日記・もうこの世には存在しないカフェの記事

 昔に出版されたカフェの特集本を読むのが好きだ。

 そのカフェはもう存在しないかも知れない。あるいは、掲載されているメニューは存在しないかも知れない。この世界にはもう存在しないかも知れないと思うと不思議な感覚になる。

 それはもはや物語を読んでいるようで、きっと初めは実用的な意味を持って書かれていた記事もそこに閉じ込められた過去はフィクションみたいに見える。

 存在しないカフェの、存在しない客席が写真に収められている。記された住所にはなにもないか、あるいは既に別の店が入っていて、営業時間や定休日は作り込まれた設定のようだ。

 カフェにはそれぞれのこだわりがあって、それを物語のように読み取っていく。店の佇まい、メニュー、店主の人柄、まるでそこで物語が転がっていく舞台のようだ。

 きっとそれぞれのカフェにそれぞれの物語がある。その物語を想像すると知らないカフェが突然愛おしくなってくる。



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