日記・12/4、21時。武道館に飛ぶツバメを見た。

　YOASOBIの武道館ライブ『NICE TO MEET YOU』初日が終演した。

　武道館にいる誰もが初めて出会うYOASOBIの有観客ライブを間近で見れたことを、本当にほんとうに嬉しく思った。

　開演とともに配信やテレビで見ていたYOASOBIの姿を目の前にして興奮が止まらなかった。

　ライブを久しぶりに見て思い出した。ライブはその空間を丸ごと楽しむんだ。音楽だけじゃない。その日のライブの為に作り込まれてきた全てがそこにある。

　ずっと忘れていた感動がそこにあった。

　ライブの空間と一体になったかのように思えた。その一体感に全身が揺さぶられる。リズムを取らずにはいられない。

　体は音楽ライブのことをちゃんと覚えていて、体が勝手に一番気持ちいいように踊ってくれるからあとはその波に乗って楽しむだけだった。

　ライブ中、「始まったら終わってしまう」とAyaseが言った。ああ、僕も同じことを思っていたと胸が苦しくなった。

　ライブが始まった瞬間、興奮の隙間を縫って寂しさが吹き込んでくるのを感じた。始まってしまった。終わりが来る。そんな考えが一瞬、頭をよぎる。

　でもそんな考えはどこ吹く風で、ライブの楽しさのあまり寂しさを忘れてしまった。寂しさが入り込む隙間なんて目の前のライブにはなかった。

　こうやってライブでの出来事を思い出していると様々な光景が浮かんでくる。僕はそのひとつひとつを全てここに留めておくことができない。

　しかししっかりと僕の中に残っている。ライブの記憶が、揺さぶられた感情が、今日なにが起きたか詳しくひとつひとつ思い出せなくたってまた音楽を聴くんだ。YOASOBIの楽曲の数々が日常に帰った後にだって僕のそばにいる。

　少しずつ体が家に運ばれていく。コートの中に着た『ラブレター』のプルオーバーが今日ついさっきまでどこにいたのか教えてくれる。

　明日も武道館でYOASOBIのライブが行われる。僕は明日のライブを配信で見る予定だ。さっきまでいた場所のライブの映像を明日見るってなんだか不思議な感じだ。

　そういえばライブが始まった時、会場の中に鳥が1羽飛んでいると思った。飛び方がツバメのようで、季節外れの鳥だと思ってよく見ると空撮のドローンだったのだ。

　きっとあれは配信の映像を撮っているのだろう。明日はライブ会場を縦横無尽に飛ぶツバメから見た景色を見てみたい。