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電車での思い込み

恵比寿に用事。
早く出たから約束の時間よりちょいと早い到着予想。
アタリマエ。
中目から歩けばちょうどいいか、と電車にRIDE ON。
結構混んでる。キュウキュウ。
多摩川で結構な人がRIDE ON。
混んで混んでギュウギュウ。

その中に、オジサンとオバサンがいた。
最後にRIDE ONしたオバサンはドアの近くに立つ。
そのまま立つのは不安なようで、座席近くの手すりにつかまりたいようだ。
手すりに手を伸ばすも、ギュウギュウ状態。
ドア付近の座席にもたれかかれるスペース、特等席では若者がスマホを眺めている。
オバサンの手は手すりには届かない。

特等席の若者だけではなく、目の前のオジサンも邪魔なのだ。
オジサンはスマホをいじりながら、スマホに繋がっている有線のイヤホンで何かを聴いている。
オバサンは電車の揺れを利用して何度かトライするも、届かない。
しつこくオバサンがトライしていると、不思議なもので若者とオジサンがオバサンの手が手すりに届くように動く。

オバサンの手が手すりに届いた。
オジサンの目の前には自身のスマホがある。
その下には、有線のイヤホンが緩やかな丸みを帯びながら弛んでいる。
オバサンの手はその弛みの間を通過して手すりを掴んだ。
このままオジサンが気づかずに下車しようものなら、その弛みがオバサンの腕に引っかかり、イヤホンが耳から抜け、なんか面白いことになるかもしれない。
と、淡い期待を持ったがオジサンはすぐにそれに気づいた。

オジサンは、イヤホンをつけたまま、その弛みをオバサンの手に向かって這わせた。

いやいや、その手は手すりを握っているんだから通るわけがない。

イヤホンの弛みがオバサンの手に触れたその時、オバサンの手はギュッ!っと強く手すりを握った。

なんだこの攻防。

イヤホンジャックを外したら音が流れるから外したくないのだろうか?ちょっと再生を止めるだけなのに、と思いながら見ていると、結局、オジサンはイヤホンジャックを外してその弛みからオバサンの腕を解放した。
オバサンはそんなことに気づいていないだろうけど。

特に面白いことは起きないまま中目に到着。
オバサンとオジサンも中目で下車。
順番的に、オジサンの後ろを少し歩くことに。

「もう、そこら辺でいいよ」

オジサンが口を開いた。

オバサンが振り返って止まった。

日比谷線に乗り換えるのだろう。

って、2人は夫婦?知り合い?
だったら、さっきのイヤホンの件、ちょっとくらい会話しても良くない?
手すりを掴むよりオジサンに寄りかかっても良くない?
知らない人同士のやり取りだと思い込んで、ちょっとオモシロを期待した自分を反省。

思い込みには注意しよう。ちょっと面白かったけど。

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