視線を上げて歩く
日々、自宅から駅までの同じ道を行き帰りしていますが、だんだんと目が慣れてしまって退屈だなあと思うことがあります。そこでいつも試みているのは視線を上げることです。
わたしの地元駅は駅から南に向けて一本道があって、そこにお店がずらっと並んでいるのですが、そのお店はどこにでも見るようなチェーン店ばかり。そこで視線を上げて建物の二階を見るようにしているのです。
すると「あ、ここに小洒落たバーがあったのか」だとか「ずいぶんと大きなインドカレー料理屋があったんだなあ」「すげえ場末感あるスナックがある。。」と、まるでちがう街に来た気分になれるんですよね。
人間がおそろしいなと思うのは、どんな美しい風景の街に住んでいてもそれが日常になると麻痺してなにも感じなくなるということです。
10年前くらい35歳くらいのとき、ドイツのフランクフルトから電車で1時間近くのところにあるビュルツブルグという街に仕事で2年ほど住んでいました。街にやってきた当初はその世界遺産にも登録されている街の優雅な景色や荘厳な建築物に圧倒されてとても感動していました。
が、半年も同じ街で生活するとずいぶんと退屈してきて「あー暇だなな」とか「日本のバーモンドカレーが食べたい」とかずいぶんと俗世にまみれた戯言をぬかすようになりました。
このとき感じたのは人間って慣れたらなにも感じなくなるんだなということ。
日本でもあるかもしれません。秋葉原に行くと外国人旅行者の方々がものめずらしそうに、電気街の鮮やかなネオンとアニメが描かれた看板を写真に撮っていましたが、これも半年も日本で生活をしているとなんの新鮮さもなくなってしまうでしょう。
だからこそ同じ街で生活をするなら視線を変えてみるといいのかもしれません。
同じ街でも一階をただ眺めるのではなくて目線を上げて二階に注目すると、とんでもない異世界に来た気がします。わたしの知らない街がそこに広がっているのです。
しかし二階ばかり見ていると気づかないことばかりで、たしかにお店をやるには一階じゃないと目立たないよなあとも思います。
あと視線を上にあげるのがしんどいなと思うので視線を下にするのもありかと思います。最近はマンホールの絵柄も凝っているのがおおいのか思わぬ驚きがあるかもしれません。ちなみにわたしの街のマンホールには宮﨑駿がデザインした「Poki ポキ」が描かれています。
いずれにせよ、いつもと視線を変えることで世界はガラッと変わるものです。ようは本人次第といってもいいかもしれません。
そんなことを思いながら日々散歩している私は暇人なのかもしれません。世の中の多くの人は仕事や家庭のことで頭がいっぱいで、そんな店舗や風景なんて気にしてないのかもですね。
そう考えるとわたしはのんきなものです。決して生活も家庭も安定しているわけでもないのにこんなことを考えているのですから。もう根っこからの性格でしょう。
しかしまあ、のんきも才能と思って人生を楽しみたいと思います。