初めての“意地”

 昨日は入院中の生活についてお話ししましたが、入院中でも学校には行きます。治療に支障がない範囲で勉強もします。

今日は、そんな「院内学級」でのエピソードを記してみたいと思います。

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 徐々に何かと制約が多い入院生活にも慣れ、3カ月を過ぎた頃からようやく「楽しい」と感じるようになってきたのですが、その思いは学校生活に関しても同じでした。
 転校前の『いぶき学級』では10名弱と特殊学級の割に人数は多かったものの、私の同級生がいなかったことと、会話ができるのが約半数程度ということもあり、温室だったというのが正直なところです。先輩との学習においては「私はできなくて当たり前」ですから、対抗意識などが芽生えたことはありませんでした(実際には私の該当年次の学習を先輩たちが一緒にやっていましたから、ライバル視をしても良かったのですが)。
 一発正解が赤丸、指摘されてからの自力正解が緑丸というふうに、基本的にレ(バツ)を付けないという指導は自信にはつながるのですが、闘争心にはつながりにくいのかもしれません。現在の風潮は分かりませんが、当時はこうした指導法の先生に結構出会いました。
 対して、「院内学級」では私の闘争心が刺激されることが次々と起こりました。小学校2年生の2学期といえばちょうど「掛け算九九」を学ぶ時期です。そうなるともう誰が1番先に覚えるか、自然と競争が始まります。
 入院先の学級でもクラス分けのスタイルは同じでしたが、「できる子にはどんどん先をやらせる」という指導スタイルは、経験してきたものと大きく異なりました。在籍していたクラスは、同級生のやんちゃな2年生が1人、私と同じ泣き虫の1年生が1人に、お姉さん的存在の4年生という構成だった記憶がありますが、私たちが九九の暗唱を始めるタイミングになると先生が1年生の子にも「やる?」と持ち掛けるわけです。相手は、嬉々として上級生にひと泡吹かせてやろうと闘争心むき出しです。私としてもさすがに下級生には負けるわけにはいきませんから、燃えないはずがありません。
 他にも、手術直後のプールの授業で、水に入らず車椅子のままプールサイドで水鉄砲を抱える私に「入って来いよ」とけしかけてきたり、学習発表会では主役の『ピーターパン』の座を争ったりと、様々なエピソードが思い出されます。また、学校のスロープを車椅子のタイヤに触らず、ブレーキコントロールだけで駆け下りようとして転倒し、先生に嫌というほど怒られたこともありました。目の前で1年生が成功しているのを見て、「自分にできないわけがない」と思い挑みましたが失敗。その後も格好良さに憧れ、少し遅れて習得しましたが、これが私の「初めての“意地”」です。
 

 こうして半年後、様々な出来事を乗り越えて退院。終業式にも間に合い、「いぶき学級」の介助員の先生にも無事、お別れを伝えることができました。


画像1

*このスライドは先日、小学生に対して行ったオンラインマンツーマン授業の資料の一部(掛け算の導入)。お皿と家にあるパズルを使って、この形を作ってもらった。

おやつの時間が近かったので茶まんじゅうをイメージして色付けしてみたけど、全然おまんじゅうに見えなかった・・・(笑)


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