日記・紹介したい本があります
今日は日記で本の紹介をしたいと思っていました。島本理央さんの『リトル・バイ・リトル』です。
でも今回紹介したいのは本編ではなく解説です。本編も5、6度は読み返しているのですが、解説に至ってはそれ以上に何度も何度も読み返しています。
解説は原田宗典さん。小説家の林芙美子と宇野浩二のやりとりから始まる9ページに渡る解説です。読む度、救われ、苦しみ、しかし道筋がそこにあるような気持ちになります。
その解説によると当時女学生だった林芙美子が宇野浩二へこのように問うたそうです。
「小説というのは、どうやって書いたらよいのでしょうか?」
これに対し、宇野浩二はこう答えたと解説にあります。
「話すように書けばよろしい。これは武者小路実篤氏が祖です」
初めて読んだ時に愕然としたのをいまでもありありと思い出せます。初めて読んだのは10年以上前になりますが、ちょうど小説を趣味で書き始めた頃でした。話すように書けばよいとはどういうことなのでしょうか。
そのあとの解説の文章で話すように書くとはどういうことかが書いてあります。そして『リトル・バイ・リトル』は話すように書かれた文章なのです。
話すように書くとは、言葉の通り話すように書くことに他ならないのですが、どうすれば話すように書いた文章になるのか 『リトル・バイ・リトル』を何度も読み返し、分かったような分からないような気持ちになりながらさらに何度も解説を読み返し、分からないが書いてみる、といったことを僕は繰り返していました。
そういう意味で、僕にとってはある種バイブルのような本で、僕が書きたいのはこういうことなのだと何度となく思いますが、でもやっぱり小説を書くって難しいなとつくづく思います。
「リトル・バイ・リトル』は2003年に第25回野間文芸新人賞を受賞しました。今日、その第43回の候補作品が発表され、この解説のことをふと思い出した1日でした。
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