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「献体」
こんな夢を見た。
思春期特有の絶望感に苛まれた青年が、体の全器官を提供し献体死することを希望している。
これは自殺ではないとどこかの大学教授がコメントしている。
アナウンサーが人形のように押し黙っている。
青年は東西南北各国を巡り許可の下りる国を探した。
どこか南のほうで要望が満たされる国が見つかったという。
だが移植用の臓器はどうやって運ぶのかということについて異論がさしはさまれる。
南国は腐り易いのである。
とくに自殺者の臓器はすぐに腐るのだという。
青年は自殺ではなく生きたままの献体だと主張している。
アナウンサーは押し黙ったままだ。
大学教授が言う。
こんな浅慮しかない輩が「生き献体」を望むことなど分不相応だと。
その矛盾したふうな発言に聞き覚えがある。
この男は一度も経験がない。
そこで目が覚めた。
了
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