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日記・春は電車を降りる時に香る

 なぜか今日は春の匂いを何度も思い出していた。




 社会人になったばかりの頃、青春18きっぷを使って普通電車に乗り東京へ行くのが好きだった。安く済むしそのままJRの電車を1日好きなだけ乗れた。さらに東京メトロの1日乗り放題のきっぷを買うときっぷの値段を気にすることなく都内を1日中電車で回れる。

 思い出したのは春先の記憶だった。頭の中で桜の匂いがする。春の柔らかい日差しが気持ちいい。



 写真を見返していたら春の匂いがしてきた。春になると横浜でパンの販売のイベント(その名もパンのフェス)があるのでそこでパンを買い山下公園で食べるのが好きだった。



 あちこち好きなように足を運ぶ自由を奪われてしまって、いま社会人になったばかりの若い人たちは苦しい時代を生きているなぁと思った。そういう僕もまだ若い人のうちに入るのだと思うけれど。

 初めて買ったディズニーリゾートの年間パスポートは半年も使えなかった。春になったら誕生日にディズニーへ行こうと思ったが叶わなかった。



 この2枚のディズニーランドとディズニーシーの写真は同じ日に撮っている。年間パスポートで両方のパークを行き来できたのでランドとシーのショーを同じ日に見ることもできた。この日が年間パスポートを最後に使った日だった。


 新型コロナウイルスの感染が拡大と縮小を繰り返しながら3度目の春がもうすぐ来る。人間の事情など知ったことではないというように桜は毎年咲くが、いつかのように東京の街を縦横無尽に駆け抜ける電車に乗ってそれらを見に行くには人間の体はいま適切な形を持たない。

 桜の香りはマスク越しに届かない。春の匂いは不織布によって均一な空気へと変換され季節は鼻先で停滞する。


 しかしなぜか春の匂いを僕はよく覚えている。春は電車を降りる時に香る。





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