日記・8月最後の金曜日に幸せを

 最近はネガティブな方向に話を振り過ぎたので楽しいことをそろそろ書きたい。

 2年前の8月の末、2019年8月30日は金曜日だった。今日みたいな蒸し暑い夜、仕事が終わるとすぐに車を高速道路へ走らせた。僕は東京ディズニーランドへ向かっていた。

 それは1週間前から決めていたことだが、東京ディズニーランドの年間パスポートを買うために向かっていた。正確に言えば、年間パスポートを買ってその足で東京ディズニーランドへ行こうとしていた。

 元々は夏5パスポートという17時から割安で入れるパスポートで入る予定だった。その夏の時期限定の夜のショーが9月1日で終わってしまうため、その週末に絶対に行って見なければいけなかった。

 なぜか土曜日の夜には吉祥寺で行われる詩のライプイベントのチケットを取っていたので(これもめちゃくちゃ楽しかったので後で詳しく話したい)、日曜日の夜では翌日の仕事に響くし、もうこれはいっそ金曜日の夜に見るしかないと決めた。

 東京ディズニーランドの年間パスポートはずっと前から欲しかった。正しくは東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの2パーク共通で使える年間パスポートで、その頃は1枚9万円で1年間どちらのパークも好きなだけ遊べるというものだった。

 人生に一度くらい、東京ディズニーランドの年間パスポートを持っていた経験がしてみたいと思った。それは図らずも思い返してみればギリギリのタイミングで、翌年の3月には東京ディズニーランドが休園してしまうなんて夢にも思っていなかった。

 20時前に舞浜へ到着し、まずは年間パスポートの作成。イクスピアリ内にあったチケットセンターでその場で写真を撮り、すぐに年間パスポートが出来上がる。15分くらいであっという間に夢のパスポートを手に入れた。

 そのままずんずんと東京ディズニーランドのエントランスへ歩いていく。初めて年間パスポートを使って入る瞬間「本当に入れるんだ!」と思ってしまった。入ってすぐポップコーンを買って、ポップコーンを売っているキャストさんに「今日初めて年パスを買ったんです!」と口走っていた。

「すごい! そういうのなんて言うか分からないですけど、おめでとうございます!」

 そんな風に返されたのをよく覚えている。なんて言うんだろう、初年パス? ちょっとおめでたさがない気がする。

 ポップコーンを持って小走りでシンデレラ城前のステージの方へ走っていったらスマホを落としそうになってポップコーンをこぼしてしまった。その時のポップコーンがはじけるように地面へ落ちる様子をいまでも鮮明に映像で思い出せる。

 ショーを見終わった後は船橋のホテルに泊まった。そのまま翌朝は東京ディズニーシーへ乗り込む算段だった。東京ディズニーランドへ行ったばっかりなのにその翌朝から東京ディズニーシーへ行ける贅沢に酔いしれていた。

 2つのパークを続けて楽しむだけでなくそのまま夜に吉祥寺へなだれ込んで行く予定を、いまは全くイメージできない。東京ディズニーランドの年間パスポートの販売はもうしていないし、もしかしたら今後は年間パスポートの販売をしないのかも知れない。吉祥寺のイベントだって、古本屋を会場にして観客が集まり、4人の詩人たちがリレー形式でその場でひとつの新しい詩を書くという、いまにしてみれば夢のようなイベントだ。

 そんな夢のような夜の始まりが2年前の8月の末の金曜日だった。8月最後の金曜日はきっといつまでもその日のことを思い出すだろう。そんな日があるだけで僕はちょっとは幸せなんだなと思ったりする。

 

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