日記

彼女から「わたしのなにがそんなにいいの」と訊かれ、愛着、と答えた。長く一緒にいるから生活の一部になっているし、それは太陽が昇ったり沈んだり月が欠けたり満ちたりするようなもので、それがなくなるということが普段はよく分からない。ただ、この前そういうことをまざまざを感じさせられて、つまり太陽がもう明日から昇ってこないとか、月が同じかたちに欠けたまま毎日地球の周りをぐるぐる回るとか、そういうことをはっきりと思わされた。太陽が昇ってこなかったら困ってしまうし、月の満ち欠けがなかったら日々はとても味気ない(月の満ち欠けがとても好きなのだ、僕は)。どういうわけで、と訊かれたら、時間が、と答える。太陽も月も長い時間、そこにあるのが当たり前になっていて、それを愛着と呼びたいし、時間が愛着を与えてくれるなら、人は人を誰でも太陽とか月みたいに愛せるような気がする。それが彼女だったということは、たしかに代替可能を意味するだろうけれど(時間さえかければ別の誰かを太陽や月みたいに愛せるということ)、誰でも彼でも時間を自分にかけてくれるとは、正直思わない。

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