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登壇未経験者がQAシンポジウムに登壇するまでの話

はじめに

こんにちは。株式会社 Mobility Technologies プロダクトマネジメント本部 クオリティマネジメント部の二河です。

人前で話すことすら苦手な人間が、何の因果かJaSST’22 Tohokuに登壇することになってしまった…
これは、そんな何から何まで未経験の人間が、登壇応募から資料作成、そして実際に登壇するところまでを如何に乗り切ったかという話です。
今後シンポジウム等に登壇してみたいけど、どうしたらよいか分からないという方のお役に立てれば幸いです。

ちなみにJaSSTとは、ソフトウェア業界全体のテスト技術力の向上と普及を目指して全国各地で開催されるソフトウェアテストシンポジウム(JaSST : Japan Symposium on Software Testing)のことです。

詳細はこちらのURLからどうぞ

登壇するきっかけ

繰り返しになりますが、元々自分は人前で話すことが苦手な人間であるため、自ら登壇するという発想は皆無でした。
そんな自分がなぜ登壇することになったのか…
それは先輩からの今度東北で開催されるJaSSTの事例紹介に応募してみたらどうかと提案していただいたのがきっかけとなります。
ちょうどその頃はテスト自動化に取り組んでたのですが、JaSST’22 Tohokuのテーマが「テスト自動化その前に ~テスト自動化アンチパターン~」ということもあり、何かよい事例を発表できるのではないかと。
声をかけていただいた感じですね。

なるほど

自分が取り組んでいたテスト自動化がちょうど運用に乗り始めた頃でもあり、内容的には話せる内容がありそうだなと。
シンポジウムみたいな場所で自分が登壇することなんて今まで考えたこともなかったので、逆に面白いかもと。
そもそも応募したところで、採用されるわけないなんて思っていたりと。

それくらい軽い感覚で物は試しと、チャレンジしてみることにしました。
「まぁとりあえず応募くらいなら」という感じで、一言でいえば、「勢い」ですね。

この時のモチベーションをグラフ化すると、このようになります

アブストラクトを作ってみる

「ところで応募ってどうすればいいんだろう…」

応募してみると決めたものの、登壇初心者の自分にとってはまずそこからでした。

とりあえずまずは募集要項の確認したところ…

アブストラクトシート(概要+詳細)を投稿いただきます。
アブストラクトシートを採択のための審査対象といたします。

…と記載されていました。アブストラクト…?
登壇初心者の自分としては「アブストラクト」という言葉からして初耳でした。
普段の業務でもあまり耳にすることのないこの言葉。
とりあえずネットで調べてみると、、、

特定の主題の詳細な分析の簡単な要約であり、読者が論文の目的をすばやく確認するのに役立つことがよくあります。
etc…

なるほど。
登壇内容の設計図のようなものかと理解しました。
せっかくの登壇するチャンスなので、当たり前のことですが、話す内容はしっかりとさせないと再認識。

第一関門:「発表内容」をどうするか

「誰に対してどのような内容を伝えたいか」
基本中の基本ですが、だからこそ自分のような初心者は一本筋の通ったものを考えないと、グダグダになってしまいますね。
同じようなシンポジウムに登壇した経験のある先輩から以下のアドバイスをいただきました。

  • まずは採択通過されるのが重要なので、採択者にフックがかかるようにアブストラクトの記載を工夫したほうがいい

  • 「JaSSTの参加者が関心を示すか?」が基準になるかと思われる

なるほど。。
「シンポジウムに登壇するためのアブストラクト」という雰囲気で、理路整然とすべきかと思い込んでいました。
とりあえず改めて今回のシンポジウムにおけるテーマから、どのようなフックにすべきかを検討しなないとですね。

「テスト自動化その前に・・・」ということはこれからテスト自動化に取り組む人も多く発表を聞くことになるのではないかと。
ちょうど登壇を決める半年ほど前から自分も初の自動化にチャレンジし、運用まで辿り着いたという新鮮な経験があるので、ターゲット層向けによいフックが思いつけば、採択される可能性が高くなるかなと。

まずは自動化初心者の自分が自動化を運用に乗せるまでの過程を改めて整理してみました。

自動化に取り掛かるまでは、「テスト自動化」をキーワードを耳にした時に思いつくのは、失敗談や難しそうといったイメージが強かったです。

しかも困ったことに、自動化の進め方のような資料はネットにいくらでも転がってはいるのですが、どのように最初の一歩を踏み出せばよいかということを論じている資料は見つからない…
そこでまず知らず知らずのうちにテスト自動化に対して心理的障壁が出来上がってしまう…

自分はそのような障壁を取り除くことから始めてみたのですが、その過程をベースにすれば、なかなかいいフックになるのではないかと思い至りました。

第二関門:「タイトル」をどうするか

そして件の先輩から、まずはインパクトのあるタイトルが必須!とのアドバイスもいただきました。
なるほど。
まずは採択通過されるのが重要。そして、それにはまず興味を持ってもらわないということですね。

まずは第一弾

「自動化失敗の屍を観察してちゃっかり自動化成功した話」

…少しインパクト意識し過ぎたせいか、少し社会人的視点からはズレたものになってしまった。
でも方向性はこのような感じで良さそうでしたので、これをベースに色々と検討した結果、以下になりました。
ちょっとガイドブックみたいなタイトルになりましたが、話す内容は分かりやすくまとめられたかなと思います。

タイトル:初めての自動化導入は慎重に、計画的に
サブタイトル:失敗ケースの山から学ぶ楽な歩き方

第三関門:「概要」をどうするか

概要も興味を引いてもらえるように工夫する必要があります。色々と
件の先輩や部長にレビューも行っていただき、整理した結果、以下になりました。

概要:最近流行している「自動化」について取り組んでいかねばという漠然とした使命感
でもE2Eテスト自動化の経験などないので、何からどう手を付ければよいのか、、、
自動化の進め方とかそういうのは世の中にあふれているが、どのように最初の一歩を踏み出せばよいかということを論じている資料は少ない
未経験者にとっては、テスト自動化というと心理的な壁がある
そこで小さなところから少しずつ技術的心理的障壁を取り除いた方法について論じる

発表内容の主題がまとまったので、あとはアブストラクトの残りの部分もそちらに合わせてまとめ、早速シンポジウムの運営委員会に提出。
審査結果連絡までは少し間が空きますが、とりあえず応募まで辿り着いたことでそれなりに満足していました。

アブストラクト作成期間のモチベーションの変動をグラフ化すると、このようになります

登壇決定と本番資料作成

その後は仕事に追われ、応募したことを意識することなく過ごしていたのですが、その日は突然やってきます。
とある月曜の始業時にメールチェックしたところ、実行委員より「採択されました」とのメールが届いていました。
(正直なところ、最初のチャレンジから採択されるとは思ってもおらず、その後のことなど何も考えていなかった。。。)

まずはメール内容を確認してみたところ、登壇時間は20分とのこと…
長いような短いような…

【事例発表に関する連絡】
事例の発表のため、参加者がイメージしやすい具体的なレベルでお話しいただけると幸いです。
※参加者情報については別途お送りします。
アブストや募集要項に記載した通り、以下のような論点でお話していただきたいです。
①背景・事前条件の説明
②実施した活動の内容の説明
自動化により解決しようとしたこと
活動の中で良かったこと
活動が失敗したこととその原因
進める上で大変だったこと
自動化を導入する際に気をつけてほしいこと
残っている課題

あと発表に関する連絡とは別に、実行委員より個別にフィードバックをいただきました。
アブストラクトに記載したこの辺が採択された理由なのかというのが伝わってきますし、実際に登壇する際にプラスαすべきポイントも分かるので、これは嬉しい情報ですね。

【フィードバック内容例】
・身近にあるものを使ってまず試してみることで心理的なハードルを解消したという事例が分かりやすく、参加者の参考になると思います。
・解消しづらい問題をどう解決したのかを参加者がイメージしやすいように具体的な内容を出していただくと説得力が増すと思います。

あとはアブストラクトに書いた通り、自分がテスト自動化に取り組む際に色々と感じていた不安や、その解消方法をベースに改めて資料を作成しなければ。
まずは資料の構成を整理して、それぞれ詳細化していくだけでいいのかな…

…と軽く考えていたのは大失敗でした。

まず第一弾として本番資料をまとめてみたのですが、どうも文字文字し過ぎているような…
以前見た登壇で使用されていた資料は、こんな文字だらけではなかったはず…
思い返してみると、業務で説明資料を作成した経験はそれなりにあるものの、このような登壇での発表資料というのは初体験なので、口頭で説明すべきポイントも全て記載してしまっているのかも…

発表資料としてどこに問題があるのかは実際に少し発表してみて気づくことも多いかと思い、とりあえず一度発表練習をしてみました。
今思えば当たり前なことばかりなのですが、実際やってみると以下のような問題が明らかに

  • 記載していることをそのまま話すだけになりがち

  • 記載していることを読む流れになるので、次に何の話をするのかといった繋ぎが上手くいかない

  • シンプルに聴いていても話していても「作業」感が出てしまうので、退屈してしまう…

  • 作業報告や成果発表と「登壇」は別物として考えないと行き詰る…

また、件の先輩からの指摘で内容が頭に入り切っていないのではないかと、だから色々と書いてしまっているのでは?という指摘をいただきました

それを踏まえて、改めて他の人の発表資料を読んでみると、確かに要点や流れを書いているだけですね。
初心者の自分としては、資料に書くべき内容を取捨選択するための距離感というか判断材料がない…
最初から発表資料を完成形にするというのは幻想に過ぎないということが分かりました。

ただ資料の完成度は低いものの、とりあえず伝えたい内容はまとめられてはいる…はず…
あとは以下をループさせながら資料をブラシュアップさせていきます。

  1. 発表練習を繰り返しながら、資料をスリム化

  2. 資料をアップデートしつつレビューを受ける

とりあえずトライ&エラーでやってみた結果、少しずつですが、それらしい形に近づいてきました。

Before
After

最終的に完成した資料はこちらで確認できます。
https://www.jasst.jp/symposium/jasst22tohoku/report.html#S2

本番資料作成時のモチベーションの変動をグラフ化すると、このようになります

本番練習

発表の持ち時間は20分。
とりあえず時間を計りながら発表練習したところ、だいたい20分前後に収めることはできそう。
あとは練習しながら話すスピードを調整しながら時間感覚をなんとなく身に付けていけばなんとかなるのかなと。
資料を見ながら発表練習していると、少しずつ強調したいポイントとか分かりにくい点が見えてきますね。

件の先輩や部長に相手になっていただいての発表練習ももちろん行いました。
自分で練習しても気付かない点を指摘していただけるので、これは重要特に次の点で気を付けないといけないということが判明。

  • ページ送りの技術がない

  • 特に強調して伝えたい部分が弱い

  • 発表内容が聞き取りにくい

①ページ送りの技術がない

完全に発表初心者的なことが原因です。
要は、ページ単位での説明をしっかりすることに注力するばかりで、次のページに繋がるような話し方をしていないということ。
言われてみれば当たり前なのですが、経験が乏しいと、こういうところで失敗してしまう、、、

あと表示中のページの説明に追われてしまっていることも原因の一つ。
おそらくそれはページ単位での説明に追われてしまい、次のページの展開が頭の中に入っていないからということが多いと感じます。

こちらに関しての解決法としては、反復練習をしながら資料全体の流れを出していくしかないですね。
「これこれこういうことが起きた結果~」から次のページでどうなったかを話すような感じで繋げていくイメージを持つと結構改善していくものと気づきました。
あとは発表練習を録画して、問題ポイントを振り返りながら少しずつ改善
自分で分析できるところなので、頑張る。

②特に強調して伝えたい部分が弱い

これはどういうことかというと、全体を通して発表が平坦になりがちということ。
今回のテーマの自動化に対する心理的障壁を如何に取り除いたか、でポイントとなる部分が分かりづらいと。
確かに…
もちろん発表の際に、「ここがポイントです」という感じにするのはもちろんなのですが、資料構成的にもポイントをまとめたページが弱いことも原因。
ポイントごとに説明する前に、この辺がポイントとなりますというページをもう少し独立させ、ページのデザインもポイントが強調されるように調整することで少しずつ改善していきました。

③発表内容が聞き取りにくい

こちらに関しても初心者にありがちなことかもしれません。
録画した発表を見直してみると、元々滑舌があまりよくないという点を差し引いても、確かに聞き取りにくい…
緊張もあるのでしょうが、どうも早口になりがちなのが主な原因なのかなと
あと早口になることによって、発言内容の「溜め」がないので、ポイントポイントが伝わりにくいという点もあるかと。

「ゆっくり分かりやすく話す」という基本中の基本を今一度頭に入れて気を付けながら話す練習を繰り返すことで、これは改善可能ですね。
ゆっくり話すことによって当然発表時間は長くなるものの、発表内容自体が練習を通じて整理されてくるので、トータルではそんなに影響が出ませんでした。

本番練習時のモチベーションの変動をグラフ化すると、このようになります

いざ本番

自分の発表は3つある事例紹介の最後でした。
発表時刻は14:15から。
練習もたくさんしたし、余裕余裕…なんてメンタルには当然なりません。
お昼ご飯はちゃんと食べた…と思いますが、そんな記憶も残ってないくらい緊張しました。

事例紹介が一つずつ終わり、次の事例紹介が始まり…
この辺が一番緊張してたと思います。
ずっと脳内リハーサルをしてたこともあり、正直他の方の事例紹介など全く頭に入ってこず…
ただ直前の発表がそろそろ終わる頃にはもう諦めというか、あと少しでこの緊張も終わるという気持ちにもなってくるという不思議な感覚にもなってきます。
そして、前の登壇者の発表が終わり、司会の方が自分の紹介を始めました。

ここからはもう今まで練習通りにできたかな…といったところです。
シンポジウムに参加していた件の先輩からは「発表バッチリでしたよー」と嬉しいお言葉をいただきましたが、発表直後から発表していた時間のほぼ記憶が残っていません。
ただ、最後の最後で「ご清聴ありがとうごじゃいます」と言っちゃったことだけは鮮明に覚えています。

最後に

そして記憶は何も残ってないものの、そこには不思議な解放感がありました。
多分人生初登壇ということで、今までにないプレッシャーを感じていたのか、その解放感も人生初のものでした。
また何かで登壇したいな…とは思いませんが、機会があったらこの解放感目当てに頑張ってしまうかもしれません。

登壇本番から完了直後のモチベーションの変動をグラフ化すると、このようになります

最後になりますが、品質管理を担うクオリティマネジメント部は、課題や難しい局面を、共感しながらともに成長・チャレンジしてくれる仲間を探しております!
少しでもご興味があれば、カジュアル面談も受け付けていますので、お気軽にお声掛けください。

■株式会社Mobility Technologies 採用情報


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