日記・絵が作者の元を離れる時

 注文していた絵が届いた。

 スマホの画面で何度も見ていたのに、実物を目の前に見ると初めて見る絵のように思えた。

 最初は1枚だけを選んでいた。しかしそれと対になると思われる絵があって、これは2枚とも同じところになくてはいけないと思い、合わせて2枚が手元に届いた。

 作者の方からのお手紙が入っていて、やはりこの2枚が対になっていることと、その2枚が同じところにあることをとても喜んでもらえたようだった。

 絵は、誰かの手元へ行ってしまうと作者の元には残らないのだと、ぼんやり思う。小説を書いていて、小説は誰かの手元に行くかも知れないけれど言葉だからなにもかも全てが誰かの手元に行くわけではないように思う。

 本物はその1枚しかないのだと思うと、絵が作者から別の持ち主へと移動する時の感覚はどんな感覚なのだろう。

 そう思うと、手紙も同じような感覚かも知れない。メールは送ったものもこちらに残るけれど手紙は残らない。書いたもの全てを宛先の人へと送るのが手紙なのかも知れない。

 もし手紙を送る時と同じ感覚ならば、それは寂しいというよりも、描いたものがどんなふうに届くのだろうとわくわくするような不安なような、そしてその返事を期待して待つような気持ちに僕はなりそうな気がする。

 絵がその人も元でどう息づいているか、たまに思い出して想像してしまうかも知れない。時が経っても誰かの生活に色を添えていたら嬉しいと思う。

 ふと、そんな想像を巡らせていた。混ざり合う季節の絵を眺めながら。



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