日記・長生きって本当にいいこと?

 あんまり長く生きていたくないなぁと常日頃思っていて、なんとなくそれを気軽に口にすることもできず、これって「長寿主義」ってやつなんじゃないかと思う。

 長生きするのって基本的にいいことだよね、と長寿を肯定するのが長寿主義で、早く死んでしまうとかわいそうだということになっている。それを長寿主義と僕が勝手に呼んでいる。この世には長寿主義が蔓延っていて、それはもう至る所で幅を利かせている。

 長生きしたいかしたくないかは思想の自由なんじゃないのか。何歳までに結婚したいとか独身を貫きたいとか思うように、何歳までには死にたいとか思うのってそんなにまずいことなのかなぁと思う。

 この世の中の「当然長生きしたいよね?」という圧がすごい。テレビをつければだいたいどこかしらのチャンネルで、やれ健康食品だの、やれ新しい健康法だの、これは健康に悪いからやめろだのと言っているし、とにかくもう人間は長生きするのが好きだと決め切っている。

 そんなのは長寿主義者の一主張に過ぎないと思っている。長寿主義に縛られた僕たちは「それが寿命だから」とやたら長く生かされ、その割にはどうぞそれぞれの力で生きてくださいといった具合で、各々が絶えず健康であるようにと求められるのである。

 人間の体はそもそも長寿を想定して設計されていないように思う。古い車がメンテナンスを欠かさなけば何十年も動き続けるように、人間の体もメンテナンスのお陰で動いているだけに過ぎなくて、車の替え時のように本来は人間にも死に時があるのではないかとさえ思う。

 もちろん人間はモノではなく命なので替え時のような感覚は当てはまらないと思うけれども、僕たちは絶えず弱い延命措置を受け続けながら長い寿命を得ているのだと思う。そしてその結果得られた長い寿命に対しての理解が全然進んでいないようにも思う。

 人間が長く生きるようになると社会はどうなるのか、あまり想定されないままここまで来てしまったように僕は思う。それは僕が勝手に長寿主義と呼んでいる「長生きっていいことだよね」という全肯定によって思考が停止しているのだと思っている。

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