声に出すというハードル

昨日のブログで、「単なる人見知りじゃない事情を抱えていた」と、書くました。

私は昔から大きな声を出すことが苦手でした。

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「単なる人見知りではない事情」とは何かといいますと、それはやはり「障害特性」ということになります。私は身体障害者の中でも両上肢(手)・下肢(足)に障害がある肢体不自由に分類されます。また、身体を支える「体幹」にも障害がある私は、先天性(生まれつき)の「脳性麻痺」という障害です。
 脳性麻痺の詳細についてはすでにお伝えした通りですが、なぜ、身体の障害が声を出すことに影響を与えるのでしょうか。皆さんは身体を動かそうとする時、脳からの指令に基づいて必要な部分(筋肉)を動かします。これを随意運動といいます。それに対して、私のように脳性麻痺がある人たちの場合はどうでしょう。例えば声を出そうとした時、本来は腹筋と声帯を使えば声を出すことができますが、私はそれに加えて首・肩・背中、両手足など、様々な部分に力が入ってしまいます。このように、自分の意思とは関係なく身体の全身に力が入ってしまうことを「不随意運動」といいます。
 私はこの「不随意運動」が起こることによって、声が出にくくなります。繰り返しますが通常の場合、腹筋と声帯に力を入れれば発声が可能です。しかし、私は身体の様々な部分に同時に力が入ってしまうため、緊張が強まって声帯も収縮し、声がかすれてしまうのです。
 今でももちろんこうした症状と付き合いながら生活しているわけですが、当時とは経験年数が明らかに違います。私の場合、「身体の緊張」は「心の緊張」に直結していると気付きましたが、いかに緊張しないように「自分の心をコントロールするか」は非常に難しい作業でした。
 緊張しないような対策を練るためには、反対に「どのような場面で緊張しやすいのか」を分かっておく必要があります。私は「何かをしよう」「誰かに伝えよう」と思えば思うほど、緊張感が増します。極端な例で言えば「大きな声を出そう」と息を吸った途端、力みで身体も硬直し声が出なくなるといった状態だったのです。
 小学校低学年当時の私は、「肢体不自由児学級では話せるものの、普通学級の児童の前では全く話せない」子どもでした。肢体不自由児学級でなんとか話せていたのは「優しい大人に囲まれていたから」です。この「大人に囲まれた環境からの脱却」が、私の高学年に向けた大きな課題となっていくことは言うまでもありません。
 しかし、その前に更なる試練を迎えることになります。

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