盛り上げる貢献が出来るのかという対応力も、成績アップに必要になってくる。

ヒーローとしての人助け以外にも気にしなければならないことが様々あり、成績不振や、自分の「華」に悩んだりといった点から、より日々生活するための"職業としてのヒーロー"の面が強く描かれる

更に、そこからヒーローたちが自らの"オリジン"に立ち返ることで、"自分の目指すヒーローとは何か"という数々の「ヒーローもの」で描かれてきたテーマに、他とは異なるアプローチが成されている。これは、まだ特殊能力者がまだまだ珍しい社会で、職業ヒーローの視点から描く本作ならではのアプローチの仕方だ。

また、多くの利権や金が絡むため、"エンタメコンテンツとしてのヒーロー"になってしまうという側面もあり、それに端を端を発する事件も明るみになっていく。サスペンス要素も見逃せないポイントだ。

「タイバニ」は、今「MCU」や「ヒロアカ」といった作品のファンも楽しめる、10周年経っても色褪せない鮮烈な切り口の「ヒーローもの」と言える。

アニメ「タイバニ」はTVシリーズが全25話、劇場版が2本制作されており、来年にはTVシリーズ第2期が放送予定。現在、10周年企画として、舞台となる街に実際に住んでいるかのような体験の出来るコンテンツなど様々な施策が実施されており、YouTubeではTVシリーズ第1期が毎週1話ずつ1週間限定で配信開始。正にシリーズにこれまで触れてこなかった人にも、絶好の視聴開始タイミングになっている。

また、YouTubeでの1話ずつの配信にもラストにキャストからの一言コメントがついており、当時リアルタイムで1期を観ていたファンも、改めて2期に備えた復習としても楽しむことが出来る。

10周年で更なる盛り上がりをみせる「タイバニ」をぜひ!

最後まで読んでくれた方、ありがとう!そしてありがとう!




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?